ポスト・コロナの新星たち③ 高座はリング、暴れます! 三遊亭ぐんま

14日から4回シリーズで、今年前半に二ツ目に昇進した注目の噺家さんを紹介しています。きょうは、5月下席から昇進した三遊亭ぐんまさんです。

幼い頃からプロレスラーに憧れ、高校時代はレスリング部。3年生のとき、インターハイでグレコローマンスタイルの63キロ級全国5位の実力の持ち主だ。だが、彼に言わせると「そこまでの人間だったんです」と。レスリング部引退後に音楽好きが高じ、音楽活動をスタートさせた。ボーカル、ギター、ベース、ドラムの4人でロックバンドを結成し、ボーカルを担当。ワゴン車で全国のライブハウスを回るようになった。

演奏の合間に喋るMCが「落語っぽくて、面白い」と言われ、何となく落語を聴いてみたが、気がついたらレンタルショップや図書館で落語のCDを聴きまくった。どんどん面白くなった。好きな噺家は先代金馬師匠(三代目)、先代可楽師匠(八代目)、小満ん師匠や雲助師匠、一九師匠など挙げ出したらきりがない。これは後に気づいたことだが、大好きなプロレスも音楽も落語もすべて、「お客様を楽しませるために並々ならぬ努力をするが、それを一切感じさせない商売」ということだ。そして、それを自分も目指したいと思ったし、そうすべきだと感じた。

全国巡回の活動をしている途中、東京に滞在しているときには、ナマの落語を聴きたくて、寄席に行った。寄席で気づいたのは、「流れ」があるということだ。落語だけではない。漫才、太神楽、紙切り、マジックなど・・・、色物と呼ばれる芸人さんも含め、トリに向かって集団で作っていく素晴らしいエンターテインメントだと感じた。寄席に通ううちに、寄席に出たいと思うようになった。そのとき、29歳。

落語協会には入門は30歳まで、という規則がある。焦った。ファンのことを考えるとミュージシャンを辞める決断も苦しかったが、落語は身一つで極限まで追い込み高めて、お客様を楽しませることが出来ると思った。さて、どの師匠の弟子に志願するか。「自分が面白いと思う人」、そして「この人なら、どんなことを言われても言うことをきける人」にしようと思っていた。古典落語の師匠ばかりを見ていたなかで、後に師匠になる三遊亭白鳥の「落語の仮面」の高座を観たとき、第六感が働いた。この師匠なら、生涯ついていける!と。

高座に対する姿勢が決め手だった。お客様第一主義。落語第一主義。お客様を楽しませること。これはバンド活動しているころから、大切にしていたことにつながる。これは入門してからわかったことだが、師匠は自分の時間を大切にする人だった。そして、指導方針も「基本は学び、個性を壊さず、自由にやりなさい」。お江戸日本橋亭で出待ちして、手紙を渡した。そこには「古典がやりたい」ことも正直に書いた。後日、電話がかかってきた。「新作が作れない人間は古典を演っても面白くない。新作を3本書いて送りなさい」。デッドラインの30歳まで時間がない。やるしかない。無我夢中で書いた。そして、入門がかなった。

前座時代、古典は50席以上覚えた。師匠・白鳥からは「からぬけ」と「平林」の2席を習い、あとは色々な師匠方に稽古をつけてもらった。毎月、ライブハウスで勉強会を開き、3本ネタおろしを自分に課した。そのうち1本は必ず、新作のネタおろしをするようにした。

「二ツ目になったら、経験と知識を積め」と師匠からは言われている。本を読んだり、映画や芝居を観たりするのは当然だが、興味を持ったら、とりあえず何でもチャレンジしてみようと思う。先日は、大日本プロレスのリングで落語を演った。プロレスが大好きな自分としては嬉しい仕事だった。レスリング部時代の経験を活かした「グレコ奮闘記」を演った。

群馬県愛の溢れる噺家だ。二ツ目披露では頻繁に「ランプのぐんま人」をかけた。前座時代に群馬県出身の噺家で結成した「上州事変」も活動中だ。https://www.joshujihen.com/ コロナ禍で、群馬県に行って落語をやるという一番本筋の活動ができない状況にあるが、9月19日には「上州事変」二度目の配信をやる。

10月にスタートする隔月の勉強会「やっちゃう?!」の第1回では「禁酒番屋」を演る。白鳥師匠の弟子=新作というイメージを持っている方は是非、そのイメージを払拭してください。

二ツ目勉強会「やっちゃう?!」@お江戸両国亭

10月19日(月)19時開演 木戸銭2000円(当日精算)

三遊亭花金「心眼」林家彦三「染色」三遊亭ぐんま「禁酒番屋」昔昔亭昇「ぜんざい公社」

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