【プロフェッショナル ウエディングプランナー・佐伯恵里】愛を信じて、生きていく(3)
NHK総合テレビの録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 ウエディングプランナー・佐伯恵里」を観ました。
きのうのつづき
8月下旬。佐伯は打ち合わせに臨んでいた。8年の交際を経て、去年入籍した二人。永井太基さん、葉紬衣さん。親の勧めで10月に結婚式を執り行いたいという。だが…。二人は結婚式にあまり執着がなかった。
別に私もそんなデザインとか、こだわりないんで。やりたいことが思いつかない。
イメージが湧かず、気持ちも乗らない様子。さらに挙式も提案したが、堅苦しいからという理由で、パーティーだけにしたいという。
9月。佐伯は新婦とその家族の元を訪ねた。今回の式ではフラワーアーティストの母が会場の花飾りを担当するという。佐伯は少しでも話ができればと待っていたが、忙しさもあってか、なかなか母は会話に加われない。花はお母さんにお任せ、ということで、結局、3人で話すことはほとんどできなかった。
佐伯が言う。
母との距離感が近いのか、遠いのか、分からないね。ちょっと、緊張感あったかな。
新婦の葉紬衣さんは18歳のときに父を亡くし、母のミエさんがカフェや花屋を切り盛りしながら、一人で育ててきた。
ミエさんが言う。
私一人で次女と長女を育てられるかしらって、ちょっと思ったときもあったから、やっぱり心からここまで来れて良かったと思います。私が子どもの頃に愛情を注いであげられなかった分、旦那さんが捧げてくれるから良かったかな。
家族を守るために十分持つことのできなかった親子の時間。
葉紬衣さんが母のことをこう言う。
強い。バイタリティーの塊みたいな。心配にはならないからいいよね。
式まで16日。佐伯は親子の元へ足を運び、それぞれの思いを汲みとり続けた。
佐伯は言う。
今回の場合は、油断すると、さらっとした結婚式になるんですけど、本当の結婚式にならないような気がするんですよね。
式まであと8日。この日、最終打ち合わせを終えたはずの新郎新婦と会うと聞き、佐伯を訪ねた。話があると言う。
何かあと少しだけ、何かが足りてないような感じがしていたので、ずっと引っかかっていたんですけど、あとちょっとだけ、ご提案をしてみようかなと思ったことがあって。
最初に断られた挙式をもう一度提案するという。
改めてこの結婚の日に母と娘が思いを分かち合うというのは、言葉はなくてもいいんですよ。二人が分かればいい。そういう時間があったら、頑張っているお母さんへの何というか、その人生への励ましにもなるのかな。もう20年近く、この仕事をやってきて、いろんな人生を見てきたから。何かが私をノックしているというか。
入場シーンをちゃんと葉紬衣さんとお母さんが入ってきてもらって、多分ものの5分くらいの話だと思うんですけど、でも何か噛みしめられて、区切りよく始められそうな気がするので、いいのかなと。
二人は佐伯の提案を受け入れてくれた。
葉紬衣さんが言う。
普通は「やらないです」と言われたら、「わかりました」で、それで終わりなのかな。でも佐伯さんはわざわざ結構ギリギリだったけど、「やった方がいいと思うんですよね」ってLINEで連絡をくれて。そこまでしてくれるのは、仕事だからっていうよりかは、佐伯さんの中にちゃんと信念じゃないけど、仕事に対して思うものがちゃんとあってやっているのかなって。
前日。訪れてくれる人たちのために、二人はウエルカムボードや出し物を準備していた。挙式のことは母には内緒にしておく。
佐伯が言う。
ドキドキしています。他のことは考えられないんですね。もっと良くできるところないかなとか、いろいろ考えているので。ソワソワしているというか。人の優しさとか、愛とか思いとか、それが見えるから、ずっとなくならないと思うので。何度も見せてもらったので、結婚式で。
当日朝。母のミエさんが一番乗りで花を活けていた。娘へのはなむけだ。
きょうは秋の感じで。仕入れられそうなお花を、お金に糸目をつけずに用意しました。プロテア系のリクエストがあったので、この辺にプロテアを。
思いの重なる交差点が一つずつ増えていく。本番直前。
親族紹介の前に、結婚の誓いのセレモニーをさせていただくことになりまして。お母さまにもご協力お願いできればと。
母は頷いた。強く優しい母が、泣いていた。3分間の短い挙式だった。きょうという日が未来へのお守りになるように。
佐伯が語る。
二人が本当にずっと笑っていましたね。それを見てて、ちょっとは責任を果たせたのかなという気はして。すごく思いやりと愛情に溢れていて、素晴らしい結婚式だと思います。
人生、悩み、傷つくことはあるけれど、ぬくもりを分かち合い、愛に気づくことができれば、強く生きていける。
人生の応援歌としての結婚式をプロデュースする佐伯さんに拍手喝采!