【プロフェッショナル 仕事の流儀 小倉智昭】老兵は、去るや去らざるや(下)

NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 小倉智昭」を観ました。

きのうのつづき

小倉はここ数年、年齢にともなう衰えと闘ってきた。

小倉が語る。

最近、ここ3~4年は特に自分のスピード感がなくなっているのは分かっていたし、それとふっとものを忘れることがあるんですよ。きょうも一瞬はっとしたんですけど、千葉県知事(当時)の森田さんの名前が出てこなくて。その間、ちょっと間が空く。そういうことがたまに起こるんですね。悔しいですよ。ものすごく悔しい。日々、悔しく思っている。

衰えと比例するように、視聴率も低迷。今年1月に番組終了が発表された。

小倉が思いを語る。

自分からすすんで辞めさせてくださいって言えば、かっこよかったかも分からないですけど、自分ではまだどこかでやれるっていうところがあるから。その狭間で、笹の葉のように揺れていましたよ、しばらく。

フジテレビには「とくダネ!」という名前を残したいという意向もあったんですけど、それはやめてください、僕がいなくなったら「とくダネ!」じゃなくなるっていう自負で僕はやってきたんで、名前は使ってほしくないですってことだけは、ハッキリと言いました。

最終的には「とくダネ!」だけに全部を注いでやってきて、そこがバタッと終わる経験はないんですね。このあとの仕事も決まっていないじゃないですか。今まで経験のなかった時を、これから迎えるので、ちょっと怖いですね。

今度は何を目標にしたらいいのか。ただね、大した名前じゃないけど、せっかく「とくダネ!」を20年以上やってきた小倉智昭っていう実績を汚すようなことだけはしたくないですね。

そして、3月26日。「とくダネ!」は最終回を迎えた。

小倉が言う。

そういえば、おやじのは目標を持って生きるんだぞって言われて、いやこの仕事は自分がしゃべりたい、自分がマイクの前に立ちたいと思うだけで、仕事があるという仕事じゃないでしょう。一方では年齢を重ねていくとさまざまな問題に理解力が出てきて、高齢者じゃないと解決できない問題もあるし、まだまだ若い人には負けないなと思っているし、若い人と接することもできるし、同じこともできると思うんですね。

だから小倉は使えるなという風に思ってくれたらやりますよ。難しいなと思ったら、引き受けない方がいいと思うんですね。迷惑をかけることが多くなるようだったら。

「とくダネ!」最終回が終わって、大阪のテレビ番組の収録に出演した。丁々発止に議論を大人数でする番組だったが、小倉にとっては消化不良だった。老兵はただ去るのみなのか。

小倉が語る。

目標らしきものが、なかなか見つからずに、何をすればいい?という状態。(ディレクターの「仕事を辞める気はない?」という質問に)まだ未練があるからね。のんびり遊びながら余生を送れればいいかな、ということも考えなかったことじゃないんですよね。でも、ここにきて、自分はそうじゃないんだろうな、と。なんかやっていて、そのつど、それを乗り越えることが自分の人生だったのかなっていうような思いが今は強いのです。

やっぱりテレビでしゃべることが好きなんですよね。やることによって、自分が磨ける仕事だと僕は思っているし、僕を大きくしてくれたんだと思っているので。テレビって、本当に魔法の箱。僕にとっては。

インターネットの時代におけるテレビメディアの役割は何なのか。小倉さんが「とくダネ!」をスタートさせた22年前と国民の生活は激変している。でも、この先何十年も先になっても、「しゃべる仕事」はなくならないと思うし、寧ろネットの活字だけでは伝わらない機能として、「しゃべる」ことの大切さは増すように思う。小倉さんの功績を讃えるとともに、今後の活躍にも期待したい。