落語の仮面 第5話「恋する宮戸川」

配信で「和泉の新挑戦!落語の仮面全10話」を観ました。今回は第5話「恋する宮戸川」だ。前回、主人公の三遊亭花が人気に溺れてスキャンダルを起こし、師匠の月影先生に出入り止めの処分を受け、権爺と一緒に夢幻桜の舞台に旅に出るところで終わった。そして、今回は花のライバル、立川あゆみが主人公のサイドストーリーだ。

落語家のチャンピオンを決めるRAKU1グランプリに出場したあゆみだが、予選で掛けた「宮戸川」のお花の演じ方が“薄っぺらいお花”になっていると、月影先生に批判される。女流落語家が好きなファンは綺麗なあゆみの高座が素晴らしいと評価しているが、お花の了見がなっていないと言う。

五代目柳家小さんは狸の噺を演るときは「狸の了見になれ」と言っていたが、実際に動物園で一日中、狸を観察した努力を惜しまなかったという。「宮戸川」のお花が半七を恋する気持ちを表現するには、本気で恋をしなければ出来ない。身を焦がすような本当の恋をしなければいけない。月影先生の言葉をあゆみは真っ直ぐに受け止めた。

あゆみは素人落語家の秋田亭きりたんぽが彼女を好きであることが判ると、この男を“恋のモルモット”にしようと考える。ちょっと思わせぶりなことを、あゆみが言うと、きりたんぽはどんどん調子に乗って接近してくる。

そこから、恋は勘違いからはじまる、恋は鬱陶しいもの、ということをあゆみは学ぶ。そして、「宮戸川」のお花をきりたんぽのようなキャラクターに置き換えて、本選に臨む。

わざと不細工な人物造型で、「嫌いなの?どこが嫌いなの?」と半七に迫るお花。これが客席の女性客の心を動かした。恋愛は綺麗な子だけのものじゃない。恋をすると顔から感情が溢れ出す。予選の綺麗なお花から180度転換した、不細工な「新しいお花」が客席だけでなく、審査員の共感を得た。

そして、他に出場した真打たちを差し置いて、二ツ目の立川あゆみが見事に優勝を果たす。立川流の緊急理事会が開かれ、あゆみの真打昇進が決まる。さらに彼女を認めた月影先生が「夢幻桜」の上演候補にあゆみを入れた。

和泉師匠の上手いのは、前半綺麗なあゆみを、後半に見事に不細工に変貌させた演技力にあるだろう。アラサー、アラフォー、アラフィフ、年齢不詳、すべての女性落語ファンを魅了したのは、噺の中の立川あゆみだけでなく、演者である弁財亭和泉そのもののような気がした。