艶笑夜噺 古今東西2026 柳家喬太郎「吉田御殿」

配信で日活ロマンポルノ55周年「艶笑夜噺 古今東西 2026」を観ました。
昼の部 活弁「キャスティグ・コーチ」「御誂治郎吉格子」坂本頼光/「吉田御殿」柳家喬太郎/映画「性盗ねずみ小僧」(監督:曽根中生・脚本:長谷川和彦)
夜の部 漫談 寒空はだか/「紙入れ」~艶笑小噺 柳家喬太郎/映画「宇能鴻一郎の濡れて打つ」(監督:金子修介・脚本:木村智美)
「吉田御殿」。鍋島藩馬廻り役五十石、中村惣右衛門の息子・新之助二十二歳が江戸から国許に帰る道中で起きた悲劇。それは吉田御殿に住む女主の淀君に見初められたから…。名作である。
茶屋の横に生えていた松の根方に立小便をしたのが因果であった。この様子を吉田御殿の展望台のようなところから淀君が遠眼鏡で覗いていた。新之助のイチモツはかつて見たことのないほどの大きさといい、太さといい、形といい、立派なモノであった。「あなたのイチモツが欲しかったが、今は心まで盗られた気がする。あなたは鼠小僧と同じく私の心を盗んだのです」。
淀君は早くに殿方を失くしたが、女盛りの二十七歳。毎日、体が火照り、悶々としている。これを心配した重役たちが、いっそ山深いところに御殿を建てて、「夫の菩提を弔うための隠居」と称し、田舎に引き籠らせたのだった。この山中を通る若い男たちの多くが御殿に招かれ、体を求められ、挙句に何十人も犠牲者が出ていた。茶店の主人含め、この村人たちは恐れおののいている。
そしてまた、新之助という新たな標的が生け捕られた。茶店主人が目を離した隙に新之助が立小便したのがいけなかったのだ。御殿女中たちに引っ張られ、酒宴でもてなされていたうちは良かったが、雷雨にかこつけて淀君は新之助の胸に飛び込み、濡れた唇と潤んだ瞳で色っぽく迫り、女を知らなかった新之助はすっかり術中にはまってしまったのだ。
くんずほぐれつ、ズッコンバッコン。初めて知った女が百戦錬磨。食前食後に御茶受けに。これが一週間続き、さすがに二十二歳の若い新之助といえど、げっそりする。寝間を抜け出し、外の風に当たろうと展望台に逃げ、そこで遠眼鏡が落ちていることに気づく。そして、そこから抜けるような青空の下に例の茶店や松の木が良く見えて、今回のからくりが判ったというわけだ。
しかし、淀君は離さない。「新さま!なぜ勝手に寝間を抜けだすのですか!」。さらに新之助の体を求め続ける淀君。そして、十一日目の朝。「新さまが!」。ついに落命してしまった。駆け付ける家老。「これまでの男たちは早くて三日、もっても五日だった。今回はもちましたな。庭に穴を掘り、埋めましょう」。だが、淀君はそれを許さない。
新之助のイチモツを見て納得した。「これは離さぬわけだ。お気の毒に」。焼くのも、埋めるのも惜しい、根元から切って保存しよう。塩をかけ、天日に干しておいた。位牌を前に念仏を唱えながら泣き続ける淀君だったが…。家老が新之助のイチモツの干したやつを仏壇に供えると、淀君は「新さま!新之助さま!」と愛おしそうに手に取る。すると、新之助の幽霊が現れ、「もう、このような犠牲者は出さぬように」と言って成仏したという…。
2009年に湯島天神の市馬・喬太郎二人会で聴いて衝撃を受けて以来、これまでに数回しか聴いたことがない珍品であり、バレ噺ゆえ通常の寄席では掛からないネタなので、今回久しぶりに聴くことができて嬉しかった。

