【渋谷らくご 11月公演】6周年、おめでとうございます!(中)

配信で「渋谷らくご 11月公演」を観ました。(2020・11・13~18)

15日(日)14時

春風亭昇羊「落武者」柳家小せん「蒟蒻問答」立川吉笑「小人十九」林家正蔵「一眼国」

昇羊さん、喜多八噺。マクラで女優・吉田羊について語りたくてしょうがなくて、結局たくさん語ってしまうのが楽しい。「落武者」は小咄を、ある作家の方が故・喜多八師匠のために膨らませた噺。悪くなかった。

小せん師匠、良い声。権助が弔い甚句を歌うところ、他の噺家さんでは真似できない味がある。六兵衛親方のいいかげんな問答も愉しい。唖(おし)、そこし、聾(つんぼ)。

吉笑さん、ソーゾーシー全国ツアーでかけているネタ。コロナ禍を反映させて、飛沫感染で皆がある症状になってしまうという(ネタばれ防止で自粛)。ちょっと前に聴いたのより進化。日々高座にかけながら、磨く姿勢が素晴らしい。

正蔵師匠、真面目な副会長。六十六部から必死に何かを訊き出そうとする香具師に、もう一工夫あると良いのだが。

15日(日)17時

柳家小八「佐々木政談」橘家圓太郎「替り目」玉川太福「自転車水滸伝~ペダルとサドル」柳家花緑「目黒のさんま」

小八師匠、もう一押しほしい。四郎吉のこまっしゃくれた生意気な口の利き方と与力の身分を問われ政治批判をする内容のバランスの取り方の問題か。

圓太郎師匠、一つ一つのフレーズが良い。「私は夫だ!」「下にドッコイをつけてみなさい」。「地球は回る。だって丸いんだもん。フォーリーブスも言っていた」。「カムバック・サーモン。男は母に甘えたい生き物なんだ。心の中では手を合わせている。俺にとっては生きた弁天様」。「うどんは嫌いだ。生まれたときから、グルテンフリーで生きているんだ」。

太福さん、久々に聴いたネタ。6年前のシブラクでかけたネタとか。GMOは、自転車密度多さ(笑)。荒川区の大家さんとの自転車をめぐる下町人情物語。密かに溶接までして直してくれた!余っているサドルって!?

花緑師匠、昔と変わらない。テンションの高い殿様とか、やる気のない鯛とか。黒くて長くてジュージュープチプチ。

16日(月)18時

柳亭小痴楽「明烏」桂春蝶「妾馬」

小痴楽師匠、昔堅気。銀行にデビッドカードを勧められ、「俺には沢辺という苗字がある!外人にはなりたくない!」。御神木に二拍手一礼する時次郎。お茶屋が巫女の衣装を持っている!「嫌だよ、町内の札付きだからねぇー!気にしているよお!」。初心な若旦那より、源兵衛と太助に力点を置いた高座。

春蝶師匠、米團治師匠に堕ちそうになったマクラ。おつるとの再会で、八五郎が母親に孫を抱かせてやってくれと懇願するところ、熱演。「オモクモクとか、金とか、要らないから」。「サンちゃん(三太夫)が泣いているぅ~」。

16日(月)20時

春風亭昇々「天災」柳亭市童「真田小僧」立川笑二「崇徳院」瀧川鯉八「ぷかぷか」

昇々さん、本音が言える人間でありたいと。八五郎のキャラは乱暴者というより、落ち着きのないキャラで、これは自分自身のキャラを投影しているのか。市童さん、真っ当に演って真っ当に愉しい落語。

笑二さん、「走れメロス」の劇でメロスを演ったのが落語家への第一歩。熊さんの女房をお嬢様にして騙す作戦、失敗!が面白い。なんでもお嬢様に見えるわけではなかった!(笑)。

鯉八師匠、渋谷らくご大賞3回受賞。チャンピオン・オブ・チャンピオン!と。真打昇進披露目が大盛況。これはゴールではなく、スタートと言い切るところに、力強さ。「何かいいこと、ないかなあ」。ナイフ万太郎が醸し出す鯉八落語の不思議な魅力が落語界を席巻する日も近い。