一之輔・天どん ふたりがかりの会 春風亭一之輔「三百年目」、そして田辺いちか いざ真打へ!「鉄砲のお熊」

「一之輔・天どん ふたりがかりの会」祝!芸歴30年&25年 記念高座をプロデュースしあいましょうSPに行きました。
オープニングトーク/「天どんさん一之輔さん」三遊亭天どん/「夢一夜」春風亭一之輔/中入り/「三百年目」春風亭一之輔/「人情噺からぬけ」三遊亭天どん
天どん師匠が一之輔師匠に出した課題は、コンプライアンスアウトの初代円丈作品「夢一夜」を演ること、そして一之輔の好感度を下げる「一之輔出世物語」を創作すること。一之輔師匠が天どん師匠に出した課題は「前座噺からぬけ」「感謝をこめる」「人情噺にする」「30人出す」「アナゴが巨大化、ハリウッド版ゴジラ」、「世相を斬る」「からぬけの唄」「輪唱する」「参加型」「ド下ネタ」「シェーン、カムバック」「グリコ少年、駆け出す」。
一之輔師匠の「三百年目」が面白かった。第312回謝楽祭の特別ゲストとして、コールドスリープ(冷凍保存)されていた「伝説の天才落語家一之輔」が300年の眠りから目を覚まして登場し、司会者に「芸の神髄」をインタビューされるという設定がとても良い。
東京かわら版からの出典の「円朝の孫」とか、「軍歌を歌う噺家が師匠」とか、「三歳で入門した」とか、明らかに間違った情報が否定するのは序の口。師匠一朝の許での前座修行は「厳しい」のイメージとは対極にあったとか、同期で仲良く勉強会を開いて精進するなんて甘っちょろいとか、段々本音が出てきてヒートアップする。
そして、抜擢真打の話。「久々に見たホンモノ」とか言って推薦した人に対する憤懣やるかたない思いの丈を述べるところは迫力さえ感じた。準備期間が半年しかなかった、パーティーの日取り候補が平日夜のたった一日、口上書きは散々待たせた挙句に書いてくれなかった、寄席の披露目も10日間でたった2日しか出てくれない、しかも鈴本大初日の出演は「伏せておいてくれ」。どうなっているんだ!おい!
本当に大変だったんだね、と同情するとともに、それを「好感度を下げる出世物語」として落語という笑いに変換する春風亭一之輔という才能に感服した。
「田辺いちか いざ真打へ!」に行きました。「出世浄瑠璃」「腰元彫名人昆寛」「鉄砲のお熊」の三席。前講は神田ようかんさんで「三家三勇士 星野勘左衛門再仕官」だった。
「鉄砲のお熊」は三遊亭白鳥師匠作品の講談化。講談になることで、より説得力が増すのはいちかさんの実力ゆえだろう。時次郎だった歌舞伎役者の中村夢之丞とおみつだった女相撲で大関を張る鉄炮のお熊の再会がドラマチックに映った。ガキ大将・長吉だった今は悪党のマムシの権蔵を倒したお熊(おみつ)に、助けられた夢之丞(時次郎)が「ずっと好きだった」と告白する場面。
時次郎はもう、おみつなしでは生きていけない、女房になってくれ、役者をやめても構わない、血筋のない役者なんて馬鹿馬鹿しくてやっていられないと言う。すると、おみつは時次郎の横っ面を叩いて、「馬鹿野郎!」と叫ぶ。お前は幼い時から寒い冬でも浜辺で踊りの稽古をして、役者になって舞台に立ちたいと頑張ってきたんじゃないのか。その姿を見て、私も稽古に励み、大関になった。私は女相撲で横綱になるんだ。お前みたいな半端な男にはなびかない。
時次郎はハッとする。「私は間違っていた。目が覚めた。これからも舞台一筋に精進する」と誓う。そして、おみつが横綱になっても、その土俵入りは見られないだろうから、ここで土俵入りの晴れ姿を見せてくれと願う。感動のクライマックスだ。そして、時次郎の口上の後に見せる鉄炮のお熊の横綱土俵入り…。白鳥作品が素敵な人情噺に昇華した。


