【渋谷らくご 八月興行】 ニッポンの夏、シブラクの夏(上)

配信で「渋谷らくご 八月興行」を観ました。(2020・08・14~18)

サンキュータツオ著「これやこの」(角川書店)を読みました。そこには、亡くなった左談次師匠と喜多八師匠のことが書かれていました。感動とか、そんな言葉では簡単に片付けることのできない、なにか得も言われぬ情感が湧きだして止まらず、最後はボーッとしてしまいました。この本を読んだ感想については、軽々と僕には書けないと思いました。もう少し時間が経って、もう一度読み返して、自分の中で咀嚼できる日を待ちたいと思います。

ただ一つ言えることは、タツオさんはずっと、このシブラクに対して精魂を傾けてきたことを改めて確認できたことが嬉しかった。それは、それは、落語への情熱や敬意は僕のそれとは比べ物のならない(比べるな!という話ですが)ものをタツオさんがお持ちであること。そして、そのタツオさんに一歩でも近づける努力をしたいと心に決めたことです。ですから、うざったいかもしれませんが、8月のシブラクも全公演を配信で観させていただきました。ありがとうございました。

14日18時回「五人廻し」立川寸志/「万金丹」快楽亭ブラック

寸志さん、五人を四人で片づける絶妙な工夫。①元和3年の吉原百科事典のような蘊蓄の啖呵の職人②大日本帝国軍人③吉田の兼ちゃんも歌っているでゲショ?の通人④木兵衛大尽。①のあと、喜助に「この前の『上納金納められないから玉代返せ』という男も喜瀬川の客だよ」と言わせ、①の前に⓪があったことをほのめかせているのがグッド!

ブラック師匠、マクラは過激なので触れません(笑)。「ひもじさと寒さと恋を比ぶれば、恥ずかしながらひもじさが先」が、最近は熱中症があるから「寒さじゃなくて、暑さに変えた方がいいんじゃないか」に共感。

14日20時回「堀の内」台所おさん/「ろくろ首」立川談吉/「山内一豊 出世の馬揃」/「景清」古今亭菊之丞

おさん師匠、キャラがそもそも粗忽っぽいのでニンの噺か。行き先を察して教えてくれた人がいたのに、また忘れてしまい、「同じ人に訊くのは恥ずかしい」と違う人に訊いてみたら、「さっきの人ですよね」。すげー、わかる。

談吉さん、人間の廃物利用というフレーズは家元から。「アタイも25だから兄貴に負けないで」、「おかみさんをもらいたい」を5回連呼する与太郎がカワイイ。どうやって食べていくのか?という隠居の問いに、朝はおふくろに納豆を売りに行かせ、昼はおかみさんに内職をさせ、夜はおふくろの夜の店に出して客うをとる!お客がシャーッと吸い込まれて、前方後円墳が出る!は談吉さんらしい世界観。「どこに需要があるんだ」!(笑)

鯉栄先生、三方ヶ原軍記の稽古をしていると、「法螺貝を吹く音が聞こえる」という両親。だが、冷静に「それ、扇風機の音だよ」と言い捨てた妹さんがいい。菊之丞師匠、♪明いた目で見て気を揉むよりも~いっそ盲(めくら)がマシであろう~♪松風や音羽の滝の清水を結ぶ心はすずしかるらん~ 彫物師の定次郎がまた目が明いて名人といわれるような作品を作りたいという一心な気持ちとの裏腹。これが落語。

15日14時回「不動坊」春風亭一花/「四段目」隅田川馬石/「木乃伊取り」立川笑二/「五人廻し」橘家圓太郎

一花さん、伸び盛り。おたきさんと吉公が一緒になるのを阻止しようとする三人組のおバカな幽霊作戦が愉しい。「美味しい餡子を食べてもらおうと、わざわざ隣町まで行ったんだ!」、そうだよ、チンドン屋の万さんは悪くない!林家軟弱に「前座の『真景累ヶ淵』なんか誰も聞きたくねーんだよ!」「10日間、みっちり!」(笑)。

