真山隼人ツキイチ独演会 探偵浪曲「青山殺人事件」全4話

真山隼人ツキイチ独演会に行きました。探偵浪曲「青山殺人事件」全4話を一挙口演するという、とても良い会だった。
第1話「梅山家の縁談」
梅山大尉は姪っ子の片山清子の縁談相手のことで友人の有村に相談する。梅山は20年前に亡くなった弟の片山勘一から「娘のことを頼む」と言われていて、片山家再興のために婿を迎えたいと考えていたのだ。すると、有村は自分のところの次男・孝夫はどうかと言う。今は陸軍少尉だが、見込みのある男だと。そのことを孝夫に打診すると、「最近、清子さんと親しくなって会っている」と言う。願ったり叶ったり。話が早い。
このことを清子に伝えると大層喜んだ。だが、これを立ち聞きしている人物がいた。梅山の後妻の都子だ。都子はてっきり「梅山家に婿が来る」と勘違いしてしまった。都子には豊子という連れ子がいた。それを差し置いて、清子に婿を取らせ、梅山家を継がそうとしていると勘ぐったのだ。都子は娘の豊子にそれを伝える。
読書をしている清子の部屋に豊子が入り、鉄瓶に煮え湯を清子の頭に浴びせてしまった。うっかりを装って、わざとやったのである。清子の顔は焼けただれ、医者に行ったが、「元には戻らない。失明は免れない」という診断だった。梅山は有村孝夫との縁談は破談だと事情を話しに有村を訪ねる。すると、有村は「何を言うんだ。顔や姿が何になる。見捨ててなるものか」と言う。これを聞いた孝夫も「その通りです。顔に惚れたんじゃない。目が見えぬなら、手となり足となる。それが男の道だ」と言う。
有村夫人の紹介したドイツ帰りの医師、前島先生の診てもらうと、清子の顔は半年で元通りになった。だが、「わしが生きていては清子のためにならない」と考えた梅山はピストルで自害しようとする。これを見つけた清子が止め、押し問答になっているところに、第三者によるピストルが発砲され、梅山が倒れる。
第2話「鬼刑事と般若の政」
10日後のことである。梅山屋敷大広間で、般若の政五郎と渾名されるコソ泥が「500円が高い?安いと思うがね」と笠松大造を強請っている。般若の政は12月13日に泥棒を働いて刑事に追われて青山墓地に逃げ込んだときに、笠松が梅山を撃った現場を目撃したのだという。
政が言うのには、梅山殺しの真犯人は梅山都子、豊子、それに豊子の恋人である笠松で、梅山家の240万円の財産目的だろうと迫る。梅山と清子が押し問答しているときに、ピストルの音がして、気を失った清子の持っていたピストルから弾を一つ抜き、警察に突き出した。笠松の発砲を清子の発砲とすり替えたことは俺が知っていると脅す。
政は梅山殺しは三人の共謀であり、それを知られたくなかったら、500円よこせと迫っているのだ。笠松は今度はピストルを般若の政に向ける。だが、驚かない。「犯人は清子じゃない」と警視庁の鬼刑事、井上鉄平がこの近辺を捜査していると言う。笠松は観念したが、「500円はやる。さらに刑事の井上も殺してくれたら、もう500円やる」と、ただでは転ばない。政はこの取引に乗った。
政は井上刑事を「事件の秘密を知っている」と誘き出し、突然斬り掛かった。油断していた井上は散々に斬られ、虫の息だ。その現場に夜間演習帰りの有村孝夫が通りかかった。孝夫は裁判で「真犯人は他にいる」と清子を擁護してくれた井上に偶然このような形で出会い、早速陸軍病院へ緊急搬送した。傷は20数か所あったが、幸い全て急所は外れていて、助かった。
その半年後。裁判所で清子が死刑を求刑されようとしていたとき、「お待ちください!」と名乗りを挙げる者がいた。それは一体、誰!?
第3話「神楽坂」
1年後。人力車が道に急に飛び出した老婆にぶつかりそうになる。俥に乗っていたのは裁判官の清水清三郎。老婆は当たり屋だったのだが、清水は我が家に来てもらい、それから病院に行きましょうと親切に対応する。清水が老婆の顔をよく見て、突然「川崎に住んでいたおふゆさんではないですか?」。
清水は今は妻になったみつ子と広島の呉服屋で働いていたが、恋に落ち、周囲が反対するので、駆け落ちをした。一文無しとなり、二人で身投げしようとしているのを止めてくれたのが、おふゆさんだった。いわば清水にとって、この老婆は命の恩人だ。
それだけではない。みつ子は妊娠をしていて、女の子を産み落とした。清水夫妻は娘をおふゆさんに預け、東京に出て五年間身を粉にして働いた。そして、娘を迎えに再び川崎を訪ねると、おふゆさんも娘もいなかった。
おふゆは懺悔する。向かいの旅館の宿泊客が娘を見初め、「養女にほしい」と言われ、10円で売ったのだという。そのときに渡された紙切れが守り袋に入っていると言って、取り出す。そこには「片山勘一養女、清子」とある。清水は思う。「神も仏もないものか…裁判長として死刑を求刑しようとしている女性が自分の娘とは、何の因果か。死刑が決まったら、私たち夫婦もあの世に逝って、三人ともに仲良く暮らそう」。
鬼刑事井上が裁判長に言う。「真犯人は清子じゃない。一年前に梅山屋敷の張り込みをしていたときに、般若の政という男から真相を聞いた。だが、政は行方知らずになってしまった。裁判を先延ばしにしてくれないか」。
そのとき、おふゆが「般若の政はわしの倅じゃ。先日、真人間になるため、北海道に行くと言っていた。今夜上野駅で10時の夜行列車に乗っていくと言っていた」。これを聞いた井上刑事は清水の俥に乗って、上野駅へ。プラットホームに着くと、列車の窓から顔を出している般若の政がいた!井上は「久しぶり!」と対面した。
第4話「大団円」
般若の政五郎は上野駅で井上刑事が追うのを逃がれた。そして、青山の梅山屋敷の笠松大造に会って事情を話す。「1000円貰って、北海道に行こうとしたが、悪いことはできない。命からがら逃げて来た。1000円の入った鞄もぶつけて放ったままだという。笠松は「また明日の夜行に乗って北海道に行けばいい。1000円は新たに渡す」と言って、今晩は休めと酒を勧めた。
ところが、この酒に毒が盛ってあった。「やりやがったな!」。政五郎はそこにあった文机に向かい、必死に筆を走らせる。「井上鉄平刑事様。梅山殺人の真犯人は片山清子ではありません。笠松大造、梅山都子、豊子の三人です。清子さんを早く獄舎から助けてあげてください」。そう書くと、政はあの世の人となった。
笠松ら三人は政五郎の死を見届けると、血ヘドを綺麗に洗って、何事もなかったように、畳の下に隠した。政を追いかけていた井上は一旦は見失ったが、雪の上の一人分の足跡を見つけ、辿っていくと…そこは梅山屋敷であった。そして、畳をあげると、そこには般若の政の死体が…。「政!誰にやられた!?」。政の右手の中に握られた紙切れには、梅山大尉殺人の一部始終が書かれていた。「よく書いてくれた!清子さんを無罪にして、お前を弔ってやる!」。
そして、裁判。片山清子が死刑になるところ、この般若の政の文面で事件は覆り、無罪。そして、笠松、都子、豊子が真犯人になった…。
明治の香りがする「探偵浪曲」、面白かった。


