よせによせ

NHK総合テレビで「よせによせ」を観ました。

木馬亭の楽屋で柳亭小痴楽師匠と桂二葉さん、春風亭一花さんが茶飲み話をしながら、演芸や大喜利、それに貴重なアーカイブス映像を見せてくれる番組。おそらく、開発番組だろう。面白かったので、定時番組化を目指してほしいと思った。

木馬亭の高座を使った演芸では、お笑いユニットの今夜も星が綺麗の無理やり強引に野菜をすべて回文にするネタからスタート。ちくわ笛奏者の住宅正人さんがニンジンに穴を空けた笛で♬いっぽんでもニンジンを演奏し、それに合わせて紙切りの林家楽一師匠が「ニンジンとイチゴ」を切るという名人芸を見せた。楽一師匠の紙切り、もう一つくらい観たかったなあ。

桂二葉さんが「上燗屋」を披露。「あつなし、ぬるなし、ころかげん」を看板とする居酒屋に入った酔っ払いの可愛さがとても良い。熱すぎる酒をフーフー吹きながら飲むところ、皿からこぼれ落ちた煮豆を頬張るところ、鰯のから蒸しのおからだけをよって食べるところ…。機嫌良く、それこそ“加減良く”酔った男の人物造型の上手さが光っている。

1988年放送の「東西落語特選」から古今亭志ん朝師匠の「唐茄子屋政談」の一部、若旦那が唐茄子を売る売り声の稽古をしているところが紹介されたが、ここだけでも名人芸だ。50歳、一番脂の乗っている高座。その高座の前に、加賀美幸子アナウンサーが「唐茄子とはかぼちゃのこと。遠くカンボジアから大分に渡ったのがはじまりで、かぼちゃという名がついたと言われる」と講釈をつけていたのも良かった。このとき、48歳。永六輔さんと一緒に司会をしていた「ばらえてぃ テレビファソラシド」の放送が1982年に終わっているが、美しい日本語のナレーションは語り草。懐かしかった。

もう一つ、志ん朝師匠の映像が紹介された。1975年放送のドキュメンタリー「文化展望―寄席―」で、大阪角座で「強情灸」を演じている高座と楽屋で当時上方落語協会会長だった笑福亭松鶴師匠と談笑しているところが映し出された。実に貴重なアーカイブ映像。最近、NHKは過去の番組を4Kにリマスターすることに力を入れているが、こういう取り組みはどんどんやってほしい。

最後の大喜利「勝手に吹き替え劇場」も面白かった。西部劇「オナンザ―殺し屋兄弟―」の映像の一部を取り出し、登場人物の表情や動きに合わせて、面白い「吹き替え」をするという趣向。事前に収録した3人、柳亭信楽さんの「お客様対応」のセンスの良さ、柳家わさび師匠の「狸」の落語っぽさ、三遊亭ごはんつぶさんの「なまってるし」のシュール、それぞれに個性が光っていて良かった。そして、一花さんもプロデューサーからリクエストがあってその場でアテレコ。小噺を題材にして、これもなかなか優れていた。

演芸の魅力をユニークな切り口で紹介する、新しいエンターテインメント番組。第二弾、第三弾と期待したいと思う。