新宿末廣亭一月下席 玉川太福主任興行「新桃太郎」

新宿末廣亭一月下席夜の部九日目に行きました。今席は浪曲の玉川太福先生が主任を勤める興行で、去年に続き二度目の主任興行だ。昨日までのネタは①不破数右衛門の芝居見物②清水次郎長伝 石松代参③こだま④うーる⑤清水次郎長伝 石松と見受山鎌太郎⑥男はつらいよ 寅次郎頑張れ!⑦地べたの二人 鼻⑧サカナ手本忠臣蔵 オオイカ東下り。きょうは「新桃太郎」、初めて聴くネタだったので嬉しかった。

「魚根問」春風亭昇ちく/「狼男」春風亭昇りん/民謡漫才 コンパス/「時そば」柳亭明楽/「東の旅 発端」笑福亭べ瓶/奇術 小泉ポロン/「MOMO」桂三四郎/「忠治髪結床」広沢菊春・広沢美舟/コント ザ・ニュースペーパー/「宮戸川」柳家蝠丸/中入り/「猫まねき」昔昔亭A太郎/「赤ずきん」「日の丸太郎 武者修行の巻」坂本頼光/「僕の退職」春風亭昇々/「めめめ」瀧川鯉八/太神楽曲芸 鏡味小時・春本小助/「新桃太郎」玉川太福・伊丹明

太福先生の「新桃太郎」。マクラで玉置浩二さんが武道館で2000人の客席に向かって、マイクなしで歌う声量に圧倒されたと話していて、やはりエンタメの王道は音楽ではないか、と。そんな音楽性を意識した意欲的な創作であった。

「桃的な何か」の中から出てきた「赤ん坊的なもの」に、お爺さんとお婆さんは腰を抜かしてしまう。すると、その「赤ん坊的なもの」がトコトコと動き出し、ヨチヨチとお爺さんとお婆さんの腰を摩ると、腰が抜けたのが治ってしまった。低周波治療的な能力を持っているこの「赤ん坊的なもの」に名前を付ける。その名も「桃的な何かから生まれ太郎」!略して桃太郎だというのが可笑しい。

爺さんと婆さんは桃太郎を「桃や、桃や」と可愛がる。だが、桃太郎は自分の親が老けすぎていることに気づき、「僕の父と母はどこにいるのか」と問う。戸惑うお爺さん、お婆さん。部屋に飾ってあった命名のときの色紙を見つけ、もしかして僕は桃的な何かから生まれたのではないかと考えるようになった。でも、その「桃的な何か」が水に浮く素材で良かったと思う。メンタルの強い桃太郎である。

桃太郎は山の中で甘い香りのする葉っぱを見つけ、それを刻み、擂り潰し、団子を拵えた。すると、イヌ、サル、キジといった動物がこれを求め、与えると桃太郎の言うことを聞くようになる。意識が飛ばないギリギリの分量の団子を与え、家来をコントロールした。そして、鬼ヶ島に鬼退治に行くことを決意する。お爺さんとお婆さんは止めるが、「物語上の都合だ。物語の力を借りれば大丈夫」と言って、桃太郎は鬼ヶ島へ。

鬼ヶ島に到着し、茶屋に寄ると、旅人が「桃的な何か」を持っている。訊くと、川から流れて来た、道中には丁度良いと言う。桃太郎は運命的なものを感じ、鬼退治はイヌ、サル、キジに任せ、自分は川の上流に何かがあるはずだと向かう。歩いて、歩いて、ようやく目の前に広がったのは「桃的な何か」。ここが自分の生まれた場所なのか、あれは僕の家に違いないと思う。と同時に「親はなぜ僕のことを探さなかったのか」と熱いものが胸にこみあげてきた。「そんな親は親じゃない…」。

桃太郎はお爺さんとお婆さんのところに戻り、「これからはお父さん、お母さんと呼ばせてください」と頭を下げた。お爺さんお婆さんは「その気持ちをずっと忘れずにいておくれ」と願うのだった…。「桃太郎」の全く新しい解釈、改作に拍手喝采であった。