【大相撲春場所】霧島が14場所ぶり3回目の優勝、大関復帰が濃厚に

大相撲春場所は関脇・霧島が12勝3敗で、令和5年九州場所以来14場所ぶり3回目の優勝を決めた。と同時に、令和6年名古屋場所に陥落した大関の地位に来場所復帰できることが濃厚となった。
辛辣な書き方をすれば、拍子抜けの場所であった。十四日目に三敗で追っていた横綱の豊昇龍と平幕の琴勝峰が相次いで敗れ、一敗だった霧島も安青錦に苦杯を舐めながらも優勝が決まった。千秋楽も霧島は琴櫻に敗れて連敗。優勝はしたものの、有終の美を飾ることができなかったのは残念だ。
とはいえ、序盤から中盤にかけての安定感のある相撲は以前の「強い大関霧島」を彷彿させる内容だった。左四つから前に寄る、もしくは投げを打つ、土俵際に押し込まれても足腰の良さで逆転する。首などの故障が癒えて、稽古を十分に積んできた賜物だ。先々場所が前頭二枚目で11勝、先場所が関脇で11勝、そして今場所が12勝、三場所で34勝を挙げ大関昇進の目安をクリアした。数字だけでなく、この相撲内容ならさらに上の番付を狙える期待がある大関復帰だと思う。
「拍子抜け」の理由は他にもある。大関・安青錦が7勝8敗とまさかの負け越しに終わったことだ。先々場所、先場所と連続優勝を決め、「超光速綱獲りか」と場所前に騒ぎ過ぎた。新入幕から毎場所11勝以上の星を挙げ、初土俵から負け越しなしできた。安青錦も人の子ということか。プレッシャーに押し潰されたという見方もあるだろうが、低い姿勢でぶれずに前へ攻めたり、無双を切ったり、投げを打ったりする相撲を対戦相手が研究してきたということもあると思う。前傾姿勢を起こされたり、突き落とされたりする相撲が散見された。相撲はそう簡単なものではないのだ。安青錦にとっては良い勉強になったのではないか。来場所はカド番だが、また稽古を積んで強い大関として戻って来るに違いないと確信している。
番付では「一番強い」はずの横綱が場所をリードできなかったことも「拍子抜け」の要因の一つだ。大の里は初日から三連敗して途中休場してしまった。左肩の負傷が完治していないようで、療養に励んで復活を望みたい。豊昇龍も藤ノ川、大栄翔と金星を二つ配給して優勝争いでは後手に回ってしまった。横綱に昇進して7場所経つが一度も賜杯を手にしていない。千秋楽にこれまで5戦全敗(優勝決定戦の1敗含む)だった苦手の安青錦に勝ったという好材料もある。是非、綱の重みを感じさせる土俵を来場所には見せてほしい。
前頭五枚目の琴勝峰が霧島と最後まで優勝争いを演じ、11勝を挙げて敢闘賞を受賞して土俵を盛り上げた。去年名古屋場所で優勝した実力のある力士だ。来場所に新三役昇進も見えた。右四つにこだわらずに前へ出る相撲を心がければ、大関候補に名前を連ねることになるだろう。
特筆すべきは技能賞を獲得した藤ノ川だ。小さな体でキビキビした相撲は見ているだけで気持ちが良い。大の里、豊昇龍と二横綱から連続金星を挙げた相撲は素晴らしい。小よく大を制す、動きの速さと繰り出す多彩な技で観客を魅了し、まさに「令和の牛若丸」の名に相応しい。惜しいかな、軽量ゆえに相手に一気に攻め込まれてしまう相撲もあり、千秋楽にようやく勝ち越しての技能賞だったが、稽古の貯金がモノを言った形だ。三役も目の前だ。来場所以降も土俵を沸かしてほしい。
大関の琴櫻が去年初場所以降久しぶりの二桁勝利を挙げた。終盤戦で豊昇龍、霧島に勝った相撲は一昨年九州場所で優勝をしたときの実力が垣間見えた。ついに、眠れる獅子が目を覚ますか。熱海富士が新小結で9勝、千秋楽に敗れて敢闘賞は逃したが、先場所は安青錦と優勝決定戦を戦った実力の持ち主だ。幕内最重量のパワーが自信のある取り口に反映されてきている。近い将来大関を狙えるだろう。
豪ノ山はご当所場所とあって豪快な突進相撲で前半戦まで優勝争いに加わっていたが、後半上位と当てられて失速。10勝に終わったが、「ブルドーザー」と渾名される土俵を今後も見せてほしい。藤青雲が新入幕で10勝を挙げ、敢闘賞。来場所に番付を上げて、どれだけ活躍できるか。こちらも期待したい。
十両は出羽ノ龍が優勝決定戦で若ノ勝を下して優勝。若ノ勝は先場所に続く連続優勝は逃したが、来場所の新入幕は確実だ。隆の勝と二人の旧常盤山部屋勢を応援したい。幕下四枚目の炎鵬が5勝2敗で、どうやら来場所に関取に復帰できそうだ。令和5年夏場所に脊髄損傷し、序の口まで陥落したが、ようやくここまで這い上がってきた。嬉しい。また、伊勢ケ浜部屋の旭富士が先場所の序の口優勝に続き、序二段優勝した。元横綱の名前をもらったモンゴル出身力士は優勝決定戦でも格の違いを見せていた。今後どれだけスピード出世できるかも楽しみである。

