東海道四谷怪談3夜 第三夜、そして弁財亭和泉「落語の仮面」第8話
「東海道四谷怪談3夜」第三夜に行きました。一昨日からの連続読みも大団円。お客さんの大半が三夜通しのようで、神田紅純さんと田辺いちかさんによる全9席を堪能、客席はちょっとした興奮に包まれた。最後にお二人に加え、作者の土居陽児さん、解説の長井好弘さんも舞台に出てきて、三本で締めた。紅純さんが感極まって涙する一幕もあり、このような素晴らしい会に立ち会えたことに改めて感謝申し上げます。
第7話「深川三角屋敷」/田辺いちか
深川法乗院前で、直助とお袖は表向き夫婦ということで暮らしているが、男女の関係は持っていない。そこへ按摩の宅悦が訪れる。直助が鰻掻きの際に拾った菊の細工がされた鼈甲の櫛をお袖に贈って、それをお袖が髪に挿していたのだが、宅悦はそれを見つけ、「お岩様の櫛だ。南無阿弥陀仏」と唱える。聞けば、お袖の姉のお岩は民谷伊右衛門に殺されたという噂だという。
伊右衛門に仇討をすることを決心したお袖は、直助に力になってもらうため、本当の夫婦になることを覚悟し、欠けた茶碗で酒を酌み交わし、これをもって祝言とする。操を棄てて、操を立てる気構えだ。
そこへ佐藤与茂七が訪れる。赤穂浪士の連判状が鰻掻きの権兵衛(実は直助)の手に渡り、その鰻掻きに「深川法乗院」の住所が書いてあったために、訪ねてきたのだ。直助は浅草裏田圃で殺したはずの与茂七が生きているので驚く。と同時に、お袖は死んだと思っていた夫の与茂七と再会を果たしたことに驚く。何の断りもなく一方的に離縁された不条理に与茂七は怒るが、その離縁を認める代わりに条件を出す。深川土手で紛失した“小間物屋仲間の書付”を返してほしいと。
お袖は直助と「地獄の果てまで夫婦」と約束し、与茂七殺害を狙う。その一方で、お袖は与茂七に書付が手に入るように直助を酔わせて手引きするという。直助が用意した出刃包丁、そして与茂七が持っていた刀、その両方があろうことか、お袖に突き刺さり、お袖は死んでしまう。
直助は与茂七だと思って殺した男が、実は与茂七の着物を着た奥田庄三郎だったことを知り、主人だった庄三郎を殺してしまった罪を悔やむ。そして、直助は切腹をして相果てる。連判状は与茂七の手に渡った。
第8話「小塩田隠れ家」/神田紅純
仏孫兵衛は主人の小塩田又之丞の病を治すため、民谷家の秘薬ソウキセイを手に入れるために、伊右衛門の母・お熊と夫婦になり、又之丞を引き取って、一緒に暮らしている。お熊は孫兵衛の息子小平の妻はな、そして孫息子の次郎吉に辛く当たり、卵売りに出歩かせる日々だ。小平が死んだことを又之丞も、孫兵衛夫婦も知らないで、帰りを待っている。
次郎吉が布団や木綿布子、掻巻を持って家に帰ってくるので、誰に貰ったか?と尋ねると、父の小平に渡されたと言う。これは暫時、小平が戻って来る証だと又之丞も孫兵衛も喜ぶが。
そこへ旅姿の侍が訪れる。赤穂浪士、赤垣源蔵だ。又之丞とは昵懇の仲。二人きりになり、「(討ち入りも)いよいよだ」と報告がなされた。又之丞も早く病を完治させ、一番槍で報いたいと張り切る。そして、大石様が用意したという一人5両の分配金を受け取る。
そこへ質屋の庄七が訪れる。借金の取り立てだ。質種は次郎吉が持ってきた布団、木綿布子、掻巻だという。それに民谷家の秘薬ソウキセイも。お熊が又之丞にソウキセイを盗んだと濡れ衣を着せる。借金は締めて5両2分。又之丞が赤垣から受け取った分配金を奪おうとしたので、赤垣はそれを制止し、自らの懐から6両を出して、庄七に渡し、追い返した。
赤垣は言う。四十七士の中に盗人の嫌疑がかけられるような人物がいると不忠になる。討ち入り参加は諦めてくれと。悔しさで唇を噛む又之丞。脇差を抜き、腹を召そうとしたとき・・・目の前に小平が現われ、これを止める。そして、ソウキセイを渡される。そして、小平は消えてしまった。後に残るは俗名小仏小平と書かれた白木の位牌が。
