白鵬は誰が何と言おうと、大横綱だった(1)

NHK総合テレビの録画で「NHKスペシャル 横綱白鵬“孤独”の14年」を観ました。

優勝45回、通算1187勝など数多くの大記録を打ち立て、大相撲の歴史にその名を刻んだ白鵬。しかし、横綱としての日々は平坦ではなかった。野球賭博や八百長などの不祥事に一人横綱として矢面に立つ重責。外国出身力士としての心の葛藤。言動や取り口などで、しばしば「横綱の品格」が問われた。

68代横綱・朝青龍は言う。

前人未踏の記録も出たし、横綱の地位をここまで守ってくれた男だと思います。

72代横綱・稀勢の里は言う。

精神的にも肉体的にもいろいろなことが削られていた、いろいろなことがのしかかったと思います。

52代横綱・北の富士が言う。

あの(不祥事の)ときに白鵬がいなかったら、現在の大相撲はどうなっていたか、わからない。

そして、69代横綱・白鵬が語る。

相撲を取るのは本当に怖い気持ちもあったし、できたらどこかに行ってしまいたい、逃げたい孤独感がありました。

もがき続けた14年ではなかったか。現役の最後まで、なりふり構わず勝ちにこだわって45回の優勝を遂げた陰には、知られざる格闘の日々があった。

45回目の優勝インタビュー。

もう二度と土俵に上がれないんじゃないかという思いで臨みましたけれど、良かったです。

2021年1月。家族の前でトレーニングに励む白鵬。4場所連続で休場が続いていた。36歳。身体のいたるところに故障を抱えていた。深刻なのは右膝。毎日水を抜かないと、日常生活に支障をきたすほど悪化していた。

でも、もう一度土俵に立ちたい。

入門したての頃の記憶がよみがえる。2001年夏場所。平成の大横綱、貴乃花が右膝に大けがを抱えながら優勝決定戦に出て、見事に優勝を果たした。満身創痍だった。その姿と自分を重ね合わせていた。

白鵬は振り返る。

崖っぷちに立たされたときに、目つき、顔つき、体つきにも出るっていうのは、出し切るというものがあったのかな。

あの一番は本当に感動したし、正直、あの土俵に立ってみたいというのは、あったよね。

つづく