【プロフェッショナル 生花店主・東信】命の花、心で生かす(3)
NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 生花店主・東信」を観ました。(2017年8月28日放送)
きのうのつづき
東に大きな仕事が舞い込んだ。舞台は銀座。新しくできる商業ビル「ギンザ・シックス」。オープン記念に花を飾り、招待客を盛大に迎えてほしいという。
クライアントは谷川じゅんじ、常に高いハードルを突き付けてくる著名な空間デザイナーだ。
東は「頑張ります」と言ったものの、足どりは心無しか重い。先方の要望は「雅」。行き過ぎちゃダメだが、「現代版の雅」という注文だ。東の色に加え、見たことのないものにしてほしいという。
東が言う。
いい意味で常に期待を裏切るというか。新しいものを求められている。大変なんですわ。
懸案はメインに据えると決めたダリアをどうするか。生産者の南房総市に足を運んだ。ダリアは500品種以上ある。自らの目でイメージに合うものを探す。東が一つのダリアに目を止めた。昨年誕生したばかりの品種、ルージュロワイヤル。光の当たり具合で、独特の赤紫色が様々な表情を見せる稀な品種だ。
イベント前日。巨大なオブジェの製作に取り掛かった。用いる花はダリアを中心に全部で1万本。そのすべてをしっかり生かし切りたい。
イベント当日。仕上げにルージュロワイヤルを挿す。突如、クライアントがやって来た。東に「ギンザ・シックス」のイメージムービーを見せる。
下の商業空間の方もこのトーンに合わせて、夕べ全部明かりを組み替えた。ちょっと弾けた感じとか、ポップな感じが出ると…。
急遽、イメージが明るく弾けたポップなものに変わったという。花をすべて取り替えるのはできない。だが、このままでは、クライアントを満足させられず、花の命も全うさせられない。
東が持ってきた枝を手に取った。オブジェに差し始めた。
東が言う。
花に呼ばれる。花に動かされる。取り憑かれているんだよね。力でねじ伏せている感は出ているかもしれないけど、実は逆で、俺が操られているのかもしれない。花に生かされている。
またクライアントがやって来た。
いいと思う。普通じゃなくなった。
花が東を導いた。さらに蔦を巻きつけ、どこにもない世界観を作り出す。イベントに無事間に合った。
イベントが始まると、花に人々が集まってきた。
デザイナーの原研哉さんが評価した。
これは東さんだなと一目見てわかります。ものすごい密度があるし、生命をこれだけたくさん奪っていながら、晴れがましい気持ちにさせてくれる。命とやりとりしている人らしい。非常に神々しい。
つづく