【渋谷らくご 11月公演】6周年、おめでとうございます!(上)
配信で「渋谷らくご 11月公演」を観ました。(2020・11・13~18)
13日(金)18時
古今亭文菊「厩火事」橘家文蔵「子は鎹」
文菊師匠、男と女のパワーバランス今昔。「いい潮時。よく決心した。別れなさい」と薦める旦那に反論するお崎さん、立場逆転。「了見が蒟蒻みたにグニャグニャ曲がっているんだ、新吉は」「そういう人だからこそ、私が傍にいないと駄目になっちゃうんです」。
文蔵師匠、台詞の端々に「らしさ」。究極は「ところで、亀。その斎藤さんの家はどこだ?教えろ。母子がお世話になっています、そのうち御礼参りにいきますとな」。ボキボキと手の指を鳴らす。亀吉が一旦家に帰った後の台詞もいい。「雲一つない天気だ。きょうは良い天気だ」。亀吉と再会した嬉しさを表している。
13日(金)20時
立川談洲「アリとキリギリス」神田鯉栄「清水次郎長伝~羽黒の勘六」柳家小里ん「三人兄弟」古今亭菊之丞「淀五郎」
談洲さん、一番光っていた。貧富の差と人間の運命というものを新作というフィクションにして提示。えぐるような胸に迫る展開にゾッとする怖さを感じる、創作の才。
鯉栄先生、絶不調。本編に入りたくないのか、長々とつまらないマクラ。そして、本編はボロボロというか、しっちゃかめっちゃか。どうしたのか。小里ん師匠、珍品に価値あり。道楽三昧の三兄弟それぞれ。菊之丞師匠、一味足りず。仲蔵の演技指導が心持ちなのか、テクニック論なのか。
14日(土)14時
三遊亭粋歌「おじいせん」笑福亭羽光「拝啓15の君へ」立川談吉「とり」古今亭駒治「みんなの学芸会」
粋歌さん、二ツ目になって初めて創った新作落語。年金受給者クラスの老人に魅力を感じる20代女子たちに趣味趣向、あるかも。しわしわ。カサカサ。哀愁。栴檀は双葉より芳し。
羽光さん、得意のSF落語。思春期に悩む自分とオトナになった自分の往復書簡に説得力あり。最後はホロリとさせるところにも、上手さ。
談吉さん、不思議な新作が素敵。少年ワタルを乗せた鳥が大空を飛ぶと、聴き手も空を飛んでいるように思える。気持ちよく飛んでいる気分が味わえるファンタジーだ。
駒治師匠、小学生時代に戻った気分にさせてくれる。ミュージカル「ロミオとジュリエット」の役をめぐる同級生の友情。照明係も、メイク係も、裏方含めて一体になれるハートウォーミングなストーリーに自然となっている力量あっぱれ。
14日(土)17時
三遊亭兼太郎「野ざらし」柳家わさび「コーシー」三遊亭遊雀「うどんや」蜃気楼龍玉「双蝶々~定吉殺し」
兼太郎さん、本来のサゲまで。楽しみは後ろに柱、前に酒、左右に女、懐に金(太田蜀山人)。スチャラカチャンチャン、とサイサイ節をしっかりと唄う姿勢が前向き。一人色気違いの部分も奮闘。
わさび師匠、さすがの新作。江戸前至上主義が行き過ぎると…。福井県にあるデザイン事務所なのに、親方が江戸っ子かぶれで江戸前を押し付けられ、江戸ハラスメント。純平以外の新入社員はどんどん辞めていくいうのに。
遊雀師匠、頼りになる先輩。若手に信頼されるのがよくわかる。ミー坊の婚礼に行ってきた酔っ払いの描写、絶妙。美味そうにうどんをすする仕草、抜群。
龍玉師匠、本領発揮。悪知恵が働き、やがて悪党の道を歩んでいく長吉を活写している。番頭・権九郎をも手玉にとってしまう、末恐ろしい悪人ぶり。
14日(土)20時
柳家緑太「ここがヘンだよおさんさん」「たらちね」
緑太さん、饒舌。47年の歴史を誇る上越名人会の余興大会の話から、師匠・花緑の誕生日にどうやって師匠を笑わせるか、弟子たちが知恵を凝らす話への展開。「情熱大陸」のパロディ、「花いち大陸」とか、「純さんぽ」のパロディ、「圭花さんぽ」とか、見てみたい。でも、やっぱり一番弟子のおさん師匠の天然キャラクターには勝てないんだねえ。