情熱大陸 落語家・桂二葉

TBSテレビで「情熱大陸 落語家・桂二葉」を観ました。
桂二葉さんがなぜこれほどまでに人気が出てきたのか。そして、二葉さん自身がどのように落語と向き合っているのか。もっと突っ込んで取材してほしかったというのが正直な感想である。
その上で、「なるほど」と思った点をいくつか書きたい。
売り物にしているアホについて。「池田の猪買い」の喜六が猟師の横で色んなことを言って邪魔してしまう場面。「くしゃみ講釈」で唐辛子を炭火にかけて一生懸命に講釈師にむけて仰いでいる場面。これぞ、二葉落語の魅力!と思わせる映像を紹介しているのが良かった。特に表情が素晴らしい。
小佐田定雄さんが「頭の上に青空が広がっているアホ。爽やかで、応援したくなるアホ」と表現していた。これはそのまま二葉さんそのものに通じるのではないか。高座を見て「応援したくなる」、そういうフラを持っている。
24歳で桂米二師匠に入門したが、師匠いわく「めちゃめちゃ物覚えが悪い子だった。でも、覚えるとめちゃめちゃ面白い」。インタビューで持ちネタの数を訊かれ、「言いたくないほど、少ない」と答えていたが、それは逆に覚えたネタを徹底的に磨いて自分の手中に収めているということなのだと思った。
二葉さんは子どもの頃からアホに憧れていたという。男の子がアホをしているのを見て、「女の子はやりにくい、羨ましい」と思ったそうだ。そんなとき、母親が「世の中には色んな見方があっていい」と教えてくれた。「男のくせに泣いている」と言ったら、「男でも泣くし、女でも泣く」と返され、考えが改まったというのは、現在の二葉落語を形成するのに大きな影響を与えているのではないか。
もう一つ、すごいなと思ったこと。「落語を多くの人に知ってもらいたい」と、苦手なバラエティー番組「ぽかぽか」のレギュラー出演の仕事を引き受けた。だが、2時間で3回しか言葉を発することのできない仕事に疑問を持ったという。「人をのけてまで喋られない。落語は自分でボケて、自分でツッコむ。楽しめない。自分に嘘はつけない。あんなので、お金を貰ったらアカン」。そう考えて、去年12月で自らレギュラーを降板したという。
今年1月から大阪の天満天神繫昌亭で毎月最終金曜日に深夜寄席を二葉プロデュースでスタートさせた。夜21:45分開演。これなら、普段落語に接することの少ない若いサラリーマンでも来てくれるのではないか。映像では桂源太、桂九ノ一、笑福亭智丸といった後輩が出演しているところが紹介された。後輩の背中を押す二葉さん、逞しい。
トリで二葉さんが「しじみ売り」を演じていた。アホ以外の人情噺にも力を入れはじめている。ラストコメントで、「自問自答しながら、落語と自分の明日を見つめている」とあったが、どんどん可能性を広げていく落語家・桂二葉に僕は惜しみない拍手を贈り、応援していきたいと思うのであった。