玉川奈々福「柳家喬太郎師匠リスペクトォォォ!」 尊敬の的・キョータロー師匠から多くを学び、飛躍する芸人が続出する時代が。

渋谷ユーロライブで「ぜーんぶ自作♡新作フェス#2 柳家喬太郎師匠リスペクトォォォ!」を観ました。(2020・11・23)

この会のことを書く前に、2016年からはじまった、らくご@座さんの企画制作「玉川奈々福 喬太郎アニさんをうならせたい」について触れた方がいいだろう。奈々福さんが古典&新作の両道で超リスペクトしている喬太郎アニさんを自身の芸でうならせた~い!と大胆に体当たりする会で、とくに熱々で挑んでいるのが「アニさんをうならせたい新作」。今年9月の第6回までの記録します。

#1祖師谷大蔵のカネゴン餅(2016・9・23)

#2池袋の鬼夫婦 うるとら風味(2017・6・30)

#3浪曲版 熱海殺人事件(2018・3・15)

#4今年の味噌ができた日に(2018・12・12)

#5赤穂義士外伝 噂話屋の婆のはなし(2020・1・31)

#6空手バカ!アラブ風雲録(2020・9・24)

#1#2と古典浪曲のウルトラ化が続き、喬太郎師匠から「お前、ウルトラ詳しいわけでもないのに」「オレから離れろ」とのお達しが。#3はつかこうへいの「熱海殺人事件」の浪曲化。これも「またか」という顔をされるも、「奈々福さんも、つかさんの大ファンなんです」ということで、誤解解消。#4は喬太郎師匠の作品「ハンバーグができるまで」の世界観を引継ぎ、女性目線のアナザーストーリーを展開。これはすごくよかった。さらに#5と#6は完全にキョータローディスタンスを意識して、素晴らしい新作に仕上がっていた。

「祖師谷大蔵のカネゴン餅」

お察しのように、「小田原の猫餅」のウルトラバージョンで、旅人が売れない餅屋に客が入るように、カネゴンを彫ってやり、大繁盛。それで向かいの餅屋が妬んで、「著作権侵害ですよ」と円谷プロに通報。餅屋の婆さんが困ったところで、旅人実は柳家喬太郎師匠が池袋演芸場から駆けつけ、ホンモノのカネゴンと闘うという…。よくできた新作だと思うけど、喬太郎師匠がおっしゃるように、これは奈々福さんが演るのではなく、喬太郎師匠が演ったらいいんじゃないかなあと思う。浪曲から落語への移植、いかがですか?

「今年の味噌ができた日に」

今年亡くなった奈々福さんのお母様が「丁寧な生き方」をされる方だったというマクラから入ったのが、良かった。現代は何かと、インスタントやコンビニエンスが重宝され、デリバリーや外食産業も発達しているが、やっぱり、「おうちのご飯が美味しいよね」と、一緒に行った妻と頷いていた。じっくりと出汁をとる味噌汁。糠床をちゃんと持って、糠漬けを毎日食べられる生活。いいよね。そんな「丁寧な暮らし」をするサトミと、それを喜んでいるマモルの結婚生活、いいじゃないかぁ!と思った次第。なんか、心に沁みた。

奈々福さんは去年11月に開催された喬太郎師匠の30周年の公演「きょんスズ30」@下北沢スズナリにゲストに呼ばれたことを、同じ芝居好きとして嬉しく思ったそうだ。「スズナリでやる意味を、奈々福ならわかるだろう」と。

その「きょんスズ30」の撮影をした橘蓮二さんの写真が豊富に掲載された著書「喬太郎のいる場所」(CCCメディアハウス)の中で、奈々福さんが喬太郎師匠について語っているインタビューから、少々抜粋させていただく。

後輩たちが喬太郎師匠をすごく慕っているでしょう。細かなところまで目配りして、思いやってくださいますもんね。口では厳しいことをおっしゃるんですけど、浪曲や講談がどうなっているのかなって、横目で見てくださっている感じはありますね。誰が何をしてるか、ご存じですもん。もちろん、狂気的なところが舞台で発揮されることはあるけれども、真面目で丁寧な方だと思います。なんだけど・・・怪物。どうしてそれが両立してるのかなあ。「どうしてこんな発想が生まれるの?」ってびっくりもするし。ホントに芸がお好きなんだろうな。以上、抜粋。

「玉川奈々福 喬太郎アニさんをうならせたい」は、#7をもって一旦終了するとのことだ。おそらく、来年にその#7があって、奈々福さんが今度はどんな新作を創られるのかも楽しみである。そしてまた、奈々福さんの喬太郎師匠への愛は変わらないだろうから、また別の機会にその発露を観たいと思う次第である。