桃花・二葉東西二人会 桂二葉「崇徳院」、そして立川笑王丸の道をひらく「宿屋の仇討」

桃花・二葉東西二人会に行きました。蝶花楼桃花師匠が「お菊の皿」と「やかん」、桂二葉さんが「崇徳院」と「味噌豆」、開口一番は柳家しろ八さんで「たけのこ」だった。

二葉さんの「崇徳院」が素晴らしかった。まず、若旦那が恋煩いになることに説得力がある。20日前に定吉を連れて高津神社にお詣りに行ったときに寄った茶店で綺麗なお嬢様と出会った。お嬢様が茶袱紗を落としたのを拾ってあげて、手渡ししたら、お嬢様は料紙をお付きの者に用意させ、「瀬をはやみ岩にせかるる瀧川の」と崇徳院様の歌の上の句を書いて渡した。下の句は書いていない。ここがポイントだ。つまり、お嬢様は「またお目にかかりたい」というメッセージを残したのだ。

その話を聞いた熊五郎にアホが愉しい。「水の垂れる?ビチョビチョの女子か」とか、崇徳院様の歌を聞いて「油虫のまじないか」とか、「瀬をはやみ~」を覚えられずに「石川や浜の真砂は尽きぬとも」とか、崇徳院を「人喰い」とか。でも、「金持ちの息子はしょうもない」と言いながら、「そのお嬢様を嫁に貰ったら、全快間違いない」と大旦那に報告して、「死んだらあかん」と親切な言葉を掛ける優しさが滲んでいるのが良い。

大旦那から、借金を棒引きした上に、礼金300円、それに五軒の借家を蔵付きで貰えると聞いて、「欲と二人連れ」で大坂の町をぐるぐる、ぐるぐる、お嬢様を探す熊五郎。だが、二日間も黙って探していたと聞いた女房が呆れて「スカタン親父!」と罵り、道の真ん中で崇徳院の歌を歌え、そして湯屋と床屋を廻れと尻を叩かれて実行するところ、熊五郎が可愛い。

床屋に入って、煙草に火をつけて、一服したところで、突然「瀬をはやみ~」と声を張り上げたら、そりゃあ皆驚くわ。床屋38軒、湯屋26軒。熊五郎は「出汁ガラ」のようという表現が面白い。そして、床屋に飛び込んできた棟梁が「お嬢様が茶会の帰りに高津神社で出会った若旦那に一目惚れして恋煩い。その若旦那を崇徳院様の歌を手掛かりに探している。わしは紀州担当や。源助なんか香港に行った」(笑)。

これを耳にした熊五郎が「艱難辛苦、いかばかりか」と仇に巡り会ったかのような勢いで棟梁に飛び掛かる気持ち、よくわかる。50分の大熱演に拍手喝采だった。

「立川笑王丸の道をひらく」に行きました。「芝居の喧嘩」と「宿屋の仇討」の二席。ゲストは立川かしめさんで「寿限無」だった。

「宿屋の仇討」、随所に新機軸が散りばめられて、良かった。神奈川宿の武蔵屋に泊まった江戸っ子三人組のどんちゃん騒ぎ。良い酒に良い肴、それに酌婦じゃなくて腕っこきの芸者を生け捕って来いと伊八に頼んだが…。芸者四人に混じって、三味線も持たずにナリも汚いが「芸者でございます」という五人目の“芸者”がユニークだ。四文銭を舌の上に載せて、一旦は呑み込み、一呼吸置いて外に吐き出す。これが芸だと言う。三人組も感心し、今度は一文銭と四文銭を同時に呑み込んで、四文銭だけ吐き出す。すごい。確かにこれは芸だ、だから芸者だと認めて、三味線と太鼓と嗚咽でどんちゃん騒ぎという…。面白い。伊八が注意に行ったときには、286文を呑み込んでいた!(笑)

隣に泊まっている侍のせいで、騒げなくなった三人組は酒宴をお開きにして、布団を敷いてもらい、江戸の相撲の話に興じるが…。源兵衛が贔屓の元僧侶の捨衣は良いとして、太助の贔屓はアメリカ海軍出身の垣乃山でライフル銃が得意技というのがぶっとんでいる。金太が行司となり、源兵衛と太助がノコッタ、ノコッタと勝負となるが、捨衣の突き押しに対し、垣乃山は銃弾を連射するという!隣の侍が眠れないと怒り出すのも当たり前だよね。

そして、源兵衛が五年前に「人を二人殺して二百両盗んで未だに知られていない」色恋の話。「源ちゃんは大悪人、大悪人は源兵衛!源ちゃんは色事師、色事師は源兵衛!」と大騒ぎしていると、何と!奥方と弟大助を殺された川越藩150石馬廻り役の石坂段右衛門は隣の部屋に泊まっている侍だという…。「ようやく仇に巡り会えた。艱難辛苦、いかばかりか。明朝、宿外れで出会い仇だ!」。源兵衛は「これは両国の掛け茶屋で隣に座った人相の良くない男が喋っていた話」といまさら弁解しても、もう遅い。

翌日の自称「石坂段右衛門」の言動に笑王丸さんが独自の工夫を加えたのが良かった。伊八に「わしには妻も弟もいない。嘘だ」と耳打ちした後、もう少し遊べそうだと江戸っ子三人を外に連れ出し、宿外れまで行く。「あっしのことじゃないんです!」と怯える源兵衛に対し、男は「二つ面白いことを教えてやろう」と言う。

一つは「わしには妻も弟もいないし、二百両盗まれたこともない。座興だ。笑え!」。そしてもう一つは「源兵衛、お主に会ったのは初めてじゃない。顔を合わせたことがある。わしは侍の格好をしているが、侍ではない。わしの顔に見覚えはないか?両国の掛け茶屋の…茶屋のおやじじゃ!」。何とも洒落ているサゲであった。