隅田川馬石 お富与三郎~与話情浮名横櫛~「稲荷堀」

鈴本演芸場6月中席夜の部四日目に行きました。隅田川馬石師匠の特別興行「お富与三郎~与話情浮名横櫛」連続通し全七席、きょうは四夜目「稲荷堀」を観ました。きのうの「玄冶店」でも噺の最終盤で芝居台詞が、鳴り物も入って、ビシッと決まるのがカッコよかったが、きょうもお富の殺しの場で切る啖呵が芝居台詞の鳴り物入りで素晴らしかった。

「狸札」三遊亭二之吉/「猫と金魚」桃月庵白浪/江戸曲独楽 三増紋之助/「一目上がり」古今亭文菊/漫談 林家しん平/三味線漫談 林家あずみ/「鮑のし」春風亭一朝/「化け物使い」橘家圓太郎/中入り/漫才 風藤松原/「長島の満月」林家彦いち/紙切り 林家楽一/「お富与三郎 稲荷堀」隅田川馬石

白浪さん、前座時代はひしもち。刑務所では正月庵鏡餅を名乗っていたそう。番頭が「大丈夫なところ」と言って、懐から金魚を取り出すのが可笑しい。紋之助師匠、終始元気。気合いが入っている高座がいい。五ツ独楽に悪戦苦闘するも、観客の応援で成功!文菊師匠、落語は弱い芸能。尊ぶ。おまんま?それは、かっこむ。布袋様は乗合船に乗っている男の妊産婦。

しん平師匠、プリンをネタにあれだけ喋るのはすごい。パステルの“とろけるプリン”の由来。プリンの高倉健、不器用ですが。どらやきにプリンは女房が寝静まってから食う。あずみさん、久々の物真似。中島みゆきで東雲節。美輪明宏で淡海節。一朝師匠、イッチョウケンメイ。熨斗のポンポン!

圓太郎師匠、江戸っ子。杢助の口からホスピタリティという言葉が出るとは。風藤松原先生、まずは自己紹介。特攻服に宮内庁御用達と刺繍した暴走族。左腕に右腕という漢字を刺青したムキムキ外国人。彦いち師匠、鹿児島県出身。給食に漁師さんから頂いた刺身。オイルショックはなかった。アーノルドパーマーのワンポイントのあるセーター。楽一師匠、注文でお富与三郎、蝙蝠安、大谷翔平、相合傘。

馬石師匠、四夜目。再会を果たしたお富と与三郎は、お富の旦那の井筒屋太左衛門が手切れ金を渡して身を引き、玄冶店に二人で住まうことに。与三郎の実家の伊豆屋は、そんな息子では暖簾に傷がつくと勘当してしまう。

蝙蝠の安と目玉の富八の入れ知恵で、二人の家は旦那衆が内緒で博奕を打つ場所として提供し、小遣いを稼ぐようになる。その博奕の客として足繁く通う金物問屋の旦那、奥州屋十八はお富に惚れて、色目を使うので、お富はこれを利用して、月々まとまった金を入れてもらうことに。与三郎は「わたしの従兄弟」ということにする。

朝からどんよりして昼過ぎから雨がショボショボ降る一日のこと。博奕の客も来ないので、与三郎とお富は朝から酒を飲んでいた。やがて、お富が湯に出かける。そこへ、奥州屋が訪ねてくる。与三郎は戸棚に隠れる。「お富さん!」と声を掛けても誰も出てこないので、奥州屋は中へ入って、煙草を吸っていた。

そこへ「町内の者」と言う男が訪ねてくるが、これが目玉の富八。富八のことをよく知っている奥州屋は、真面目に働けと説教する。ところで旦那は?と問われ、蝙蝠の安に誘われて博奕をしに出入りしていると答える。富八が「旦那、お富さんに惚れているでしょう?」と鋭く突くと、奥州屋は正直に「月15両を渡して、妾同様にしている。いずれは女房にしたい」と言う。

すると、富八は3両欲しい、その代わりこの家の因縁話を教えると言う。大橋向こうの安藤様の博奕場に行くので、お富さんに3両都合して貰って、稲荷堀で待つ安兄ィと落ち合うことになっていたというのだ。奥州屋は3両を富八に渡し、その「お耳に入れたいこと」を聞くことにする。

富八は与三郎とお富の馴れ初めを「従兄弟?とんでもない」と言って、嘘7割、本当3割でペラペラと喋る。奥州屋はこれは面倒なことになったと思い、太左衛門の旦那を見習って、思い切ることにした。富八は3両を貰って、稲荷堀に向かった。

お富が戻ってきた。奥州屋がいる。「留守番をしていた」と言うが、なんだか態度がおかしい。何があった?と問うが、奥州屋は「お前さんという人は…、言わぬが花」と言って帰ってしまった。すると、与三郎が戸棚から飛び出してきた。そして、出刃庖丁を持って駆けていった。お富は「どうしたんだろう?間違いがなければいいが」と、燗冷ましの酒を呷った。

目玉の富八は雨降る中、稲荷堀へ向かう。後ろから声がする。「富だな!」「誰だ!」「与三郎だ!」「急用でも?」「奥州屋に話したな!お前に貰いたいものがある、命が貰いたい」「差し上げようじゃないか!」。富八が与三郎を組み伏せる。だが、与三郎は出刃庖丁で刺す。「人を馬鹿にするからだ!」。

与三郎は玄冶店に戻る。「どうしたんだい?」。泥だらけの与三郎を見て、問うお富。「酒を一杯くれ」と言って、飲み干した後、「目玉の富が喋りやがった。それも、俺が人殺ししてお富と一緒になったなんて嘘を並べやがって。許せない。二人のためにならないから殺した」。

お富が答える。「お前さんも腕を上げたね。それで、止めは刺したのかい?息の根を止めないと、生き返らないとも限らないよ」。そして、出刃は刺したままだと答える与三郎に、それでは足がついちゃうよ、もう一度行って、止めを刺して、包丁を抜いて来いと言う。

躊躇している与三郎を見て、お富は一緒に行くことにする。四つの鐘が鳴る。稲荷堀に着く。「与三さん、いたよ」。苦しむ富八が目の前でウンウン唸っている。「往生際の悪い男だね」。与三郎は「粗拵えは俺が済ませたから、仕上げはお前に任せた」と言う。お富は「臆病なんだから。よく見張っておいて」と答える。

ヨイ!富八!玄冶店のお富さんが来たんだ。と、ここから芝居台詞。男に代わって横櫛お富、止めを刺しにきた、めでたく往生しておしまい!出刃をズブリと刺して、抜く。「与三さん、誰も見ていなかったかい?」。下が堀だから、放り込んじゃおうとお富が言うと、与三郎が懐に3両あるはずと言い、抜け目がないね、香典代わりに貰っておこうと3両抜いて、富八の死骸を堀へザブンと投げ込んだ。

相合傘で与三郎とお富が去ろうとしたとき、「そこの御両人!その金はこっちへ貰おうか」という声がして、振り返ると、手を差し出す者がいる。これが何者か、は明晩にお話ししますと言って切った。明日も楽しみである。