権太楼噺爆笑十夜二日目「火焔太鼓」
鈴本演芸場で「権太楼噺爆笑十夜」二日目を観ました。きょうは喬太郎師匠の代演でさん喬師匠、一之輔師匠の代演で一朝師匠が入り、権太楼師匠いわく「とても嬉しい日」。今松師匠、さん喬師匠、一朝師匠、正楽師匠、そして権太楼師匠と後期高齢者が集まって、同窓会のような気分だとおっしゃる。寄席は定年がないからねえ、と笑みを浮かべておっしゃるのが印象に残った。
さん喬師匠が学級委員長、副委員長が小菊師匠、給食係が一朝師匠で、「パンをハサミで切るな」と怒れるのが正楽師匠というのが可笑しい。こうした円熟味のある噺家さんが現役で高座を勤められるのも、寄席の魅力だと思う。
「新聞記事」柳家さん光/太神楽曲芸 鏡味仙志郎・仙成/「猫と金魚」春風亭一蔵/「鉄の男(序)」柳家小ゑん/粋曲 柳家小菊/「穴泥」むかし家今松/「そば清」柳家さん喬/中入り/漫才 米粒写経/「祇園祭」春風亭一朝/紙切り 林家正楽/「火焔太鼓」柳家権太楼
さん光さん、9月に真打昇進。星野源に似ていると言われたそう。頭頂部だけは一之輔師匠に似ていると。仙成さん、毬を自由自在に操る。仙志郎さん、金輪の「の」の字の書き分け、流石。一蔵師匠、趣味はダイエット、特技はリバウンド。そんなことは朝飯前と言う寅さんは朝飯を食っている途中だった。
小ゑん師匠、ヲタクの巣窟と化した秋葉原を嘆く電器屋の息子。そういう師匠も鉄道ヲタクの新作。続きが聴きたい。小菊師匠、艶。もしも私が鶯ならば 主のお庭の梅ノ木で惚れましたとエー たった一声聞かせたい。今松師匠、貧の盗みに恋の唄。金が仇の世の中は現代も同じ。さん喬師匠、どーも!清兵衛さんの蕎麦を手繰るスピードがどんどんアップする!梅干しは弁当箱を溶かすが、ご飯は溶けません。
米粒写経先生、平成レトロネタ大好き。フジテレビが元気だった頃が懐かしい。W浅野、浅野内匠頭と浅野大学(笑)。101回目のプロポーズ、素顔のままで、東京ラブストーリー、主題歌を居島先生が歌うと全部、前川清!一朝師匠、イッチョウケンメイ。江戸っ子と京都人の対決、楽しい。正楽師匠、名人芸。相合傘、五月人形、鯉の滝昇り。
権太楼師匠の「火焔太鼓」。ボーッとしている甚兵衛さんと、しっかり者のおかみさんの掛け合いの楽しさ。最後に甚兵衛さんが、どうだ!と言わんばかりに立場が逆転するのが面白い。
お屋敷に風呂敷に太鼓を包んで持って行く甚兵衛さんに対し、おかみさんがおまえさんは馬鹿なんだから、商売が下手なんだから、間抜けなんだから、としつこいくらいに背後から言い聞かせるところ、素直に甚兵衛さんがそのフレーズを繰り返すのが愉しい。で、甚兵衛さんが「冗談じゃない!おっかあをどやしつけてやる!」と自我に目覚めたところで、門番さんに出会うのが何とも可笑しい。
甚兵衛さんとおかみさんは実は似たもの夫婦で、亭主のマイナスを女房が補い、逆に女房に出来ないことを甚兵衛さんはちゃんとカバーしている。300金は300両、金は狸の八畳敷きという発想も、この50両の包みはお餅が入っているんじゃないかと勘繰るのも、50両の勘定の仕方も、150両のところで(女房は100両のところ)、お水を一杯おくれと要求するのも、全部そっくりな夫婦なのだ。
ボーッとしているようで、ちゃっかり300両を儲ける甚兵衛さんと、それを馬鹿だ、間抜けだと言いながら、しっかり支えるおかみさん。弥次郎兵衛のように右と左でバランスを取りながら、貧乏だけれど仲良く暮らす亭主と女房の関係性が、案外ちょうど良い塩梅なのかもしれないと僕は思う。