【吉笑三題噺六日間】①「遠州のパイ」

配信で「渋谷らくご 吉笑三題噺六日間」を観ました。(2022・03・11~16)

立川吉笑さんは、去年から本格的に三題噺に取り組み始めた。僕は去年11月に西巣鴨スタジオフォーで開かれた三題噺に挑戦する会に行った。そのときに創作された「胃袋宇宙旅行」は、おにぎり、グルメリポーター、宇宙旅行の三つのお題によるものだが、完成度が高く、驚いたのを覚えている。

吉笑さんは去年12月に、シブラクで渋谷らくご大賞と創作落語大賞をダブル受賞されて、勢いに乗っている。そして、今年は真打昇進を見据えた動きが4月から始まる。ということで、3月のシブラク6日間興行で毎日、三題噺に挑戦する試みをすると知り、配信で全て観た。

冒頭に観客から貰ったお題を無作為抽出して、三つを選ぶ。そして、他の出演者3人が演じている間に、創作をする。一人持ち時間30分だから、都合90分の間に創作しなければならない。めちゃくちゃ無謀な試みだが、ものすごく面白かった。もちろん、完成度はそれほど高くはならないが、そのドキドキするようなライブ感は配信でも伝わってきた。

きょうから6日間は、そこで出来た三題噺について、感じたことを書いてみたい。

3月11日

「遠州のパイ」(うなぎパイ、縄跳び、おっぱい漫談)

吉笑さんは千秋楽に6日間を振り返って、「初日が一番良い出来だった」と言っていたが、僕もそう思った。

白い恋人、生キャラメル、八つ橋・・・それを擬人化するか、迷ったそうだが、結果そうせずに、各地の銘菓を生産をしている経営者の苦悩の話にしたのは正解だったと思う。

浜松の名産、うなぎパイは人気あぐらをかいて、経営努力が足りないと他の地域の名産品から罵倒された。お菓子連盟の品評会で、汚名を返上したい田中社長がどういう行動に出るか。

うなぎパイの味のポイントは、養殖ウナギのエキス。とりわけ、その“ぬめり”が大切だという発想が面白い。櫃まぶしや蒲焼きにされるウナギよりも闘争心に欠ける養殖ウナギをどう刺激するか。手拭いを何本もつなげて、ウナギを表現する工夫も愉しかった。生け簀のウナギたちが、力になりたいと頑張る様子が伝わってきた。

ウナギのエキスを混ぜ、小麦粉や玉子とこねた生地をカマドで焼く作業。今は機械まかせだったが、台風が上陸して停電。「昔は人力でこねていた」とベテラン作業員の村上さんが足でこねる。足腰の強さがカギ。縄跳び名人の村上さんが大活躍するというのは、三題噺ならではの「おぉ!」と思える醍醐味だった。