馬石師匠、定吉の芝居狂いがよく出ている。「騙るに落ちるとはこのことだぁ。謀る謀ると思いしに、かえって薬缶に謀られたぁ」。「横暴な雇い主、奉公人を餓死せしむる。噂になるぞぉ」。蔵の中の一人芝居、判官切腹。師匠が「淀五郎」を演ったときの素晴らしさが、ちょっとだけ頭をよぎった。

笑二さん、清蔵の「まんま炊きの了見」。あれだけ鼻息の荒かった清蔵が、次第に懐柔される様子。女房代わりの牛姫が同じ田舎者同士と判っても、手が握れない純情。牛姫が「握ってくれないのは嫌いだからなのか」とウソ泣きするのに、見事に騙され、はまってしまう素朴。

圓太郎師匠、きのうの寸志さんとは違う重み。①三つの頃から大門を出たり入ったりして、鬼ごっこして遊んだお兄ぃさん②僕の妻は闘病しておる。健全なる精神と肉体の欲求を満たすことができない。真の女郎買いの本分とは何か!③傾城傾国に咎なし、通うまろうどに咎あり。寒からんほどに見ておけ峰の雪、でゲショ!④流山お大尽。エドツコとはオラのことだよ!玉代3円85銭、返せ!⑤別のお大尽。

15日17時回「転失気」橘家文太/「ホームランの約束」春風亭百栄/「ニライカナイで逢いましょう~ひめゆり学徒隊秘抄録~」

文太さん、身近な知ったかぶりエピソード。タレントの江頭何時何分だっけ?5時50分?2時20分?家族中でわからないくなり、テレビのチャンネルを回して、江頭さんが出る番組を探していたという。「当時、スマホなんて便利なものはなかったから」。そういう意味で、「テンシキ」の意味を必死の探る珍念は、ある意味、修行をしていたのかも。「仏に仕える身でありながら、私の心に悪魔が棲み付いてしまいました」等、喬太郎師匠から習ったのがよくわかる高座。

百栄師匠、春に披露目がほとんどできなくなり、8月上席から披露目を再度スタートした新真打5人の、「しょーもない」紹介が愉しい。歌扇師匠、性質の悪い友達に監禁されたことがある。柳勢師匠、前座時代に一緒に働いていた女の子をちょっと好きになったことがある。志う歌師匠、NHK新人落語コンクールで優勝した。一左師匠、前座時代に空き巣に100万円盗まれたことがある。丈助師匠、僕と年齢が同じ。バク転ができる。

春蝶師匠、父親が噺家だったので、よく噺家さんと子供の頃から遊んでいた思い出。ざこば師匠とファミコンのスーパーマリオブラザーズを一緒にやって、ムキになっていた。枝雀師匠にてっちりを食べながら、「何か悩み事はありませんか?」と問われた。そこから生きることに疲れた人たち~もっと大変なことを経験した人たちから学べば、コロナ禍の我々も乗り越えることができるのではないか、という深いマクラから、長編創作落語75分間へ。メチャクチャ感動しました。これについては、後日、別途、ブログに書きます。

15日20時回「リモートお中元」「もう半分」柳家緑太

緑太さん、噺家のお中元慣習。お世話になっている先輩のお宅にアポなしで訪問しなければならない。今年はそうもいかず、師匠・花緑と数人の弟子とzoomを使って疑似訪問したが、師匠がおしゃべりなので、延々独演会のマクラみたいになっちゃった。それと、おさん師匠のフラのすごさを痛感した話。

「ランボー2」(1985)を観たが、ただただランボーが暴走する話だった。そこから「ランボー」を観たら、これが名作。奥行がある。「ランボー3」「同4」も「同2」に同じ。で、現在公開中の「ランボー5」もまた…。ちなみに4のサブタイトルが「最後の戦場」、5のサブタイトルが「ラスト・ブラッド」。

「もう半分」は、馴染みの居酒屋に娘が吉原に身を売って作った50両が入った風呂敷包みを忘れたところから。青物問屋の主人が酒で身を持ち崩し、棒手振りの八百屋になって…と、後半の怪談噺要素より、人情噺の風情が新鮮。