柳家三三「戦え!新型くん」三遊亭白鳥「それいけ!落語決死隊」コロナ退治の新作が並び、拍手喝采!

紀伊國屋ホールで「白鳥・三三 両極端の会」を観ました。(2022・05・25)

お互いに相手に宿題を出して、ネタおろしする企画の会。三遊亭白鳥師匠から柳家三三師匠へは「古典でも、新作でも、今のご時世を吹き飛ばす噺を!」。三三師匠から白鳥師匠へは「この世界を救う噺、または健康に関わる噺をしてくださーい!」。

結果、そうだよね、コロナ禍を吹き飛ばす噺をお二人とも作ってきた。それは、お客さんも含めて、皆が望んでいることであり、嬉しい二席だった。

落語ファンは早くコロナ禍前の状態で、落語を楽しみたいと願っている。2019年12月に中国の武漢で発生した新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、2022年の今も先行きは不透明という状態を誰が想像しただろうか。

少しずつ、コロナ禍前の状態に近い形で落語会や寄席は開かれているが、心の片隅で、まだまだ予断は許さないという思いを持っている。マスクを外して、大きな声で笑いたい。落語を聴き終わった後に、「面白かったねえ」と皆で感想を述べあって打ち上げがしたい。僕らはそんな日を待っているのだ。

柳家三三「戦え!新型くん」

人間国宝になる日も近いと言われている三遊亭白鳥師匠の弟子、三遊亭新型(さんゆうてい・にいがた)は、売れない噺家。こんなに売れないなら、噺家全員が売れなくて不幸になってしまえばいいのに、とさえ思っている。ひょんなことから出会った占い師にそのことを話したら、「新型」コロナウイルスが蔓延して、本当に噺家全員が干上がってしまった。このウイルスを撃退するには、集団免疫を作るしかしかない。そのためには、笑える落語を演って皆で笑って、免疫力をアップし、新型コロナを退散させるしかないと奮闘すると…、という噺。

よく言われていることだが、三三師匠の新作は面白い!「自由演技」(本人談)になると、イキイキと目を輝かして演じている。なかなか時間もないだろうが、この「両極端の会」含め、年に数回でいいから三三師匠の新作を聴きたい。

三遊亭白鳥「それいけ!落語決死隊 コロナ退治」

近未来。コロナ禍のために自粛が叫ばれ、ついには落語禁止法が施行される。だが、そういうときにこそ、闇の落語会が人知れず開かれるもの。柳家三三ファンの女性二人は、新宿周辺で「柳家三三独演会」が開かれるという情報をキャッチし、会場へ向かう。途中、桃月庵白酒ファンや可愛い女性落語家ファンの妨害を受け、その度に蕎麦を食べる仕草対決や、江戸前小咄対決をして、やっとのことで会場へ到着するが…、という噺。

ストーリー展開が一本筋でわかりやすく、その上で白鳥師匠独特のネットでは書けない業界マル秘ギャグがふんだんに盛り込まれているので、爆笑の連続だ。お得意の観客参加型のアクション、コロナ退治のおまじない「アジャラカモクレン、テケレッツのパッ」も飛び出し、大盛り上がりだった。