【プロフェッショナル アニメーション映画監督・細田守】(3)希望を灯す、魂の映画
NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 アニメーション映画監督・細田守」を観ました。(2015年8月3日放送)
きのうのつづき
細田が鳴かず飛ばずで3年経った頃、ある誘いを受けた。アニメ制作会社の社長が、細田の手がけたテレビアニメを偶然目にし、長編アニメの監督に抜擢してくれた。
細田が語る。
もう映画作るチャンスはないと思っていたから、こんな奴にも映画を作るチャンスっていうか、そういうことをまた言う世の中がいい加減だと思ったけど、本当にありがたいと思ったんだよね。
細田は14年勤めた会社を辞め、退路を断って、裸一貫で臨むことを心に決めた。もはや安いプライドに振り回される細田はいなかった。壁にぶつかれば周囲に相談し、スタッフたちには常に頭を下げた。どんなことをしてでも、この映画を完成させる。映画監督としての本当の覚悟が細田を突き動かした。
描いたのは、ドジな主人公が失敗を繰り返しながら成長していく物語。挫折の連続だった自分を重ね合わせた。
注目されることなく、僅か6つの映画館からはじまった上映。しかし、口コミで評判は広がり、異例のヒットになった。
その後も、親戚との不仲や子供についての悩みなど、自らの苦しい経験を作品にぶつけていった。映画は多くの人の希望になった。
人生は、捨てたもんじゃない。
細田は語る。
映画を作るとか、観るとかってことは世界に希望を持っていますよってことを表明するような行為でさ。そうでないにもかかわらずね。そのときの自分は幸せじゃないかもしんないけれども。「人生は幸せなもんかもしんない」ってことをさ、大声で言っているようなもんだよ。それは幸せじゃない人だからこそ、それを作ったり言ったりする権利があるってことだよ。
自分の持てるすべてを投げ出して映画を作る。
孤独な魂の叫びは多くの人の心を揺さぶっている。
つづく