浅草演芸ホール九月上席 林家つる子「スライダー課長」
浅草演芸ホール九月上席九日目夜の部に行きました。今席は林家つる子師匠が主任。初日からのネタは①ねずみ②お菊の皿③しじみ売り④井戸の茶碗⑤ミス・ベター⑥中村仲蔵⑦紺屋高尾⑧片棒。そしてきょうは新作「スライダー課長」、演じ終わって林家あずみさんの演奏で「なすとかぼちゃ」を踊った。
「味噌豆」林家たたみ/「たけのこ」林家たま平/「たらちね」春風亭三朝/ジャグリング ストレート松浦/「壺算」桂三木助/漫談 林家しん平/漫才 すず風にゃん子・金魚/「のめる」古今亭志ん輔/「松山鏡」林家たこ蔵/太神楽 翁家勝丸/「粗忽の釘」五街道雲助/中入り/「あくび指南」林家はな平/奇術 ダーク広和/「猫と金魚」古今亭文菊/「ざるや」林家三平/三味線漫談 林家あずみ/「スライダー課長」&なすとかぼちゃ 林家つる子
つる子師匠の「スライダー課長」は、大学時代の落研仲間であるどくさいスイッチ企画さんの作品。野球の経験も知識もない上司が、小学校3年生になる息子が少年野球でピッチャーに抜擢されたので、小中高と野球をやってきた部下の田中君に野球について教えてもらうという噺だ。
課長が野球について、全く知識がないというのが面白い。変化球とはボールが何に変化するのかとか。ライトとは専属の照明係がいるのかとか。中日とは5戦目のこと?寄席ではない!とか。満塁策って、どんな選手?「まん・るいさく」じゃない!とか。ホームスチールとはどのような金属で出来ているのかとか…。
そんな課長を相手にして、2週間特訓した結果、普通にキャッチボールができるようになった。それも課長はアンダースローでスライダーまで投げられるように!そのおかげで、息子ともキャッチボールでコミュニケーションできるようになったと喜ぶ。
田中君が海外支社派遣が決まったという。それも支店長待遇で。その抜擢の理由は「年上の慣れない言葉の通じない人たちに一からモノを教えることができる」、その能力が高く買われたのだった。単純にギャグを並べるだけでなく、噺に合理的なストーリー性を持たせているところが、この新作落語の素晴らしさだと思う。
課長と田中君がキャッチボールをしている場面、ボールがグラブにおさまるときの音を帯の後ろを叩くことで表現しているのは志ん輔師匠のアドバイスだという。そのテクニックをつる子師匠が取り入れたことで、この噺は数段良くなった。つる子落語は古典だけでなく新作でも進化し続けている。