春風亭一花真打昇進披露パーティー

春風亭一花真打昇進披露パーティーに出席しました。

2012年の春風亭一之輔師匠以来、14年ぶりの抜擢単独真打昇進を果たした春風亭一花師匠(もう、師匠と呼んでいいのだろう)の昇進披露宴が帝国ホテル孔雀の間でおこなわれた。

司会は兄弟子の春風亭一蔵師匠と文化放送の水谷加奈アナウンサー(ラジオ番組「一蔵のラジオマガジンフライデー」のMCコンビ)で、披露宴は一花師匠の入場からスタートした。通常、師匠に伴われて入場するパターンが多いが、一花師匠は一人でスタスタとステージに直進。思わせぶりにしない演出に、一蔵師匠が「さすが、江戸前ですね」と突っ込みを入れるのが可笑しかった。

まずは落語協会会長に就任したばかりの林家正蔵師匠の挨拶。2006年秋の真打昇進は見送りにしようかという空気の理事会で、一之輔理事が真剣な表情で手を挙げ、「一花を真打にするのはどうだろうか。NHKの新人落語大賞も受賞し、研鑽しているのが良くわかった。頑張った者が報われるという意味でも、一花を世に送り出すのはいかがでしょうか」と提案し、全会一致で決まったという。落語協会が伝統を守りながらも、新しいモノを生み出していく、その第一弾になったのではないでしょうか、と。

次に落語芸術協会の春風亭昇太会長の挨拶。「さっき、一花さんのお母さんとお会いしまして。将来、一花さんはこんな感じになるのかなあと好感を持ちました」。女性落語家というけれど、本来は男も女も関係ない世界。ただ、今は女性に良い風が吹いていることは確かで、その風をうまいこと利用して、注目されるように頑張ってほしいとエールを送った。そして、この披露宴に600人が出席していると聞いて、「関ヶ原に戦いで大谷吉継が率いていた人数と同じです」と笑わせた。

続いて、一花師匠の出身大学である立教大学総長の西原廉太教授は「立教が芸人を多く輩出している」ため、同窓会の中に寄席演芸立教会という組織が出来たと紹介。ものまねの江戸家猫八師匠をはじめ、一花師匠の夫の金原亭馬好師匠ほか、柳家小はださん、桂枝平さん…などが所属しているそう。「来年度から本学13番目の学部、演芸学部が新設されることになりました…嘘です」と冗談を飛ばした。

寄席を代表して鈴本演芸場の鈴木敦席亭が挨拶。2013年に一花師匠が楽屋入りしたときの印象は「声が良いな」。しっかりしているようで、抜けているところもあり、楽屋仕事でも数々のしくじりがあったとか。その度に平身低頭、うるうるとした目で謝る姿も印象に残っているそう。出身地浅草橋の例祭、鳥越祭の神輿を担ぎたくて師匠に「寄席を休んでもいいですか」と許しを求めたのは有名な話らしい。人の懐に飛び込むのが上手くて、先輩には可愛がられ、後輩には慕われる。これは噺家としての武器だと讃えた。9月21日からの真打昇進披露興行には、特別ゲストとして桂二葉さんら上方の噺家や講談の田辺いちかさんも出演することも明かした。寄席を愛し、寄席に愛され、寄席に来るお客様に愛される春風亭一花の存在に大いに期待を寄せた。

鏡開き、そして乾杯の音頭は浅草演芸ホールの松倉社長。中締めとなり、桂文珍師匠と春風亭小朝師匠が登壇した。二人とも一花さんがNHK新人落語大賞を受賞したときの審査員で、ともに10点満点を付けた。文珍師匠が「コンクールが始まる前の挨拶で、おはようございますと言うべきところを、間違えて『おめでとう』と言ってしまった」、小朝師匠は「審査が終わって控室に戻ったときに、きょうの審査は楽だった、良い審査をさせてもらった、全員が喜んだ大賞だった」と振り返った。

立教大学応援部によるパフォーマンス。さらに立教の先輩の徳光和夫さん、おきゃんでぃーずの二人(林家つる子と林家あんこ)、柳家喬太郎師匠、林家たい平師匠、桂二葉さんのビデオメッセージが続いた。

そしてお待ちかねの余興タイム。夫の馬好師匠の亡くなったお父さんがベーシストだった関係で、そのご友人によるバンド演奏、尚且つ林家たけ平師匠の司会で昭和歌謡ショーだ。まずは入船亭扇遊師匠と柳亭こみち師匠のユニット「愛と茂」が歌う「星降る街角」の替え歌一花祝福バージョン。次はタブレット純先生がムード歌謡「コモエスタ赤坂」を熱唱。そして、トリは元落語協会会長の柳亭市馬師匠の「俵星玄蕃」フルバージョン!堪能した。

最後は師匠一朝師匠と一花師匠の挨拶。一朝師匠。男の世界へ弟子入りになるので、最初は断ろうと思った。セクハラ、パワハラは当たり前のおっかない世界だと喫茶店で懇々と諭したが、どうしても噺家になりたいという。じゃあ、他の師匠を紹介しようか?と言うと、「いえ、私は師匠でなければ駄目なんです」と言われちゃった。私も江戸っ子。「弟子にするよ!」と引き受けた。そのうち、一花が嬉しさの余り泣き出し、喫茶店の他のお客さんから冷たい視線を浴びてしまった。

その一花が単独で抜擢で真打になるという。これは当人の努力の賜物ですよ。一門の中では、唯一のチャキチャキの江戸っ子。他の弟子は皆田舎の出だから(笑)。この子の良いところは、良い意味で女性を感じさせないところ。爽やかな色気で、嫌味がない。これからも気負わずに自然体でやってほしい。毎日の高座が芸を磨く。是非、応援をよろしくお願いします。

これを受けて、一花師匠。パーティーの進行がどんどん押していたことを受けて、「尺を守れる寄席芸人になります」と笑わせる。そして、お世話になった全ての人に感謝の言葉を丁寧に綴ったのが印象的だった。前座の頃からずっと応援してくれたお客様。一人だけ女であることで気を遣ってくれた一門の先輩たち。男と女関係なく「同じ師匠に入門した弟子」として扱ってくれた。披露目の準備を嫌な顔ひとつせずに手伝ってくれた後輩たち。そして、おかみさん。おかみさんとは沢山、人生の話をさせてもらったことに、ありがとうと言いたい。最後に師匠。私を弟子に取ってくれたときの笑顔は忘れない。取ってくれたお陰でこんなに愉しく過ごせている。これらもすべて、「落語」によって結ばれた縁。これからも、悔しいことや楽しいこと、一歩一歩踏みしめながら、自分のペースで歩いていきたい。力まずににこやかにそう語る一花師匠の挨拶を聞きながら、これが一花師匠の魅力なんだよなあと思った。

大締めは金原亭馬生師匠。一花師匠の夫、馬好師匠の師匠だから、「義理の伯父さんに当たります」。これからが大変、9月21日からはじまる45日間の披露興行が連日満員御礼になりますようにと願って、出席者全員で三本締めでお開きとなった。