「SWA再始動」延期 世に平穏が戻ってから、明るく迎えたいですね
メールで【SWAクリエイティブツアーinにぎわい座 中止のお知らせ】が届いた。
万全の体制で開催を予定しておりました「SWAクリエイティブツアーin にぎわい座」ですが、新型コロナウィルスが猛威をふるう状況となり、さまざまな影響を出演者一同検討・話し合いを繰り返した結果、開催を中止とさせていただくことになりました。この会を楽しみにご予定をしていただいた皆さま、誠に申し訳ございません。アタシを含め初老の兄さん方も残念がっておりますが、次なるSWAの高座に向けてまた準備をしてまいります。出演者一同皆様の再会を切に願っております。あの白鳥師匠でさえ願っております。次回公演元気にお会いいたしましょう。
SWA 1号 林家彦いち/SWA一同
「東京かわら版」4月号の特集で「SWA再始動」と題して、メンバー4人の座談会が載っていて、僕も4月23日に行く予定にしていたが、こういう社会情勢なので、「再始動」は世の中が平穏になってから、明るい笑い声で迎えたい。それまでは、私たち落語ファンも我慢のときである。SWAメンバーの心中を察すると、誰よりもつらいのは彼らなのだから。
2011年に発売された「落語ファン倶楽部 VOL.14 まるごと、ぜ~んぶSWA」(高田文夫/笑芸人編)、「8年間ありがとう 第一次SWAファイナル座談」の冒頭でにこうある。以下、抜粋。
いつもご声援ありがとうございます。SWAの最大の功労者はお客様です。毎回毎回、多くの皆さんに集まって頂くことが、良い作品をお届けしなくてはという強いモチベーションとなっていました。温かい拍手が嬉しかったです。
最初、みんなで集まった時には、2、3年という予定だったんですが、やりたいことが後から後から出て来て、楽しく続けて早八年になりました。おかげさまで、今、メンバー各々の仕事が以前より増え、一緒に集まってネタを作ることがほぼ出来なくなってきているんですね。
という訳で、ここで、第一次SWAの活動を休止することにしました。解散ではありません。また活動を再開したいなってことは、休止を決めた時から思っていることなので、その節はまたよろしくお願い致します。 心より感謝をこめて。 4号こと春風亭昇太
2004年6月5日「SWAクリエイティブツアー VOL.1」が新宿明治安田生命ホールで開催されたのがスタートだ。僕は長野に勤務していて、その年の夏に東京に戻ってきた。しかし、「SWA全公演史」をながめると、僕はその1/3も行けていない。初めて行ったのが05年12月26~29日で開催された「SWAゲリラ」@下北沢「劇」小劇場。その3日目の「SWAも粋だぜ~古典落語」。鮮明に覚えている。以下、僕が行った公演記録です。
05年12月28日「SWAも粋だぜ」@下北沢「劇」小劇場
喬太郎「反対俥」昇太「つる」彦いち「厩火事・北の国から」白鳥「実録・お見立て」
06年8月20日「SWAクリエイティブツアー 夏休み」@新宿明治安田生命ホール
昇太「罪な夏」白鳥「明日に向かって開け」彦いち「掛け声指南」喬太郎「八月下旬」
07年9月23日「SWAリニューアル~第二章~明日の朝焼け」@新宿明治安田生命ホール
白鳥「恋するヘビ女」昇太「夫婦に乾杯」彦いち「臼親父」喬太郎「明日に架ける橋」
08年10月28日「SWAクリエイティブツアーブレンドストーリー 願い」@新宿明治安田生命ホール
彦いち「掛け声指南」白鳥「奥山病院奇譚」昇太「空に願いを」喬太郎「カラダの幇間」
10年10月19日「SWAクリエイティブツアー 古典アフター」@本多劇場
白鳥「かわうそ島の花嫁さん」喬太郎「本当は怖い松竹梅」彦いち「厩大火事」昇太「本当に怖い愛宕山」
11年7月25日「SWAクリエイティブツアーすばる寄席シャッフル」@紀伊國屋サザンシアター
喬太郎「任侠流山動物園」彦いち「自殺自演」白鳥「全身日曜日」昇太「火打石」
11月30日「SWAファイナル 書き下ろし」@本多劇場
喬太郎「再会のとき」昇太「心をこめて」白鳥「鉄砲のお熊」彦いち「泣いたちび玉」
12月4日「SWA 新ブレンドストーリー クリスマスの夜に」@本多劇場
彦いち「青畳の女」喬太郎「想い出芝居」昇太「パパは黒人」白鳥「砂漠のバー止まり木」
12月5日「SWAクリエイティブツアー FirstLast」
喬太郎「ハンバーグができるまで」昇太「空に願いを」白鳥「真夜中の解散式」彦いち「掛け声指南」
「東京かわら版」04年11月号~11年12月号にメンバーが交代で執筆ししていた連載「新作日和」の最終回で昇太師匠がこう書いています。以下、抜粋。
もがき、苦しみ。脳の中からストーリーの一雫を絞り出す創作活動は、非常にキツイ作業だ。そして、創ったからと言って評価されるとは限らない。頭から馬鹿にする人もいる。(中略)不必要な所はカットされ、足りない所にはプラスされている古典が素晴らしいなんて事は、ゼロから物語を書いている新作落語家の方がよっぽど解っている。こんなワリに合わない事を何故やっているのだろう?とも思う・・・でも創らずにいられないのです。(中略)ウケた時の、あの身体中の細胞が弾けるような感覚を知っているからです。考えてみればSWAの八年間はそんな事の繰り返しでした。
そして、「東京かわら版」4月号の座談会で喬太郎師匠はこう言っている。
今回のSWA再始動は「ちょっと今の落語界、またやらないとやばいんじゃない?」ではなくて、「(落語界が)豊かな中で俺たちもまた楽しいことやろうぜ」っていう感じなんじゃないですかね。
最後に、11年12月5日「SWA FirstLast」のエンディングについて書いた僕の当時の日記を追記させてください。
4人の高座が終わって、最後にメンバーが揃ったときの昇太・喬太郎両師匠の言葉が印象的だった。昇太師匠「新作を作っていて、正直、ハートが折れそうな時期もありました。書いても、書いても誉められない。古典はひとつネタを覚えると、勉強したなと誉められる。でも、僕は新作をこれからも書き続ける自信があります」。喬太郎師匠「落語は落語だ。新作も古典もない。そう言われる時代が第2次SWA、第3次SWAの頃にはやって来ると確信しています。何かが始まるために、一遍、終わるだけのことです」。そして、最後に昇太師匠がSWA結成の時に宣言した言葉で締めくくった。「芸人ならば、自分のネタがほしい、新しいネタがほしい、というのは当然の欲求です。我々は異端児じゃない。スタンダードです!」。心に沁みる言葉だった。
もう一度繰り返します。「SWA再始動」は世の中が平穏になってから、明るい笑い声で迎えたい。それまでは、私たち落語ファンも我慢のときである。
※ソニー来福レーベルで発売中
CD「SWA2006 夏休み」「SWA2007 明日の夜明け」「SWA2011 楽語・すばる寄席シャッフル」「SWAのFINAL クリスマスの夜に」
DVD「SWAのDVD」「SWAのDVD-古典アフターー」