談春浅草の会 仲日「子別れ」
「談春浅草の会~真打昇進予行演習」仲日に行きました。5月5日。立川こはるさんが正式に真打に昇進した。おめでとうございます!きょうからは、真打である立川小春志師匠としてのスタートである。出囃子も「ふしぎなポケット」から「二人椀久」に変わった。談春師匠が「子別れ」を演じ終わった後、小春志師匠を招き入れ、二人並んだ形で「きょうはお前のための三本締めだ」として、「よく頑張った、おめでとう」という言葉を添えて、浅草公会堂1200人のお客さんと一緒に三本で締めたのが印象的だった。
小春志師匠の真打昇進披露は10月28日から11月1日まで、5日間10公演、有楽町朝日ホールで開催される。すでにネタ出しとゲストが発表になっている。
10月28日昼「らくだ」/柳家三三 28日夜「子は鎹」/柳亭市馬 29日昼「鼠穴」/柳家喬太郎 29日夜「大工調べ」/さだまさし 30日昼「化け物使い」/立川志の輔 30日夜「品川心中」/春風亭一之輔 31日昼「居残り佐平次」/立川志らく 31日夜「ねずみ」/桂宮治 11月1日昼「明烏」/笑福亭鶴瓶 1日夜「宿屋の仇討」/春風亭昇太
いずれも大ネタ、そして豪華なゲスト。談春師匠も勿論毎日高座に上がる。入門して17年。小春志師匠の修行の成果が発揮される。楽しみだ。
御挨拶 立川談春・立川小春志/「蒟蒻問答」立川小春志/「子別れ(上・中)」立川談春/中入り/「子別れ(下)」立川談春
談春師匠の青鉛筆の「子別れ」、すごく良かった。(上)の「強飯の女郎買い」から、(中)で熊さんが女房のおみつを叩き出すところまで、本当に熊さんは駄目だなあと思う。だが、それは全て酒のせいなんだということ、だから熊さんは人間的に駄目な男ではないんだということを、女房のおみつはずっと信じてきたのだと(下)の「子は鎹」で痛切に感じる。
亀吉が斎藤の坊ちゃんにベーゴマを投げつけられて、眉間に傷が出来たとき、母親のおみつは「すまないが、我慢しておくれ」と言って、泣きながら亀吉のことを抱きしめた。「ごめんね。こんなとき、あの飲んだくれでもいてくれたら」と言いながら、強く強く抱きしめた。だからあばら骨が2本折れたと、という亀吉の台詞は、ギャグとして笑うのではなく、それだけ強い母親の愛情があったことを感じるエピソードだ。
亀吉が熊さんに「一人なのか?寂しいか?」と訊き、すぐ近所だから寄っていけばいい、おっかあも喜ぶと言う。だが、熊さんは「今は駄目だ。時期がきたら、俺から頭を下げに行くから」と、自分のしでかしてしまった罪の大きさを、酒を止めて3年が経っても、自分の胸に焼き付けているのがとても良い。
熊さんが亀吉に渡した50銭の小遣いで、亀吉は色鉛筆、それも青鉛筆を買ってもよいかと訊く。「空を描きたいんだ」という亀に、「描いちゃえ!江戸中の空を描いちゃえ!」と熊が言う。それが、翌日に鰻屋で会ったときに、真っ青に塗られたその絵を見せて、「建前のときにお父っあんが肩車してくれて見せてくれ空だよ。アタイのお父っあんは空なんだ」と言う亀吉の無邪気さにつながり、泣けるのだ。
亀吉はかなりマセているが、素直な子どもだ。父親と再会した後に帰宅すると、母親の前で「この50銭で青鉛筆を買っていいか」とスッと握りしめた拳を開く。そんな大金、誰から貰ったのだと訊く母親に対し、「知らないおじさん」と答えるも、さらに追及されると、亀吉自らが玄能を取り出す。そして、「いつもアタイを叱るとき、おっかあはこの玄能を持ってくるだろ。そして、この玄能はお父っあんの物だった、だからお父っあんが打つのと同じだよと言うよね」。達者に喋る亀吉に母親が戸惑っていると、亀吉は「誰から貰ったか、流れで分からない?」。
子は親に育てられるものだが、逆に親が子に育てられることも多いのではないか。僕は子どもを持ったことがないから判らないけれども、「子別れ」を聴く度に親子の関係性にとって大切なものは何かを教えられる気がする。