三遊亭粋歌の進化する新作落語 「落語の仮面」風に言えば、彼女の新作ロードはまだはじまったばかり

らくごカフェで「三遊亭粋歌の新作びゅーびゅー」を観ました。(2020・06・05)

フェイスシールドを装着して高座にあがった粋歌さん。3密を避けた定員30人制限、入場前のアルコール消毒、お客様のマスク着用義務など、新型コロナウイルス感染防止策を講じて、2月23日以来、久々に開催された、らくごカフェでの粋歌さん主催の勉強会の客席は、ユーモアあふれる演出で湧きました。さらに、お客様に撮影タイムを設けるサービスもあり、さらに湧きました。

粋歌さん自身、高座に上がるのは、5月10日の渋谷らくご、無観客配信での「夏の顔色」以来。お客様を前にした高座は3月下席池袋演芸場「新作台本まつり」で27日に「すぶや」を披露して以来だ。外出自粛期間中は、YouTubeなどを使った配信に取り組む若手も多い中、粋歌さんは自宅で録音した自作の落語をFacebookで3回、音声のみで配信し、「自分らしさ」にこだわったのが、いかにも粋歌さんらしいやり方で、逆にホッコリしました。(僕は「夏の思い出」と「二人の秘密」を聴きました)

緊急事態宣言が解除され、在宅勤務から出勤して仕事をする従来の会社員に戻った人も多いと思うけど、久しぶりに会った同僚とかに、「太った?」「2か月、何してた?」という定型文的な挨拶はやめたほうがいいんじゃないか?という、粋歌さんのちょっとした提案が、元会社勤めだった経験からくる、大袈裟に言うと、感性の鋭さというのかな、センシティブな気配りとというのかな、そういうところが僕は好きで、だからこそ、今の世の中で共感できる新作落語がこしらえられるんじゃないか、という気がします。

現在、落語協会の二ツ目の香盤で筆頭に位置する粋歌さんが、真打昇進を見据えてはじめた勉強会がこの「新作びゅーびゅー」で、眼目は「蔵出し!あの新作落語をもう一度やってみよう」のコーナー。新作落語を作る作業は、作った人にしかわからないご苦労が沢山あるし、作ったら作ったで、それをかけてみて受けるかどうか?という不安な気持ちに苛まれるわけで、相当な負荷がかかる。そう量産できるものではないのだと推察できます。渋谷らくごでの「しゃべっちゃいなよ」、なかの芸能小劇場での「せめ達磨」と、創作をする場がある粋歌さんは、この「びゅーびゅー」に関しては、過去に作ったのに、そのままにしておいた作品を蔵出しして、ブラッシュアップし、お客様の前で今後かけられるネタのグループに入れられたらという思いがあるのだと思います。そういう意味で、とても大切な勉強会だと僕は勝手に思っています。

「コンビニ参観」

これは寄席でかけられるネタとして鉄板ですよね。そして、いつ聴いても笑っちゃう。この噺に出てくる東大法学部1年生のショウちゃんは、ある後輩の「おぼっちゃん」キャラの噺家さんをイメージしているそうで(笑)。

「オバーエンディングストーリー」

これが今回の蔵出し。去年9月の「せめ達磨」でネタおろしした高座を拝聴し、僕はすごい面白い!と思ったのですが、その後、聴く機会に恵まれなかったので、とても嬉しかった。そして、やっぱり、面白い!「おばさんあるある」を題材にしているんだけど、これは若い年下から見た「あるある」ではなくて、40代、50代の女性が共感できる「あるある」。僕の妻も一緒に聴いてて、「わかる、わかる!」と頷いて、大笑いしていましたから、間違いないです。

粋歌さんは「大人女子」という言い方もされていましたが、どうしても、その世代の女性は「私、見た目が実年齢より若く見られがち」と思いこんでいて、客観的には「そーでもない」のに、「私、メイク落としても、すっぴんと変わらないんで」とか、「息子と歩いていると、お姉さんですかと言われて困る」とか言っちゃうんだけど、それこそが「おばさんあるある」だという指摘、鋭い!

あと、「どちらかと言うと、私、おっさんなんですよ」発言には大爆笑。サバサバ系の天海祐希をイメージしている。でもね、そういう、おばさんって、僕はカワイイと思いますよ。石田ゆり子、もっと上だと萬田久子?そのあたりに憧れている、それも口に出さずに、無意識に。それって、「永遠に綺麗でありたい」と思っているということでしょう?それ、素晴らしいと僕は思います。女性を捨てたらおしまいですから。だから、そういうメッセージがこもった新作という捉え方をすれば、なんの障りもない、むしろ、演ってほしいネタだと思いました。

「落語の仮面」第7話「短命からの脱出」

粋歌さんがこの「落語の仮面」シリーズに挑戦し続けているのには、2つのリスペクトがあると思うんです。作者である三遊亭白鳥師匠の荒唐無稽な新作落語へのリスペクト。もう一つは、若い頃から愛読してきた少女漫画「ガラスの仮面」と、その作者である美内すずえ先生へのリスペクト。その2つの土台に支えられて、粋歌さんがご自身の言葉や表現によって1話ずつ覚え、かけていき、圓朝作品を名人上手が手掛けてきたように、習得しいく。ご自分の「落語の仮面」にアレンジしていく作業をなさっている。すごいことだと思います。目標は真打までに、全10話を完全に自分のものとしてマスターすることかと思いますが、焦ることなく、ご自身が納得のいく「落語の仮面」を作り上げていくことを期待しています!

今後の三遊亭粋歌さんの出演予定ですが、

6月16日渋谷らくご「しゃべっちゃいなよ」20時開演 笑福亭羽光、柳家花いち、立川笑二、瀧川鯉八 ※50席限定観覧(当日券のみ)、配信もあり。

7月1日「落語の仮面」@高円寺ノラや、19時30分開演(定員20人制限で、すでに定員に達したそうです)柳亭こみち、一龍齋貞寿、春風亭一花

8月31日新作びゅーびゅー@らくごカフェ、19時開演

今後、ますます粋歌ワールドは面白くなっていくと思います。「落語の仮面」風に言えば、彼女の新作ロードはまだはじまったばかりです。これからも、応援していきたいと思います。

さて、5月22日から予約を開始した「三遊亭粋歌・春風亭正太郎ひざふに二人会」ですが、緊急事態宣言解除もされて、さまざまな感染拡大防止策を講じて開催予定です。

第1回三遊亭粋歌・春風亭正太郎ひざふに二人会~出発の巻~

7月30日(木)18時30分開演 @お江戸日本橋亭

三遊亭粋歌「一年生」ほか一席 春風亭正太郎「甲府ぃ」ほか一席

事務局 予約・お問合せ yanbe0515@gmail.com