新宿末廣亭七月上席 神田伯山「お岩誕生」

新宿末廣亭七月上席夜の部三日目に行きました。今席は三遊亭遊雀師匠と神田伯山先生が交互に主任を勤め、前半は「四谷怪談 お岩誕生」、後半は「牡丹燈籠 お札剥がし」をお化け屋敷プロデューサーの五味弘文さんのプロデュースで演ずるという特別興行だ。きょうは伯山先生で「お岩誕生」だった。
「子ほめ」春風亭愛昇/「天保水滸伝 鹿島の棒祭り」神田梅之丞/漫才 オキシジェン/「英会話」古今亭今いち/「寛永三馬術 出世の石段」神田鯉栄/紙切り 林家花/「甚五郎旅日記 掛川宿」広沢菊春・広沢美舟/「鈴ヶ森」桂文治/漫謡 東京ボーイズ/「天保六花撰 玉子の強請」神田松鯉/中入り/「石川五右ヱ門の法事」坂本頼光/「豊竹屋」三遊亭萬橘/「看板のピン」三遊亭遊雀/曲芸 ボンボンブラザース/「お岩誕生」神田伯山
伯山先生の「お岩誕生」。四谷左門町に住む御家人、民谷又左衛門の娘お綱と飯炊きの伝助は身分違いの恋に落ち、又左衛門の慈悲により、お綱を勘当して夫婦にさせ、京橋五郎兵衛町に住まわせた。
伝助は松平安芸守の家来、高田大八郎の飯炊きになる。ある日、大八郎が湯屋に行くが、「二階には上がるな」と釘を刺して、伝助に留守番をさせる。大八郎の着物の右肩に血がついているので、指摘すると、猫が鼠を食らったときの血がついたと大八郎は説明した。
だが、しばらくすると、伝助が炊いた飯の入ったお鉢に天井から赤いモノがポタポタと垂れてきた。明らかに血である。鼠の死骸を処理しようと、伝助は二階に上がると、そこには長持の中に首を斬られた男の死骸が置いてある。伝助が驚いているところに、大八郎が戻ってきた。「伝助!見たな!死んでもらおう!」。
それは霊岸島川口町の金貸し、伊勢屋重助の死骸だった。大八郎に貸した五両の返済が五月蠅いので、殺したのだという。その上、懐に七十三両の金子が入っていたので、「香典代わり」に奪ったという。伝助が「そりゃあ、あべこべだ」と言うと、大八郎は「そうだ。世の中、あべこべにできているのだ」。そう言うと、伝助に三両やるから、死骸をどこかに捨てて来いと命じる。「逃げるんじゃないぞ」と脅されて。
伝助はどうすればよいのか判らず、身重のお綱のいる五郎兵衛町の自宅に帰る。お綱には死骸の入った長持を「古着だ」と説明し、押し入れの中に仕舞った。伝助は伊勢屋重助の女房おふみに知らせに行こうと考え、外に出る。だが、このとき、既におふみは殺されていた。亭主の帰りが遅いとおふみは大八郎の家を訪ね、大八郎は重助を殺した刀でおふみの喉元を突いて殺害したのだった。
雨が降り出し、段々に激しくなる。お綱のところに、おふみの幽霊が訪ねてくる。「あのー、宿はここへー」。お綱のお腹の中にいる赤ん坊は「外にいる者と話してはいけない」と訴える。「いませんよ」「いますよ」「じゃあ、見てみてください」。お腹の赤ん坊は「中へ入れてはいけない」と訴えるが…。
お綱の見たモノはこの世のモノではなかった。恐怖に慄き、金縛りになる。そして、おふみの幽霊はゆっくりと家の中で何かを探し始める。そして、押し入れを開け、長持を見つけ、中を開ける。「あった、あった。ありました。宿はここに」。お綱は絶命した。だが、お腹の中の赤ん坊は顔を出し、無事にこの世の生を受けた。女の子で、お岩と名付けられた。このお岩が民谷伊右衛門と夫婦になるが、伊右衛門は高田大八郎の倅という…。この因縁が絡まる四谷怪談の序開きに相応しい高座だった。

