噺ノ目線 弁財亭和泉「お久しぶりね」、そして晩稲二人会 三遊亭花金「化け物使い」林家彦三「藪入り」

「噺ノ目線」に行きました。

「お久しぶりね」弁財亭和泉/「そのままでいいよ」林家きよ彦/「天満最強トーナメント」桂文りん/中入り/「鋼鉄超人デルタにゃん」神田桜子/「エステサロン」鈴々舎美馬

和泉師匠の「お久しぶりね」。何か、小柳ルミ子の唄みたいなタイトル(笑)。10年ぶりに再会した男女、女性はスーパーマーケットの万引きGメン、男性は万引き犯という…。万引きした商品が、メカブ、モズク、キクラゲ!「この三つで何を料理しようと思ったの?」と問い詰めた女性は、その次に「変わってないね。あの時と一緒だ」と言う。

メカブは奥さん、モズクはずっと好きだった本命の彼女、キクラゲは適当に遊べる女。「私はキクラゲなんだよね!」に、男は「違うよ。皆、同じように好きなんだ」。袖から出てきたキュウリとカニカマを見て、本命のモズクと一緒に三杯酢で丁寧に酢の物を作るのだろうと見抜く。「本命だからね!のろけているんじゃねーよ!」。それに比べてキクラゲの私は余ったカニカマと一緒に中華炒め。「米と合うんだ」と言う男に「米がないと成立しない関係か!」と怒る。万引きした食材で、万引き行為だけでなく、万引き犯の男の了見を問い詰めるという、和泉師匠ならではのセンスの良さに感服した。

きよ彦さんの「そのままでいいよ」。彼氏と別れて、そのストレスから30キロ太ったヨウコだが、太ったことでもてるようになったという逆転の現象が面白い。「将来性と安心感がある」とプロポーズされたり、「炊飯器のイメージにピッタリ」と渋谷でCM出演にスカウトされたり、チャーハンを作る二の腕や唐揚げをマヨネーズをかけて食べる様子をインスタにアップしたら、フォロワーが108万人になったり…今は「もてることがストレス」と悩むポジティブな考え方がきよ彦さんらしくて良い。

美馬さんの「エステサロン」。何度聴いても面白い。エステティシャンの営業における魔法の言葉。「すごーい。こんなに効き目のある方は滅多にいませんよ」「お肌、生まれ変わりましたよ」「20万円で10年若返ると思ったら安くないですか」「右側の頬だけ、あがっているの、わかります?」…。主人公ラブが10年前にギャンブルにはまって多額に借金を作って蒸発した父親に再会したときの恨みをこめた会話の中に、これらの営業トークがちゃんと仕込みになっている精緻な計算が素晴らしいと思う。

晩稲二人会に行きました。三遊亭花金さんが「棒鱈」と「化け物使い」、林家彦三さんが「伽羅の下駄」と「藪入り」だった。

花金さんの「化け物使い」。人使いが荒いと悪評の本所割下水の元御家人、岩田の隠居のところで、次から次へ言いつけられる用事を独楽鼠のように働いてこなしてきた杢助のすごさ。化け物が出る屋敷に引っ越すと聞いて、暇を貰うときに「もう主人でもなけりゃ、家来でもないから言う」とぶつけた隠居への説教は説得力がある。「千束屋に頼めばいくらでも奉公人は来るというのは考え違いだ。お前さんは人使いが荒いとえらい評判になっている。誰も来ないぞ。お前さんは人使いが荒いんじゃない、人使いに無駄があるんだ。飯の度に褌を替えて、日に三度替える、こんな無駄があるか」。

杢助がいなくなった後に出てきた化け物は一ツ目小僧と大入道。一ツ目に小言を言うと、「笑っているかと思ったら泣いているのか」「それは鼻水ではなくて、涙か」と言うのも可笑しいが、「昼間出てくるのが人に見られて恥ずかしいなら、わしがもう一ツ目を描いてやる」の台詞に隠居の強引さがよく出ている。大入道には「布巾と雑巾の区別が出来るんだな…ああ、一ツ目に教わってきたのか」「化け物は給金が要らないから助かる。でも、お前は10日に一遍でいい。あとは一ツ目でいい」と相変わらず身勝手なところが良い。

残念なのは、のっぺらぼうにも出てほしかった。「なまじ目鼻がついていると、苦労する女も多い」とか、針仕事を頼んで「針に糸を通すのはどこで見ているんだ」といったフレーズが僕は好きだ。コンプライアンスも関係するのかもしれない。「布団を敷いてくれ」と命じて、戸惑うのっぺらぼうに「そういう意味じゃないよ」と慌てる隠居も観たかった。

彦三さんの「藪入り」。九歳の亀吉を奉公に出そうと両親が決断したきっかけとして、冒頭にカブト虫を使って賽銭泥棒する息子を心配したという前振りがあったが、それがサゲにつながってくるとは思わなかった。

奉公三年で、初の藪入り。帰省した亀吉が丁寧な挨拶をするのに面を食らった父親は「どうもこの度は丁重なるご挨拶、ありがとうございます」と恐縮しちゃうところや、お店の主人からの土産のほかに自分のお小遣いを貯めて買ったという菓子を受け取り、神棚に上げて「うちの息子の御供物ですって、近所に配ろう」と言うところなど、成長して逞しくなった親の喜びがよく表れていた。父親としては「おとっちゃーん」と叫んでしがみついてくると思ったらしく、「ご無沙汰しておりますと仁義を切りやがった」というのが微笑ましい。

湯に行った亀吉の財布から五円札が3枚入っていたのを見つけて、「初めての宿りにしては多すぎないか」と心配するのも親心だろう。父親は単純な男だから、「野郎、やりやがったな。猫が秋刀魚を狙う目付きをしている」と思い込み、湯から帰って来た亀吉に「ネタはあがっているんだ」。あのカブト虫の一件があるから尚更だろう。

亀吉は驚き、「他人の財布を見るなんて、貧乏人はさもしい」と言ってしまう。だが、親としてもそれが盗んだ金だとしたら「世間様に顔向けできない」と真意を話す。だが、亀吉は純粋な目をして「鼠の懸賞で当たったんだ!」。カブト虫の賽銭泥棒が頭の隅にあった両親も安心だ。そして、亀吉が言う。「なーんだ。道理でおとっちゃんが角(つの)を出したんだ」。見事なサゲが決まった。