復活!「三遊亭兼好 人形町噺し問屋」オープニングトーク、抜群の面白さ!

日本橋社会教育会館で「三遊亭兼好 人形町噺し問屋」を観ました。(2022・05・23)

1年2か月ぶりの「噺し問屋」である。コロナ禍でなかなか再開できなかった兼好師匠の自主開催の勉強会的意味合いの強い独演会である。

「この会を再開しないと、なかなかネタおろしもできませんからね」と、以前お会いしたときにおっしゃっていたが、またこれから新しい兼好ワールドの噺がますます増えていくことは落語ファンとして非常に嬉しいことである。

兼好師匠の凄さの一つに、フリートークの面白さがある。この会では、前座が開口一番で上がる前に、オープニングトークを立ちでするのだけれど、この日は久しぶりということで、30分近く話した。

雑誌の企画で、種田山頭火をテーマに旅をするというロケをした。佐賀の嬉野温泉周辺を取材したそうだが、そのときの様々なエピソードを次々と笑いを盛って喋る技術に舌を巻いた。

雑誌社から企画を持ち込まれたときに、以前から種田山頭火は大好きだったので、行きたかったが、スケジュール帳を見ると、丸一日しか空いていない。でも、編集者に「詰め詰めでやればできますよ」ということで、決行。朝5時集合で、佐賀に飛び、夜まで取材を続けて、宿に着く。翌日は一番早い便で帰京するという強行スケジュールだ。

その僅か一日の中に、こんなに笑えるエピソードが起きるのか!と思うくらいにネタ満載で、オープニングトークだけで一席できるよなあと思った次第。

小三治師匠は長いマクラで有名だったが、兼好師匠も座布団に座っているか、立ちで話すかの違いだけであって、フリートークの達人だ。この「噺し問屋」は特にホームグラウンドなので、気軽さもあるのか、話が弾む。ほかにも沢山の独演会のある兼好師匠だが、このオープニングトークの面白さが兼好ファンの楽しみになっているのは間違いない。

落語は「四段目」と「居残り佐平次」の二席。オープニングトーク同様に、兼好師匠の持ち前の軽妙さが際立つ二席であった。芝居気違いの定吉も、居残りを商売にしている佐平次も、どっちも憎めないキャラクターという点で共通しているのが可笑しい。