次郎吉は小平が乗り移ったかのように、言う。「殺すのは民谷伊右衛門なり。ソウキセイによって本懐を遂げてくだされ」。又之丞がソウキセイを服用すると、病は全快。立たない腰が立つようになった。
第9話「伊右衛門の最期」/田辺いちか
伊右衛門が下男の長兵衛を伴い、鷹狩に出かけている。夜も暗くなり、近くの民家に立ち寄ると、「きょうは七夕」と言って女が酒を用意し、酌み交わす。短冊が舞い、そこには「瀬を早み岩に急かる瀧川の割れても末に逢わんとぞ思う」。この女は何と、お岩!…というところで、伊右衛門は母のお熊に起こされ、夢から覚めた。
そこに小林平内が訪ねてくる。吉良側の侍だ。「仕官の話がついに来たか」と喜んでいると、お熊は吉良様から貰った書付はどうしたのか?と訊く。「ある人物に預けてある」と答える。お岩殺しの口封じのために秋山長兵衛に渡したのだった。
そとに出ると雪。一本道に卒塔婆が立っている。俗名お岩と書いてある。柄杓で水をかけると、それは炎となり、赤子を抱いたお岩が現われる。「成仏してくれ!」と赤子をお熊に渡すと、赤子は何匹もの鼠となり、お熊の目玉を襲う。これも、また夢だった。
そこへ秋山長兵衛が訪れる。書付を返してくれと伊右衛門が頼むと、「俺がお岩を殺害したという噂になっている。そうではないとハッキリさせてくれたら返す」と言う。そして、「お前は吉良家に付くことでいいのか?」と問う。伊右衛門は「討ち入りの手引きをするために吉良家に入ったとすればいい」と答える。
すると、長兵衛は「書付はない。小林平内に渡した」と言う。そして、「お岩殺害は伊右衛門の仕業だと知らせた」と。すでに捕り方が伊右衛門を囲む。観念した伊右衛門に母のお熊が「私を置いていかないで」と言う。母を背負う伊右衛門。「嬉しい…」。だが、それはお熊ではなかった。背中の女が言う。「菊の細工の鼈甲の櫛、似合いますか?伊右衛門様」。「岩・・・」という最期の言葉を遺して伊右衛門はあの世に旅立った。
配信で「弁財亭和泉の挑戦!『落語の仮面』全10話」を観ました。今回は第8話「高座への螺旋階段」だ。
めっきり人気も実力もある噺家になった立川あゆみ。横浜にぎわい座では、彼女が「夢幻桜」に挑戦する会を企画したいと、三遊亭月影先生に相談する。条件は古典に加えて創作落語でも技量のある噺家のみ口演が許されると月影先生は言う。
最近は新作にも力を入れている立川あゆみが三題噺をやる会を、まず企画することになった。ただの三題噺の会ではない。対戦相手と競う会。その挑戦者をオーディションで決めることになった。落語のみならず、女流芸人なら誰でも参加できるオーディションとした。
多くの女流芸人が参加する中、一次予選は「露天風呂」「昇進」「革財布」の三つのお題で噺を創る筆記試験。「革財布」に釣られて、ついつい「芝浜」の改作を作ってしまう芸人が続出し、脱落した。二次予選に残ったのは、柳家ミミ、三遊亭花、講談師の神田松子の3人。
今度は「毒」をお題に、「ハラハラドキドキ」をテーマにして、サゲは「これが私の切り札」とすることが課せられた実演試験だ。ミミは白雪姫のパロディを安易に創って失格。一方、花は居酒屋を舞台に二ツ目の噺家が繰り広げる迷惑行為を店員の機転でギャフンと言わせる見事な創作をする。
さらに、花の頭には次から次へとアイデアが浮かび、どんどんと創作落語を披露して、圧倒的な才能を見せて、ミミも松子も棄権してしまう。圧巻の勝利を収めて、立川あゆみへの挑戦権を手にした。
さあ、この後、立川あゆみvs三遊亭花の三題噺対決はどうなるのか?興味を引き付けて、第9話へと繋げた。