【ザ・プロファイラー】忌野清志郎 キング・オブ・ロックの憂鬱

NHK―BSで「ザ・プロファイラー 忌野清志郎 キング・オブ・ロックの憂鬱」を観ました。
忌野清志郎、本名栗原清志は1951年に東京中野で生まれた。三歳のときに母と死別、伯母夫婦が養子として引き取った。小学校時代の渾名は「画伯」、絵が得意で、苦手な科目が音楽だったという。中学時代、授業をさぼって内ポケットに入れていたトランジスタ・ラジオから流れてくる外国のフォークやロックに耳を傾けた。それが後の代表曲「トランジスタ・ラジオ」創作に繋がる。
時代はベトナム戦争。カルチャーショックを受け、音楽を始める。1966年、15歳のときにザ・クローバーを結成した。自分の声が嫌いだった。でも、ジョン・レノン、ジミヘン、ニール・ヤングらも皆そうだと知った。1968年にRCサクセションを結成。高校3年生のときにレコード会社のオーディションに合格。しかし、両親は反対した。当時の新聞の身の上相談に「ギターにこる子ども」という見出しで、清志少年の将来を心配する母親の相談記事が掲載されている。だが、担任の美術教師の小林先生は両親に「やりたいようにやらせてみたらどうですか。一生のうちにやりたいもが見つかれば、死に物狂いでやるものです」とアドバイスしたという。
出席日数の足りない美術の単位を、小林先生は絵を描いて提出することで与えることにした。そのときに提出した絵が「顔のない自画像」。衝撃的である。そこには人生に対する迷い、自分の将来を決めたくないという想いがこめられている。1970年、18歳でレコードデビューしたときの曲は「ぼくの好きな先生」。モデルは小林先生だった。
だが、売れなかった。月給3万円は小学校教諭の初任給よりも安い。すさんでいた。高校時代の同級生、三浦友和は卒業後に心配して様子を見に行ったそうだ。自分に言い聞かせるように「わかってもらえるさ」という歌を作った。ミュージシャンでもなく、アーティストでもなく、自分はバンドマンなんだという想いがあった。
清志郎は答えを出す。フォークギターからエレキギターへ。フォークからロックへ。RCサクセションのメンバーにチャボこと仲井戸麗市を招いた。私生活では交際していた彼女の父親から猛反対され、「自分の才能を商品化」しなければいけないと考えた。長髪をやめ、トレードマークとなるツンツンした髪型にし、パープルのアイシャドウ、真っ赤な口紅という派手な化粧。そして、ソウルミュージックの大御所、オーティス・レディングに感化され、観客を巻き込むパフォーマンスを意識した。それが、「愛し合ってるかい!?」という呼びかけだ。1980年、28歳のときに最大のヒットとなる「雨あがりの夜空に」をリリース。世間は彼をキング・オブ・ロックと呼ぶようになる。
80年代、日本中がRCサクセションに熱狂。1982年には坂本龍一とコンビを組み、「い・け・な・い ルージュマジック」をリリースしてオリコン1位を獲得。だが、体調不良に襲われる。長年の不摂生がたたり、医師からは「あなたの肝臓は治らない」と言われ、酒も煙草もやめた。そんな中、義母が脳梗塞で倒れる。
清志郎は海外の名曲に独自に歌詞をつけて歌うアルバム「COVERS」を製作。「ラブ・ミー・テンダー」。「何言ってんだ、ふざけんじゃねえ、核などいらねえ」といった過激な歌詞で、バンド内からも反対の声があがったが強行すると、レコード会社である東芝EMIが発売中止を発表。「素晴らしすぎて発売出来ません」という新聞広告が目をひいた。折しも、2年前にチェルノブイリ原発事故が発生。反核、反戦を謳った楽曲がいかがなものかという声があがったのだ。
結局、アルバム「COVERS」は2か月後に別のレコード会社から発売された。時を同じくして、義母、義父が相次いで他界。そのときに出てきた実母が遺した形見から、実父との往復書簡が見つかり、実父はレイテ島で戦死したことを改めて胸に刻んだ清志郎。反戦への思いをさらに強くして、1989年、「デイ・ドリーム・ビリーバー」を発表。もう今は彼女はどこにもいない。実母への思いをこう歌って、人々の胸を震わせた。
1990年代になり、RCサクセションの音楽も曲がり角となり、メンバーの中にも亀裂が生じた。1991年、無期限活動停止を発表。2006年7月、清志郎は自らが喉頭癌であることを公表し、長期入院生活に入った。だが、声帯を摘出することを拒み、抗がん剤治療を続ける。
そして、2008年2月。日本武道館で「完全復活祭」と題した、コンサートを開いた。RCサクセションのメンバーも集い、1万3千人の聴衆は熱狂した。清志郎はそこでも「愛し合ってるかい!?」と観客に呼びかけた。それは世界平和を願っての叫びだった。
7月に癌の転移が見つかる。2009年5月2日、逝去。享年五十八。最期まで「キング・オブ・ロック」の名に恥じない生涯ではなかったろうか。

