【SWITCHインタビュー 阿川佐和子×ふなっしー】(下)人生の目標や夢はない。目の前の面白そうだなと思うものをやる。仕事っすから。
NHK―Eテレの録画で「SWITCHインタビュー達人達 阿川佐和子×ふなっしー」を観ました。(2014年11月15日放送)
きのうのつづき
阿川が石田純一から聞いた話を引用した。
男は過去を語りたがる。自分の実績とか手柄、自慢を語りたがるけど、女はちっとも聞きたくない。女の子に興味を持って話を聞くおじさんになるとモテる。
阿川は聞く力で一番大事なことは目の前の相手に集中し、好きなところを見つけることだという。著書「聞く力」の中でも、阿川はこう書いている。
声の出し方、ちょっとした反応。表情、仕草、躊躇、照れ、熱意…。下らぬ話の隙間にも、その人らしさや人格が表われていて、そこに共感したくなるような、なにか小さな魅力があればそれだけでじゅうぶんです。
ふなっしーは動くし、表情も変わる。感情がこっちにバンバン飛んでくる。喋り方とか、質問の仕方だけじゃなく、表情で「話したくなる」と思う場合があると最近気が付いた、ふなっしーを見て思ったという。
ふなっしーが阿川にチャレンジの秘訣を訊いたら意外な答えが返ってきた。
基本受注産業ですから。ないのよ、軸が。書く仕事なんて好きじゃないし、インタビューの仕事もいまだにそんなに好きじゃない。仕事っすから。
ただ、何かに挑戦したくなる気持ちは常にあるという。放送当時、公開された映画「ニシノユキヒコの恋と冒険」に、竹野内豊演じるモテ男と恋に落ちる役を演じている。
なんて図々しいことって思うでしょう。映画を作る制作現場っていろんな人がいる。それぞれの職人さんが働いている。現場の仲間になったとき、どういう気持ちになるのか、経験してみたい。好奇心というほど高尚なものじゃなくて、単なるのぞき心。
ここから、阿川が立場を逆転してインタビューする側に戻る。
――好きでこんなとこ、入ってないんでしょ?本業は?
梨の妖精なっしよ。なんで内角ストレートをガンガン投げ込んでくるなっし?
本業とか副業とかじゃなくて、何をやっても生きていく自信だけはあるなっし。スイカのたたき売り妖精でも構わない。
――なんで自信があるの?
昔からなっしな。大前提にそんなにお金がなくても生きていける。3~4年間、5万円くらいで作った小屋に住んでいたこともある。DIYで勝ってきた木材とかで。だから、貧乏が苦にならない。今は少々梨持ちになっているけど、だから幸せかっていうと微妙な話なっしな。死ぬまでにどれだけ楽しい思い出を作れるか。そのためにお金が必要なら死ぬほど仕事すればいい。学問が必要なら死ぬほど勉強すればいい。必要ないんだったら、遊んでいればいい。
――嫌われたらどうしようという心配は?
最初の頃、どちらかというと嫌われていたから。嫌っている人が好きになってくれる確率の方が高い。好きの裏返しは嫌いじゃなくて、無関心。無関心な人を振り向かすのは難しい。嫌われても平常でいられる。うるさい、騒がしい。しょうがない。多々ある。気持ち悪いとか、よく言われる。それはしょうがない。
今度はふなっしーが阿川に訊く。
――何か言われて傷ついてやめたいってことはあるなっし?
いつも人目を気にしてオドオドしてると言われたとき。ひそひそ声が聞こえると、私の悪口を言ってるのかな、と。すごく人目を気にして否定的に考えていた時代はある。そういうのを含めて阿川だね、と友達に言われて。すごく隠していたつもりなのに、隠れていないんだなとわかったとき。直らない性格だから、しょうがない。自由にしようと思ったら、楽になった。でも傷つくことは傷つきます。
ふなっしーが言う。
対談の話が来たとき、正直そんなに話すことないんじゃないかなって思っていたけど、意外と同じような気持ちを持っているところをあるんだなって。強い女性のイメージが強かった。本当は乙女なんだな、って気が付いた。
自由と孤独って表裏一体な感じがする。1人でやっていて、自由だけど、常に孤独感はある。孤独感が自分を強くしている気がして、自分に酔っちゃっている。だから、全部1人でやっちゃうなっし。グッズ、全部監修している。
阿川が「事務所に入った方がいいんじゃない?マネージャー、付けるとか」と提言すると、「やってみたら、できちゃったから。もういいや、と思って」。
阿川もこの先のことを語った。
人生の目標とか、夢とかはないの。目の前にきたら、面白そうだなと思うものをやる。目の前のことしか見えない。
なるほど。阿川さんの言っていることも、ふなっしーの言っていることも、すごく合点がいくというか、それこそが人間だよなあと思う(ふなっしーは妖精だが)。誰もがスタート地点から目標を掲げて、それに向けて着々と努力し、進んでいくものではないような気がする。生きていく中で、いろんな分岐点があって、それも後からあれが分岐点だったのかなあと気づく、あちたりこちたり、寄り道をしながら、自分らしいことを見つけていくのかもしれない。
20代のあの時にあれを選んでいればよかったとか、30代でこのことには見切りをつけておけばよかったとか、色々な過去を後悔のように振り返るけど、そんなことは悔いても仕方のないことだし、目の前にあるものを一所懸命に取り組む。周りの人たちに迷惑を掛けたり、嫌われたりしたら、そこで駄目だなあと諦めるのではなくて、それを糧にしてまた一歩ずつ進んでいく。それが人生なのかもしれない。他力本願ではないけれど、ご縁のあるものを懸命に取り組めば、道は開けるような気がする。
ふなっしーも、阿川さんも、手の届かない人だけど、この二人から学ぶものは多かった気がする。ありがとうございました。
おわり