【二ツ目勉強会 やっちゃう?!】個性の違う4人が切磋琢磨する場として順調なスタート!

お江戸両国亭で「二ツ目勉強会 やっちゃう?!」を開催しました。

コロナという逆風にくじけない。チャレンジ精神で追い風に変えろ。今年二ツ目に昇進したばかりの若手落語家4人が大胆不敵に挑む高座を目撃せよ!というコンセプトでスタートした勉強会である。三遊亭花金と昔昔亭昇が落語芸術協会、林家彦三と三遊亭ぐんまが落語協会というだけでなく、それぞれの個性が違う4人がこれから切磋琢磨していく姿を見ることができるのは大変に嬉しいことだ。

オープニングトークでは、それぞれの趣味を語った。花金は「立ち食いそば」。値段が安いけど、意外と美味しい店を探すのが好きだそうで、在住する三ノ輪にあるお店の盛りそばがお薦めだとか。彦三は「茶の湯」。狭い茶室という空間が落ち着くそうで。ウクレレもかじっているとかで、ギターを弾く昇が「セッションしましょうよ!」。昇は「ディズニーランド」。コロナ自粛期間後の再開初日の入場券を購入するためにネットで11時間かけたという。もちろん、年間パスポートは持っていて、「一人で行く」そうだ!ぐんまは「プロレス」。僕がこの「やっちゃう?!」をスタートするにあたって、4人のプロフィールを紹介するブログを書いたときに、それぞれのキャッチコピーを作ったのだが、「私のは『高座はリングだ。暴れます!』ですよ」と触れ、「もしかしたら、『道灌』演るかもしれないのに!」と笑いを取ると、昇が「僕なんか『ショウじゃないよ。ノボルだよ』ですよ!」と受け、大爆笑。

昔昔亭昇「ぜんざい公社」

前座時代に師匠から習って、二ツ目になって、ようやく「かけられる!」と満を持してのネタおろし。利用許可書、火気使用認定書、健康診断書など、いくつもの書類を、ばらばらの部署に提出しなければならない「お役所仕事」を揶揄。大正時代に活躍した上方の三代目桂文三の新作落語にルーツがあり、先代小南師匠が東京に移した落語芸術協会の噺家さんがよくかけるネタだが、ディズニーランド好きの昇らしいアレンジメントが目を惹いた。許可書を提出するために、いくつもアトラクションをクリアしなければいけないロールプレイングゲームのような演出で、元気な芸風で汗をかきながら役所の階段を昇ったり下りたりする高座に個性をみることができた。

林家彦三「染色(そめいろ)」

二代目圓歌が得意としたネタを、三代目圓歌に林家正雀師匠が勧められて演じたネタ。紺屋の若旦那が遊郭遊びが過ぎて勘当され、花魁を身請けして所帯をもった。だが、その元花魁の女房は若旦那を裏切って、50両の借金を残して家出してしまう。世を儚んだ若旦那は橋から身投げするのだが。助けられた船に乗っていた男に一部始終打ち明けるところ、「一通り聞いてくださいまし」と芝居台詞っぽく語るところ、惹きこまれた。ここに三味線が入ると、なお良いかも。

三遊亭ぐんま「禁酒番屋」

実は古典が演りたくて白鳥師匠に入門したぐんまは、先代馬生の型での「禁酒番屋」を面白く聴かせた。水カステラの後の二人目、一般的なのは油屋だが、植木屋が「肥やしにする油粕の注文で」と番屋を通る。そのまま無事通過できた、と思ったら、思わず「ふふふ」と鼻先で笑ってしまって怪しまれるという展開が可笑しい。小便作戦に女中お清も参加するし。新鮮で面白かった。先代馬生リスペクトが伝わってくる高座だった。

三遊亭花金「心眼」

マクラが印象的。昔は目の不自由な方は按摩のなるしかないというのが相場だったが、いまでは色々な職業に就いている。こういう方は努力家が多くて、難しい学問を習得して高度な職業に就いている方も多い。心眼と言って、心の眼で見るから仕事に間違いがない。このフレーズは、本編に入るとジワジワと効いてきて、良いなあと思ったら、亡くなった前の師匠の「金遊がこういうマクラでした」とのこと。さすが、この噺を十八番にしていたのがよくわかる。梅喜さんの恨みから信心、そして目が明くと慢心、奢り昂ぶり、最後は女房への感謝の気持ち、と心の揺れ動きを実に丁寧に描き、とても初演とは思えない出来栄えだった。最後の「盲というのは妙なものだね。寝ているうちだけ、よく見える」の台詞が沁みた。