【上州事変】群馬を元気に!そして、群馬を全国に発信する若手二ツ目たち

配信で「上州事変」を観ました。(2020・09・19)

「上州事変」は全員が群馬県出身の二ツ目という、4人の落語家ユニットだ。メンバーは香盤順に、林家つる子(高崎)・立川がじら(前橋)・柳家小もん(前橋)・三遊亭ぐんま(渋川)。

2018年、某クイズ番組の出演時、群馬の名所に関する問題に答える事ができず、自らのぐんま特使としての自信を失い、群馬に対するモチベーションが低下していた林家つる子が「メンバー達と群馬を再発見するつもりで群馬を知っていけば意欲が湧くのではないか」と考えたことがきっかけで結成された。ちなみに、メンバー全員、椎名林檎の東京事変を敬愛しているとか。

18年10月28日(群馬県民の日)に前橋市の群馬会館で旗揚げ公演が行われ、これを皮切りに、群馬県の市町村35か所を全てまわり、落語会を開催する意気込みで、19年3月榛東村、6月みどり市、10月大泉町、12月伊勢崎市と順調に開催された。

​落語会の前後で、各市区町村の名産品、特徴などを写真や動画で撮って、公式ホームページ・各種SNSから発信し、群馬の魅力を全国に伝えたいというのも、コンセプトの一つだ。また、メンバーもこの活動で、今まで知らなかった地元、群馬の魅力を、発見していきたいという気持ちだ。最終的に、銀座「ぐんまちゃん家」での落語会開催を目標にしていて、東京の地で活動の報告と共に、群馬の魅力を発信したいと思っている。

ところが、このコロナ禍でその活動がストップしてしまった。そこで、ライブハウス「浅草橋MANHOLE」からの配信で、群馬県のみならず、全国に自分たちの落語と群馬の魅力を発信する戦略に出たわけだ。4人それぞれの個性が出た高座だった。

柳家小もん「目黒のさんま」

殿様がわがままだったり、バカ殿だったりせず、きちんと常識を弁えているキャラクターというのが素晴らしい。家来が「弁当は持参していない」と正直に答えると、「火急のことゆえ仕方ない」と言い、秋刀魚は下魚という家来に「戦場であれが食えぬ、これが食えぬと言ってられるか」という理屈、ごもっとも。目黒にて秋刀魚を食せしことも、部下の落ち度になるから口外しないでくれと言われると、そこはきちんとモノがわかっている殿様。こういう上司を持ちたいものである。

林家つる子「厩火事」

上州はかかあ天下とからっ風という言葉があるが、その「かかあ天下」というのは、妻が威張っているという意味ではなく、群馬は絹産業が発達していて、絹糸を生産したり、織物を織ったりしたのは内職の女房で、その技術は天下一品だったから、暮し向きが安定していた。だから、かかあ天下というのは「かかあは天下一品だ」ということからきている、という解説にガッテン!

パーパーとおしゃべりなお崎さんの男勝りが、旦那が圧倒されるほどすごくて、声色もどっちが亭主で、どっちがお崎さんか、わからないくらいの逆転表現が面白い。こんな優しい亭主はいない、という擁護と、死んでしまえばいい!という攻撃が交互に出てきて、「情緒不安定なのか?」というのも可笑しい。旦那が1喋るのに対し、20くらい喋るお崎さん。これじゃぁ、夫婦喧嘩が絶えないのも当たり前と思わせてくれる。つる子さんの表情と台詞遣いが上手い。

三遊亭ぐんま「勝利の老婆」

出囃子は全員、小岩ファンクさんのナマ演奏だったのだけれど、ぐんまさんのときはレッド・ツェッペリンの「移民の歌」。これは彼のあこがれのプロレスラー、ブルーザー・ブローディーの入場曲だそうで、テンション上がりまくり。

小学校の運動会に、両親が共稼ぎだから、おばあちゃんが来てくれて、保護者参加の競技に参加して、ばあちゃんパワーを見せつけるという破天荒な新作が面白い。もんぺに地下足袋という格好もさることながら、パン食い競争では鎌を振るい、騎馬戦ではホンモノの農耕馬を使う荒技!馬の名前が青というのもイイネ!

立川がじら「蒟蒻問答」

めちゃくちゃなお経は、なんと群馬県民なら誰もが知っている「上毛かるた」!のぼる榛名のキャンプ村!にわか和尚の名前は、群馬県が誇るタレント、中山秀征からとって、秀征(しゅうせい)!六兵衛親方の問答も愉しい。そういえば、この落語の舞台は上州安中ですね!