【渋谷らくご 正月興行】謹賀新年。今年もシブラクで大いに楽しまさせていただきます(下)
配信で「渋谷らくご 正月興行」を観ました。(2021・11~12)
1月11日(月)17時
橘家文吾「竹の水仙」立川寸志「時そば」柳亭小痴楽「だくだく」隅田川馬石「大工調べ」
文吾さん、着実に成長。鳴海宿の大杉屋主人は養子で8年、女房には弱い立場なのを巧みに笑いに生かす。竹の水仙を細川越中守に命じられて買い求めた家来は郡山剛蔵。500両を甚五郎が主人に渡すときのメッセージが良い。私のような一文無しを泊めてあげなさい。そういう人のために使いなさい。
寸志さん、アカデミック。江戸時代の時の数え方をわかりやすく解説。蕎麦屋の座右の銘、「商いだけに飽きずにやれ」がそのまま屋号に。竹輪を麺に練り込んであるって!小痴楽師匠、得意ネタ。気で気を養うライフスタイル。家人と泥棒の「つもり」合戦、愉快。
馬石師匠、千葉テレビ「江戸を斬る」。あたぼう。御の字。銭だけ取り上げ婆。丸太ん棒。あんにゃもんにゃ。細く短く命を繋いだ。大家コロコロ、瓢箪ポックリコ。ガリガリの芋と一緒になったろう。令和に残したい日本語なり。
1月12日(火)18時
台所おさん「粗忽の使者」三遊亭遊雀「紺屋高尾」
おさん師匠、キャラが落語。ざっくばらんな職人の留っこ、活躍で愉しい。指先に力量も求められ、閻魔で尻をつねる場面、想像すると可笑しい。三太夫、留太夫、二人合わせて・・・漫才みたいですね。
遊雀師匠、「台所おさんは小さん師匠が勧めて、全員断った名前」。笑い沢山から、後半しんみりと。「薬で病を治す医者はいくらでもいるが、吉原で治す医者は薮井先生しかいない」。「一文たりとも残して帰ってくるな。一晩で全部使ってこい」。「すいません、嘘をついていました。働いて働いて忘れようと思ったのに、3年経ったら会いたくなっちゃって」。「3年死んだ気で働きます。今度は紺屋の職人として会っていただけませんか」。
1月12日(火)20時
林家彦三「妙な話」(芥川龍之介作)橘家圓太郎「強情灸」立川談吉「当たりの桃太郎」春風亭昇々「一致団結」
彦三さん、文芸落語。千枝子と旦那を結ぶ線に、謎の「赤帽」が存在する不思議。マルセイユと東京の間を時間と空間を超えて結ぶ何か、に魅力を感じる。そして、千枝子のことを思い焦がれていた兄の友人の思い…。深いぞ。
圓太郎師匠、高齢でも元気な師匠に挟まれた二之席。井村屋のあんまんみたいな大きさの百草の塊を右腕に載せて、炭火をつけて、扇子で仰ぐ負けず嫌い。平気な顔だったのが、次第に歯を食いしばって赤い顔になる様子に一日の長。
談吉さん、談志入門秘話。「比較的大きな桃」が川から毎日流れてきて、中から出てきた男の子はたった6秒で少年~青年~中年~老人を経て死んでしまう。仕方がないので死体を川に流すという、もはや談吉ワールド全開の新作が展開。それまでの大量の「はずれ」から一転して「当たり」の桃太郎が生まれ、桃の汁をかけるとお爺さんが生き返るという…。破天荒だけど、面白い!
昇々さん、現代社会への警鐘。関東でナンバーワンの成績を誇る中野営業所。部長が音頭を取る恒例の運動会は「一致団結」の象徴だった。中野営業所の仇名が「スマホ充電器」。iPhone、Android、Galaxy、ガラケー。社員は各自優秀で、彼らが営業成績を競っていることで関東ナンバーワンになれるわけだけど、みんなバラバラ。自分のことしか考えていない。それでいいのか!?高度経済成長期を支えた「一致団結」が少しは必要じゃないか。テレワークで益々時代はその逆をいくわけだが。