雷門所縁のはなし 雷門音助「七段目」、そして落語の花道 立川らく兵「崇徳院」「よかちょろ」

「雷門所縁のはなし六席~音助、真打へのらくご道」最終回に行きました。雷門音助さんは「七段目」と「棒鱈」、ゲストは雷門小助六師匠が「虱茶屋」、春雨や晴太さんが「館林」。開口一番は桂しゅう治さんで「犬の目」だった。お囃子に木本恵子師匠を迎え、「七段目」も「虱茶屋」も鳴り物入りで演じられ、とても良かった。小助六師匠は終えて、片足かっぽれを踊った。

「七段目」。音助さん自身もよく歌舞伎座の芝居を観に行くそうで、それがきちんと顕われた優れた高座。マクラで女形による渡り台詞を真似してみたり、若旦那の伊之助が番頭に「はひふへほ」の笑い方の違いを講釈したり、歌舞伎通を思わせる。

大旦那の小言を若旦那が芝居台詞で受け答えするところも、二階に上がってから忠臣蔵三段目のおかる勘平道行を思い出すところも、大旦那の命を受けて定吉が若旦那を諫めに行って音曲付きで芝居台詞の応酬をするところも、他の噺家さんでは出来ない素晴らしい演出で見応えがあった。

勿論、祇園一力茶屋の場のおかると平右衛門のやりとりも優れている。その文残らず読んだその後で、互いに見交わす顔と顔、じゃら、じゃら、じゃらつき出して身請けの相談…。妹の長襦袢を着て姐さん被りをした定吉と、丸腰では様にならないと刀を腰に差した若旦那の芝居ごっこが目の前に見えるようであった。

「落語の花道~立川らく兵独演会」に行きました。「崇徳院」「湯屋番」「よかちょろ」の三席。

「崇徳院」。息子と兄弟同様に育った熊五郎だったら、胸の内を話すかもと大旦那は考えたが、番頭が「熊さんは気は優しいが、そそっかしい」と懸念したことが噺の前提にあるのが良い。案の定、若旦那が定吉を連れて上野の清水様をお詣りしたときに出会ったお嬢様に一目惚れしたことを告白するが、あそこの茶店の羊羹は小豆の香りが豊潤で、塩が効いていて美味い等、勇気を振り絞って恋煩いを打ち明けている若旦那の腰を折るのが可笑しい。

お嬢様が茶袱紗を落とし、それを若旦那が拾って渡してあげたとき、お嬢様は懐から短冊を出して、崇徳院様の上の句を書いて渡したが…。短冊に「消費税減税」と書きましたか?とか、「崇徳院様の上の句」を「すっとこどっこいの髪の毛」とか、いちいち素っ頓狂な熊五郎がこの噺を愉しくしてくれた。

「よかちょろ」は「山崎屋」の序として演じていたのが良かった。与田様からお掛けの300円を預かった若旦那の孝太郎だが、すっかり使い切ってしまい、親父に「髭剃りが五円、よかちょろが四十五円と願いましょう」。巷で流行っている「よかちょろ」なるものを仕入れ、店を儲けさせようと言ったものの、訳の分からない唄を歌い、「よかちょろ、ぱっぱ!」とはぐらかすいい加減さは本当に性質の悪い道楽息子である。

その上で、番頭に帳面を誤魔化して200円都合しろと迫り、番頭は「横山町三丁目鼈甲問屋山崎屋の番頭久兵衛は石橋の上で転ぶと橋が痛いというくらい堅いんだ」と凄むが…。久兵衛が隣の小伝馬町駕籠屋新道に二十七、八のいい女を囲っているという弱みをしっかりと握っていて、このことを「お父っつぁんに告げ口してもいいのかい?」と強請るところなど、道楽息子を超えて悪党顔負けの手口。番頭は若旦那が惚れ合っているという花魁を身請けするという一計を案じる「山崎屋」へと続く…。愉しい高座だった。