立川吉笑 真打トライアル VOL.5

「立川吉笑真打トライアルVOL.5」に行きました。トライアルの最後を飾るゲストは立川談春師匠だった。

「一人相撲」立川吉笑/「白井権八」立川談春/中入り/「堀の内」立川談笑/「床女坊」立川吉笑

立川吉笑さんの真打昇進が内定した。おめでとうございます!吉笑さんが「床女坊」を終えたところで、高座に談笑師匠が袖から現れ、第一声「真打と認めます」。「もう(トライアルの)1回目から言っていたけど、文句なしに真打です」と言った後、「でも、これ(トライアル)面白いから、来年もやらない?」という冗談も飛び出した。

まだ真打昇進の正式な日取りなどは決まっていないが、来年に真打昇進ということで、こはる改メ立川小春志師匠の真打昇進に続いて、立川流にとって創設40周年にあたる今年は大変にめでたい節目となった。

今回のゲストである談春師匠について、吉笑さんはプログラムにこう書いている。

独演会へ勉強に伺う度に、温かいこと・手厳しいこと、どちらも兼ね備えた「その時の自分」に一番必要な𠮟咤激励の言葉を伝えてくださる。慢心しそうになっている時には「お前がNHKで大賞を獲ったことなんて世間の誰も知りやしない」と発破をかけてくださるし、やるべきことに少し迷いが生じている時には「俺が今のお前の立場だったら、こうするだろうな」と具体的なアドバイスを与えてくださる。談春師匠からかけてもらった言葉の数々は自分だけの宝物だ。

吉笑さんの師匠は談笑師匠で、談春師匠はいわば伯父に当たるわけだが、吉笑さんが今年「真打計画」と謳って様々な挑戦をしている中で、“かっこいい真打になる”というキャッチコピーがあった。

きょうの談春師匠の高座、「白井権八」は圧巻だった。吉笑さんの真打トライアルだという客席の空気をすっかり自分の空気に変えてしまう“芸の力”を感じた。それは、まるで談春師匠が「かっこいい真打というのは、これだよ」とお手本を示しているようだった。

吉笑さんは何か新しいことを始めるときに、談笑師匠だったらどうおっしゃるだろう、談志師匠だったらどうおっしゃるだろうと考えるほかに、談春師匠だったらどうおっしゃるだろうと考えるという。“脳内談笑師匠”“脳内談志師匠”はいつも優しいが、“脳内談春師匠”は手厳しいとプログラムにこう書いている。

例えば「『現在落語論』というタイトルの本を書こうと思っています」と伝えると、脳内談笑師匠は「ワハハ」と笑ってくれるし、脳内談志師匠は「やりやがったな」と感嘆してくださる。ところが脳内談春師匠だけは「それで攻めているつもりかもしれないが、ただ談志に寄生し、談志を利用しようとしているだけだ。もしお前が新しい落語の地平を切り拓こうと考えているのなら、なぜもっと自分だけの角度で圧倒的な表現をしようと挑まないのだ」と手厳しくつっこんでこられる。

吉笑さんの真打昇進は決まったが、落語家としてのスタートはこれからである。これから先、どんな吉笑落語が展開していくのか。ものすごく楽しみだ。その意味で、吉笑さんにとって“脳内談春師匠”がいつまでも存在することは大きな力になると思う。そんなこんなの期待もこめて、この真打昇進をお祝いしたいです。本当におめでとうございます!