劇団☆新感線「アケチコ!~蒸気の黒ダイヤ、あるいは狂気の島~」

劇団☆新感線46周年興行「アケチコ!~蒸気の黒ダイヤ、あるいは狂気の島~」を観ました。

面白い。ミュージカルで面白い。それは井上芳雄さんとか山崎育三郎さんとかが引っ張っているミュージカル人気とは大きく一線画す、劇団☆新感線独特の魅力的な言葉とそれを乗せる音楽に彩られた不思議な魔力を持った「音楽劇」としての面白さだ。

演出のいのうえひでのりさんがパンフレットの「ごあいさつ」で書いている。

実は僕たち“新感線”もかつて“ミュージカル”に挑戦した作品があります。しかし僕自身の音楽的知識不足、ミュージカルの言葉と音楽の整合性への理解度の拙さから、思いばかりが空回りしてしまい苦さの残るものになりました。「やはりオリジナル・ミュージカルを立ち上げるのは難しい」。でも音楽を入れ込んだお芝居の道は諦めきれない。(中略)そんな思いで新感線なりに音楽を取り入れた芝居に取り組み続けているのが、この“新感線R”なのです。以上、抜粋。

今回、福原充則さんが脚本として、新感線に初参加した。そして、打ち合わせを重ねるうちに、「大正時代」「乱歩風味」さらに「スチームパンク風味」というアイデアが芯になって、楽しく書けたという。

「大正時代」も好きなんですよ。まだまだ江戸の名残漂う人たちが、西洋的近代化を目指したちぐはぐな文化で、未完成のままで。明治と昭和の間の、時代の狭間な気がします。狭間にしか存在しない奇妙な人っているんですよ。それが昭和になって、整理整頓、淘汰、濾過されていったと思うんです。(中略)

“狭間にしか存在しない奇妙な人”といえば、新感線もそういうイメージです。演劇界の狭間、狭間に、ある日、一筋の亀裂が入って、亀裂の向こうから指が見えて、腕が見えて、ぎょろりと睨む眼が見えて、メリメリ・めきめきと亀裂を拡げて、湧き出してきた妖怪みたいな人たちだと思っているので。以上、抜粋。

M県T市にある小さな港町を舞台に探偵のアケチコ五郎と新田一耕助が活躍するストーリー。炭鉱夫組合・堀田鉱業の炭鉱夫が掘った石炭が一番の資源で、蒸気機関車が走り、蒸気自転車が走る。黒ダイヤ歌劇団という人気少女歌劇団が人々を癒す一方で、そのトップスターの座を巡り、T市の出雲坂団八やスチームアイロン王のアンダルシアン・クーガーが暗躍する…。

戦慄、猥雑、変態。欲望にまみれたこの町の騒動を、パンクなメロディに乗った摩訶不思議な歌詞で歌いあげた数々のミュージカルナンバーに酔いしれた。