【5月6日まで寄席は休館です】新宿末廣亭三月下席7時間(3月24日)

新宿末廣亭で「三月下席」を観た(2020・03・24)

※緊急事態宣言が出て、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、都内4軒の寄席は5月6日まで休館することになりました。

お世話になっている三遊亭金かんさんが、前座から二ツ目に昇進する最初の興行に出かけた。金かん改メ三遊亭花金。ひと昔前のOLさんの週末みたいだけど、何だか愛嬌のある名前で好きだ。開演前にお祝いに行ったら、「きょうは師匠にゆかりの落語をやります!」と力強く、明るく応対してくれて嬉しかった。

「師匠」と言ったのは、去年3月24日に亡くなった三遊亭金遊師匠のこと。花金さんの兄弟子の金の助さんが二ツ目に昇進し、故郷の岡山でお祝いの落語会に出演した後、ホテルで急死。突然の訃報に、落語界がビックリし、ショックを受けた。今、二人は三遊亭笑遊師匠の門下に入っている。ちょうど一周忌の日に伺った。

ホテルで亡くなる前、花金さんは酔いつぶれた金の助さんを横に、金遊師匠と二人で会話したそうだ。「俺、野垂れ死にするのはやめるよ。長生きするよ」。師匠は若い頃からインタビューで「俺は野垂れ死にするような落語家になる」と口癖のように言っていたという。それが弟子が二ツ目になったことで、考えが変わったのかもしれない。そんな矢先の出来事だった。言葉が出ません。

いつか、師匠の十八番「心眼」を花金さんが高座でかける日を楽しみにしている。そして、この日は「真田小僧」を、「薩摩に落ちた」の本来のサゲまでしっかりと演じ切って、頼もしかった。そういう将来の名人の卵を見つけて、その成長を見守るのも寄席の楽しみだし、ベテランの師匠の熟練の高座をのんびりと愉しむのも寄席の魅力だし、たくさんの色物が彩りを添えてくれるのも寄席ならではだ。のんびりとリラックスして、昼席の開口一番からおよそ7時間を過ごした。ぼんやりと、頭をカラッポにして楽しむ。これが寄席の醍醐味だろう。昼席開演から夜席終演まで滞在することができる。末廣亭は原則、昼夜入れ替えなし。

現在、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から都内にある4軒の寄席は5月6日まで休館中です。3月24日の末廣亭は閑散とした入りだが、まだ開いていました。ザッと見渡した限り、20人ほどのお客さんだった。10人1列の座席の3列目には僕しか座っていない。みんな思い思いの席に、程よい間隔で座っている。両脇の桟敷席にも、畳に座って聴くのが好きなお客さんが5人ほど。マイペースで聴けるのが良い。自分のタイムスケジュールで入場し、退場できる。もちろんトイレにも。ただし、演者の交代時がマナーです。飲食も自由(ただし、アルコール飲料は禁止)。僕はお弁当を伊勢丹で買っていき、昼食にしました。

愛橋師匠、独特のリズムが良いなぁ。陽・昇の漫才、いつも新鮮だなぁ。無観客の春場所を振り返り、相撲甚句を歌う一矢さん。鯉昇師匠、ホール落語とは違うほのぼのとした味わい。昼の主任の夢太朗師匠、「中村仲蔵」を寄席らしい演出で肩が凝らない。花金さんと同時に二ツ目昇進のあんぱん改メ小とりさんが有坂勉(柳家金語楼)の新作落語へチャレンジ!上方落語からの参戦、べ瓶師匠が面白かった!小すみさんも才気煥発。小泉ポロンさんの女王様のような口調と怪しげな雰囲気が好き。笑遊師匠、時間が足りないよと思ったら、瓦投げの前でサゲ!

ギスギスした現代社会から離れる贅沢。7時間居続けしたのに、全然疲れない。むしろ、ゆるーい雰囲気に癒されました。イベント色のない寄席という空間を体験することは、60分のマッサージより効果的です。私たちが一丸となって不要不急の外出を自粛し、この感染拡大が終息して、再びこういう空間を楽しめる日が戻ることを祈りたいです。

「道具や」桂伸ぴん/「権助魚」春風亭昇吾/相撲漫談 一矢/「真田小僧」三遊亭花金/「浮世根問」春風亭愛橋/ウクレレ漫談 ぴろき/「堀の内」三遊亭兼好/「石松三十石船」玉川太福/コント 山口君と竹田君/「松山鏡」三遊亭遊史郎/「長命」三遊亭円馬/奇術 北見伸/「蟇の油」三遊亭遊之介/中入り/「辰巳の辻占」昔昔亭桃之助/漫才 宮田陽・昇/「馬のす」瀧川鯉昇/「鈴ヶ森」桂歌春/太神楽 翁家喜楽・喜乃/「中村仲蔵」三遊亭夢太朗

「たらちね」春風亭かけ橋/「初音の鼓」三遊亭遊子/奇術 小泉ポロン/「英会話」三遊亭小とり/「紙入れ」瀧川鯉斗/バイオリン漫談 マグナム小林/「秀吉の猿」笑福亭べ瓶/「浅草散歩」?桂歌蔵/音曲 桂小すみ/「愛宕山」(序)三遊亭笑遊/「時そば」三遊亭遊三

※一刻も早く新型コロナウイルス感染拡大が終息し、再び寄席に明るい笑い声が戻ってくることを願うばかりです。