東西ラクフェス2024 千秋楽
「東西ラクフェス2024~東西らくご博覧会」千秋楽第二部に行きました。前説は桂九ノ一さんと昔昔亭昇さんのお二人、元気があってオープニングから盛り上がった。開口一番は三遊亭げん馬さんで「弥次郎」だった。
立川吉笑「床女坊」
船頭の“秘伝中の秘伝”「場合分け」が冴えわたる。船頭を含め定員2名の舟で向こう岸まで、元床屋と坊さんとお嬢さんの3人を渡すには?ただし、元床屋は髪の長い人を見ると丸刈りにする癖があり、元床屋とお嬢さんが二人きりになるのはNG。また、坊さんは女性と二人きりになると「好きだ」と告白する癖があり、坊さんとお嬢さんが二人きりになるのはNG。その条件の元、船頭は「場合分け」によって3人を向こう岸まで渡すシミュレーションが成功するが…。
坊さんはかなり太っていて舟に二人で乗るのは無理。ただし、自分で舟を漕ぐことができる。また、元床屋も1回だけなら自分で舟を漕ぐことができる。この条件の元でも、船頭は見事なシミュレーションをするが…。
一緒に旅をしているのが、3人以外にヤギとオオカミを連れていることが判る。オオカミは誰も見張っていないとヤギを噛み殺す。また、坊さんは誰も見ていないと、オオカミを殺してしまう。さあ、どうしよう?慌てることはない、秘伝の「場合分け」で何とかなると必死にシミュレーションする船頭が愉しい。論理的思考能力に長けた吉笑さんの魅力満載の高座を堪能した。
桂二葉「打飼盗人」
江戸落語の「置き泥」。「オラ!喧しいわい!何、さらしてんねん!」と泥棒が勢いよく家の中に入って来ても、「どちらさん?」と全く動じず、寧ろ「これ幸い」とばかりにたかる長屋の住人が愉しい。
家の中は暗がりで、電気を止められているからスイッチを入れても灯りは点かない。蝋燭で暮らしていると聞き、「マッチを出せ!」と泥棒は凄むが、柱に頭をゴン!とぶつけて、「目から火が出た」と笑われ、「オイ!コラ!二尺八寸、だてにはささん!」と脅すも、「二尺はないな。嘘つきは泥棒の始まりやで」とたしなめられる始末。
泥棒が煙草を吸うと、「三日吸うてない。一服、もらわれへんやろか?」と煙草をもらう住人。「美味いなあ。上等な煙草や。煙草入れも煙管も上等。この不景気に儲かるんやなあ」と感心され、泥棒先生たじたじ。訊くと住人は悪い友達と博奕して、スッカラカンになった、家の物は全部質に入れてしまって、メリヤスのシャツとパッチだけで過ごしているという。
泥棒が「博奕をするなんて人間のカスや!働いて真人間になれ」とたしなめるも、住人は大工で道具箱を10円で質に入れてしまったという。「この縁を大事にして、10円だけ何とかなりまへんでしょうか?真人間になりたい」とせがまれ、泥棒は「今度会うときは綺麗な身体で会おう」と10円を渡す好い人だ。
そこから、「へてな」(それから)を何遍も繰り返し、乗じる住人がすごい。半被や腹巻ほか着る物一式を質に入れていて、それが5円。「利子も…」で「いっぺんに言え!」と2円、さらに三日何も食べていない、家賃二ツ溜まっている、とどんどん巻き上げていく様はちょっと泥棒が可哀想になるくらい。「お前と所帯を持つのと違う!」と言いながら、財布が空になるまで渡してしまう泥棒のお人好しがとても可愛かった。
春風亭昇羊「夢の酒」
女房のお花にせがまれ、若旦那が夢の話をするが、その間ずっと悋気を起こしているお花が表情で表現されていて、上手い。
向島で突然の雨に降られ、小間物屋の店先で雨宿りしていたら、中から妙齢のご婦人が出てきて「大黒屋の若旦那じゃないですか!」。店先の品物が濡れないように中に入れる手伝いをしたら、その御礼にあがってくださいなと誘われる。ご婦人が耳元で「雨も止んで、若旦那も家に入って、外も中もあがりましたねえ」なんて洒落を色っぽく言われたら、ゾクッとしちゃうよね。
普段は奈良漬を食べただけで酔ってしまう若旦那が、ご婦人が勧め上手なのか、気が付いたらお銚子5本空けていたという…。それだけでもお花は悋気を起こしているのに、その後に頭が痛くなって離れの四畳半に床をのべてもらって横になっていたら、ご婦人が「若旦那の脇の方へ」と入ってきたと聞いたら、もう悋気大爆発だ。「それはいけません」と拒んでいると、ひとりでに帯が解けて、長襦袢一枚になって、ご婦人が「若旦那、堪忍してくださいね…」と言ったところで、お花に起こされたという…。
お花の言い分も少しは判る。「そういうふしだらな夢を見るのは、普段から脇に女を作りたいと考えているからでしょう!」。泣き叫ぶお花に、若旦那はどうしてよいか、困ってしまうよね。正直に話したのが良くなかったのか。
この喧嘩に気付いてやって来た大旦那に対し、お花が「若旦那が見た夢」を再現しようとするのだけれど、“向島の妙齢のご婦人”が上手にできず、「私には真似できない!」と言うのがとても可愛かった。