【渋谷らくご 九月公演】お彼岸ですね。やっぱり、シブラクですよね(下)
配信で「渋谷らくご 九月公演」を観ました。(2020・09・11~15)
9月13日14時
三遊亭兼太郎「天災」/橘家文蔵「猫の災難」/三遊亭遊雀「三枚起請」/立川笑二「死神」
兼太郎さん、作り話のマクラはやめたほうがいい。お手紙によりますと、随分と狸だそうですな。柳家にはなりませんな。文蔵師匠、酒が好きで堪らないのが溢れ出る。畳にこぼした酒を吸い上げ、顔を擦り付け、挙句には舐める様子に爆笑!遊雀師匠、騙され3人組の間抜け。喜瀬川こと本名・中山ミツの居直ってからの強行な態度に学ぶものあり。年季が明けたらお前の元へ、きっと行きます、断りに。
笑二さん、全くマクラふらずに気合いの高座。死神は人を殺す神ではなく、人が死んでいくところを見るのが好きな神という捉え方がユニーク。身籠った妻を追い払い、妾と上方旅行に出かけてしまう極悪非道。新しい長い蝋燭は生まれてきた息子。別れた女房の蝋燭の火を拭いて消してしまい、自分の消えそうな蝋燭の火を移すことに成功するが…。あの終わり方の意味するものは何かについて、考えさせられる。
9月13日17時
柳亭市童「金明竹」/立川吉笑「ひとり相撲」/春風亭百栄「怪談話しベタ」/神田鯉栄「雨夜の裏田圃」
市童さん、きっちり。11日の小せん師匠と同じく教科書に忠実な高座。吉笑さん、擬古典の上手さ抜群。相撲好きの旦那が江戸に送った使者たちの下手くそ極まりない情景描写にイライラする様子が実に可笑しい。千穐楽結びの一番だけでいいのに、旦那の苛立ちがずんずんと伝わる。
百栄師匠、青木の意地っ張りが痛快。伊藤に対抗するが、回りくどくて、もったいぶり、いつになっても怖い話に入らない青木が愛おしい。鯉栄先生、怪談もどきの後の本格怪談。村井長庵に騙されて、お登勢を連れ出し、殺してしまう三次。土砂降りの中、自宅に帰るとお登勢の幽霊が…。このあと、天網恢恢疎にして漏らさず、となるのか。連続講談の醍醐味。
9月14日18時
柳家わさび「柳田格之進」/柳家小八「子は鎹」
わさび師匠、芸域の幅広さ。御礼程度でも、それを受け取ることに躊躇するほど、清廉潔白な柳田の人柄がよく出ている。真っ直ぐな気性は、ときとして疎まれるものだ。萬屋と二人、碁となると他のことを忘れてしまうほど夢中になるという性格も。武士の稔侍。商家の主従。きっちりと描く。
小八師匠、全体的に平板。熊、亀、女房、3人の登場人物の感情の起伏をそれぞれに出すと、ストーリーの展開も面白くなるのではないか。あえてあっさりした演出にしているのであれば、別のアプローチがあるだろう。
9月14日20時
立川談洲「蜜の味」~「むかつく」/入船亭扇里「田能久」/柳家小里ん「おしくら」/柳家喬太郎「夢の酒」
談洲さん、あえて新作二席。ファーストキスの味をグルメの男女が比喩合戦するところに、語彙の豊富さと頭の回転の速さを感じる。「新たな旅立ち」、「闇の中に灯る小さな光」。「人に愛を注ぐ勇気」・・・全部、カクテルの名はウーロンハイ!その社会や人間を斜めに斬るユーモアセンスは天賦の才か。
扇里師匠、師匠・扇橋の思い出から入る。民話的な温かさは「茄子娘」などにも通じる。小里ん師匠、いぶし銀。八熊文五郎で江戸っ子三人前なり。
喬太郎師匠、久しぶりのシブラク。大学時代のディスコ体験、接待を伴う飲食店から、接待を過剰に伴った立ち食いそば屋の妄想がキョンキョンらしい。本編、秀逸なのは、「わたしにだって、できるもん!」と頑張るお花。
9月15日18時
玉川太福/みね子「男はつらいよ 寅次郎心の旅路」/古今亭駒治「ラジオデイズ」
太福さん、専売特許。湯布院ならぬウィーンが舞台。ヒロインの竹下景子演じる久美子が出てきたときは、「出ました!」という(笑)。ドナウ川で♪利根の川風、袂に入れて~と唸るのも可笑しい。金髪の青年ヘルマンが現れ、寅さんはやっぱり失恋という、お決まりのパターンがきっちりと決まる。
駒治師匠、ノスタルジックな新作落語はピカイチ。チャコ&カフカの目立たない役割のチャコの深夜放送のヘビーリスナーが集う田舎町という設定が素敵。ラジオネームが、ファンシーストロベリー、小野妹子、世界の山ちゃん、平家の落人。師匠の抒情的な落語が大好きだ。
「しゃべっちゃいなよ」については、あす別途。