【渋谷らくご 12月公演】 師走もやっぱり、シブラクで過ごす(下)

配信で「渋谷らくご 12月公演」を観ました。(2020・12・11~15)

12月13日(日)14時

「阿弥陀池」三遊亭好二郎「厩火事」春風亭百栄「片棒」春風亭一花「黄金餅」立川談笑

好二郎さん、上方版「新聞記事」。埼京線十条や、マレーシア、シンガポールが出てくる。軽妙な語り口、心地よい。百栄師匠、一癖二癖。焼け死んだ馬の気持ちは?残忍な!階段から落ちても皿が割れなかった?面白ビデオ大賞に?迷惑きわまりない仲人の兄貴分が可笑しい。

一花さん、師匠・一朝仕込み。銀次郎の神田囃子に心弾む。山車、からくり人形、神輿。リズミカルに聴かせてくれた。談笑師匠、貧民窟の匂い。西念坊主の貯金を虎視眈々と狙う長屋連中。「床下だけはのぞかないでくれ」という金兵衛の嘘の遺言に騙される。「おやじのように思っていたよ」と背負った死骸に話しかけると返事が!慌てて首を絞めるのが可笑しい。

12月13日(日)17時

「鮑のし」柳亭市童「唖の釣り」橘家圓太郎「記憶喪失」林家きく麿「生か死か」田辺いちか

市童さん、巧み。うで玉子食べたい?うけ跨ってすれば?うけ多摩川へ行きますか?うけ玉が腫れますれば。圓太郎師匠、円熟。吉兵衛さんの必死の身振り手振りで、見廻り役人とのコミュニケーションが成り立っちゃう楽しさ。

きく麿師匠、独自の味わい。2年前から記憶がないタケシに、ユカリがどんどん質問していくと、タケシの過去が解明されていく。落語ファンには堪らない一席。いちかさん、12代南鶴師匠の作品を。戦後間もない時期の新聞記事を題材にした読み物。偶然の出会いが織りなすドラマを感動的に読む力のある女流講談師だ。

12月14日(月)18時

「火事息子」入船亭扇里「芝浜」蜃気楼龍玉

扇里師匠、江戸の消火体制についてのマクラを詳細かつ丁寧に。徳之助が母親との再会の夢を見る冒頭の演出もいい。なぜ、徳之助が火事を好きになったのか。それは見栄を張った養育をした父親に原因があるという母親の指摘も合点がいく。

龍玉師匠、師走に相応しい。魚勝の「楽をしようと思ったら、働かなくちゃいけないと思うようになった」という台詞が沁みる。大晦日、女房に酒を勧められ、「どうもご無沙汰いたしまして。相変わらずお達者そうで、何よりで結構です」と酒に向かって話しかける勝五郎がいい。

12月14日(月)20時

「王子の狐」立川寸志「四段目」快楽亭ブラック「続・祐子のセーター」玉川太福「幾代餅」古今亭文菊

寸志さん、ファンタジー。女狐を騙して無銭飲食してしまった男。女房に「女狐はお使い姫。祟りがある」と教えられ、反省し、手土産をもって謝罪にいくにがいい。ブラック師匠、裁判前日。さすが、歌舞伎に詳しい高座。判官切腹の台詞と描写を実に丁寧にしっかりとするのが良かった。

太福さん、浅草芸能大賞新人賞。エピソードも楽しく。身辺雑記浪曲がきちんとした話芸になっているすごさ。祐子師匠98歳のお人柄がよく伝わってくる。文菊師匠、しっかりとした芸。「そのあたりはちょろちょろとしたもんで間に合わせておけ」という親方に納得のいかない清蔵がいい。で、「言い出したら聞かない、そこがお前のいいところだ」。

12月15日(火)18時

「神回」「怪獣のバラード」立川笑二「最後の夏」「ほんのひとくち」瀧川鯉八

笑二さん、新作2席。「ひとりっ子だけど、オカルト兄弟のお兄ちゃんです。俺の妹にならないか?チャンネル登録、よろしく!」。女子大生と付き合って、麻布のタワーマンション最上階に住んでいるマサトシ。いじめられていた学生時代から、一発逆転を狙う同級生との心理戦、その果ては…。

鯉八師匠、渋谷らくご大賞3回受賞。あと一つのアウトで甲子園だった…。ヨシダのエラーで夢と消えた。「気にするな」と言いながら、どこまでも恨みがましい監督が可笑しい。なぜか嫌味がなく、面白く笑える。