音楽劇「超、Maria」、そして 前へススメ 玉川太福「茶碗屋敷」

音楽劇「超、Maria」を観ました。作・演出:根本宗子、音楽:小春(チャラン・ポ・ランタン)

小学校に入ったばかりの勉強嫌いな6歳のかなはノートを見せてもらったことをきっかけに、ゆうと仲良くなる。2人は父親が忙しく、なかなか会えないという境遇が似ており、意気投合。自分たちのお父さんは忙しくて最高にかっこいい!とお互いに言い合い楽しすぎる毎日を送っていく。そんなある日、下校途中にひょんなことから2人は人生最大の秘密を知ることになり…。

根本宗子さんらしい女性目線、それも小学校低学年の目線の創作でありながら、鋭く大人社会を覗いているところがすごい。一見仲良し女子小学生の会話なのに、純粋で真っ直ぐな目を通して「父親」をキーワードに実は社会を斜めに切り取っているところが良い。だけど、それは全然重苦しいものではなく、音楽劇という形態をとってウキウキした気分で観ることができる。さすが、である。

小春さんの劇中歌も思わず口ずさんでしまうような愉しさに溢れている。「私の不幸が誰かの幸せ」「お父さんはさぞかしすごい」「先生はいい匂い」「課金は素晴らしい」…。曲のタイトルも、歌詞も過激なのに、小春さんの音楽に乗ると心弾むのだから、あなどれない。

実はこの音楽劇は2020年に初演したらしいのだが、僕は初めて観た。根本さんは新作をどんどん作っていく派で、これまで再演をしたことがなかったそうだが、これで再演に目覚めたとパンフレットに書いてあった。19歳で劇団、月刊「根本宗子」を立ち上げて、17年余り。岸田國士戯曲賞の最終候補に何度も選出されている根本さんだからこそ、過去の戯曲の再演を切に願う。

「前へススメ~柳枝・太福・いちか三人会」に行きました。

「千両みかん」春風亭柳枝/「茶碗屋敷」玉川太福・玉川みね子/中入り/「名医と名優」田辺いちか

太福先生の「茶碗屋敷」。落語、講談にもある演目だが、浪曲になると味わいが違って面白い。まず、屑屋の与兵衛が小狡いのが滑稽で良い。高木左太夫から20文で引き取った仏像を吉田武左衛門に200文で売って、ちゃっかり儲けているのが可笑しい。また、武左衛門が仏像から50両出たから元の持ち主に届けたいと言うと、与兵衛が「折半しませんか」と提案するのも面白い。

武左衛門は「さぞ困窮して困っているだろう」と50両を左太夫に渡そうとするが、左太夫も「神も仏にも見放された。縁なき金だ」と言ってこれを拒む。挙句には、原っぱに出て勝負!となるところに、仲裁に入った大家が左太夫を説得するのが良い。「この金を素直に受け取って、病を治してこそ、人の道ではないか」、「質屋に入っていく娘のおきくさんの苦労を考えなさい」、「良い婿を迎えさせてあげて、日蔭の睡蓮の花を咲かせてあげなさい」。実に説得力がある。

また、50両を受け取った左太夫が礼儀として渡した茶碗。これが武左衛門の友人で鑑定のできる山崎勇斎が「これは太閤殿下が功績のあった家来に褒美として与えた高麗の茶碗」という目利きをすると、武左衛門は慌ててこの茶碗を左太夫に返しに行く。すると左太夫はこの茶碗がそういう謂れのある茶碗だと実は判っていて、武左衛門に渡していたという…。これで一旦収まった騒動が再燃し、武左衛門と左太夫がまた勝負だ!と言い出すところに、再度大家が登場。

明智光秀の故事を例に出して、人の命には寿命があるが、お宝には寿命がない。この茶碗は家宝であると同時に、国宝だ。武左衛門が譲り受けて子孫にこれを伝えれば、高木の旦那も喜ぶ。この大家の説得によって、今度は武左衛門が茶碗を受け取ることになる。ここでも、大家大活躍である。

吉田武左衛門が主君の細川様にこの話をすると、殿様は500石加増するから、この茶碗を譲ってくれと言う。すると、武左衛門は石高目的に茶碗を献上したならば武士道に傷がつくと言って、高木父娘を殿様が召し抱えてくれるならば、茶碗を献上すると進言。その望みが叶い、その上に武左衛門も最終的に2000石を戴いたという…。浪曲ならではの滑稽味と人情味溢れる高座となった。