津の守講談会 神田おりびあ「真田幸村 大坂城入城」、そして玉川太福月例木馬亭独演会「陸奥間違い」

津の守講談会初日に行きました。きょうから三日間は神田おりびあさんの二ツ目昇進を祝う特別企画である。

「島田虎之助」神田はるまき/「三方ヶ原軍記」神田山兎/「千葉周作幼年時代」宝井優星/「真田幸村 大坂城入城」神田おりびあ/「塙保己一伝 奉行と検校」神田伊織/中入り/「赤穂義士銘々伝 横川勘平」神田織音/「フラガール物語」神田香織

おりびあさんの「真田の入城」。蟄居していた幸村が満を持して大坂城へ兵を威風堂々と挙げる件が、まさに前座修行4年を経て二ツ目に昇進し、「さあ、これから」本格的に講談師としてスタートするおりびあさんと重なって見えて、とても清々しい高座だった。

蟄居していた間も幸村は水面下で動いていた。「真田紐」を考案し、これを家来に江戸に売りに行かせ、城下の情勢を探らせていた。父の昌幸が亡くなったことで、肩を落とした幸村は毎日のように高野山へ菩提を弔いに行くも、その他の時間は周囲の者にはボーッとしているように見え、まるで「腑抜け」だと世間では噂が立つ。しかし、それは家康を油断するための計略であった…。

幸村は懇意にしている隣村の醬油問屋の角兵衛の住まいを訪ね、「先日の碁の敵討ちがしたい」と言う。角兵衛は忙しかったが、無碍にも出来ず、相手をする。その対戦の最中に「松倉豊後守が3000余人を率いて九度山に攻めてきた」という情報が入る。だが、幸村は慌てず騒がず、「碁の勝負がついたら」と使者を待たせる。

果たして、幸村が角兵衛を相手に碁に勝つと、合図をする。すると、味方の五人の荒武者が蔵から出てきた。実は秀頼公より大坂入城を命じられていて、その支度場所として角兵衛の店に家来を忍ばせていたのだった。ボロボロの身なりだった幸村も鎧兜に身を包み、立派な武者に変身した。幸村は角兵衛に琵琶の木剣を「形見」として渡し、角兵衛も「当家の宝」にすると応じる。

六連銭の旗を掲げ、馬に跨り、勇ましく出陣した幸村。松倉豊後守が攻めいった九度山には地雷火を仕掛けていて、松倉勢は木端微塵に撃退された。そして、真田幸村率いる3000余人の軍勢は「戦(いくさ)」「勝ち!」を合言葉に難攻不落の大坂城に向かうのだった。

口跡鮮やか、時折ケレンも挿入して笑いも取り、情景が浮かぶように丁寧かつリズミカルに読み進めた。今後の活躍がとても楽しみな二ツ目誕生である。

玉川太福月例木馬亭独演会に行きました。今回は芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞を祝う会である。「ベトナム道中記」と「陸奥間違い」の二席、いずれも曲師は玉川みね子師匠。前講は玉川き太さんで「不破数右衛門の芝居見物」、シークレットゲストは本人の希望によりお名前は伏せます。

「陸奥間違い」のコミカルな味わいが太福先生にぴったりの演題だ。信州の田舎から江戸に出てきてまだ三か月という下男の仙助のとぼけているけど純朴で憎めないキャラクターがとても良くて、その他の登場人物も皆善人、最終的に情けは人の為ならずとなるところもハッピーで好きだ。

台所小役人で年三十俵の穴山小左衛門。大晦日に三十両の金策がうまくいかず、元は同じ小役人だったが、祐筆に抜擢されて三百石取りの旗本に出世した友人の松野陸奥守を頼ったが…。流行の礼式である欠字を使ったために、仙助は無心の手紙をこともあろうに、仙台伊達家、62万石の松平陸奥守の屋敷に届けてしまう。これに対し、伊達の殿様は怒るどころか「江戸詰め大名数ある中、大名の中の大名と見こまれての無心」と喜び、「三十」は「三千」の間違いだろうと、伊達家が続く限り、年に米三千俵を提供するという。何とも粋な殿様である。

この事実を知った穴山の慌てぶりも面白い。なにせ、仙助が竹に福良雀の紋の入った重箱を持って、たらふく馳走を食べてほろ酔い気分で帰ってきたのだから。その上、伊達家の使者、八百石取りの渡辺次郎左衛門が「間違いではすまされぬ。このまま受け取りください。もし受け取らないのであれば、この場で切腹いたす」と言うのだから。穴山も直参ゆえ外様の情けは受けられないと考え、千代田の城に直行し、幕府の指図を受けることにするという…。

三千両を受けるべきか否か、腹を切って責任を取るべきか。このときに対応した松平伊豆守は将軍家綱から「貧こそ辛きものはなし。三千両を受け取れ」という指図を取り付ける。穴山の安堵たるや。余りの嬉しさに男泣きしたのは、三千両を貰えるからではなく、身分低き直参を哀れに思う伊豆守の厚い人情に感激したからだというのが素敵である。

以降、このような間違いがないように陸奥守は伊達家のみとするという沙汰に対し、伊達家は大層喜び、祝宴を開く。その上座には穴山小左衛門、そして仙助、そして松野陸奥守改め松野河内守。河内守はこの騒動に何も関わっていないのに、三百石から一気に三千石に加増になったという…ハッピーエンド。笑い沢山の浪花節を得意とする太福先生の真骨頂を見た。