【大相撲初場所】新大関の安青錦が熱海富士との決定戦を制し連覇

大相撲初場所千秋楽、三敗で並んだ大関・安青錦と平幕・熱海富士が優勝決定戦の末、安青錦が首投げで熱海富士を破り、連覇を果たした。新大関の優勝は白鵬以来20年ぶり。新関脇、新大関の連続優勝は何と双葉山以来89年ぶりである。

十四日目に二敗で単独トップだった安青錦が大の里に敗れ、熱海富士が霧島との三敗同士の対戦を制し、優勝争いはこの二人が先頭に立った。そして迎えた千秋楽。二人がともに敗れれば、最大5人による優勝決定戦も考えられたが、それは杞憂に過ぎなかった。熱海富士が欧勝海を難無く寄り切り、安青錦も同じ大関の琴櫻を終始攻めきって勝利、賜杯の行方は優勝決定戦に持ち込まれた。

決定戦では熱海富士が安青錦の低い体勢を起こして抱え込み、グイグイと土俵際まで攻め込んだ。だが、安青錦はこれを耐え抜いて窮余の左首投げ。熱海富士の体が裏返って土俵に落ちた。大関としての意地を見せた優勝だった。

兎に角、安青錦は場所ごとに強くなっている。強靭な足腰に裏打ちされた前傾姿勢からの鋭い攻めは益々磨きがかかり、低く攻めても決して前に落ちることがない。この型を崩せるのは相当なパワーを持った力士に限られ、大の里や霧島に敗れた相撲などはその例かとは思うが、15日間の土俵全体から見たら、両横綱よりも「安定感」という意味では上をいっているのではないか。

去年春場所に新入幕で11勝を挙げて以来、4場所連続11勝。そして、先場所は新関脇で12勝、今場所も新大関で12勝。これを「安定感」と言わずして、何と言おうか。気が早いかもしれないが、来場所は綱獲りの場所になる。このまま怪我さえなければ、順当に横綱に昇進する勢いを持っているといえるだろう。

さて、熱海富士である。惜しかった!もう一歩のところだった。令和5年秋場所に再入幕で11勝を挙げ、大関・貴景勝と優勝決定戦の末に敗れた悔しさが思い出される。あれから2年半が経った。豊昇龍と大の里から連続金星を挙げ勢いに乗った。敢闘賞だけでなく、殊勲賞をあげても良かったのではないか。

得意は右四つだが、差し身にこだわらず、大きな体を生かして突き押しで前へ出る今場所のような相撲を取れば、将来性のある力士である。優勝のチャンスはまた必ず訪れるはずだ。来場所は初めての三役が確実、静岡県出身としては戦後初だそうだ。大いに期待したい。

今場所は場所前から横綱の出場が危ぶまれた。豊昇龍は左膝負傷、大の里は左肩の負傷。それでも横綱としての責任感から出場し、ともに10勝と二桁の星を挙げたことを僕は評価しても良いのではないかと思う。両横綱とも自分の持ち味を生かす相撲が取れず、やっとこさで星を拾う土俵が続き、ともに3個の金星を配給。これは決して褒められたことではないことはわかっている。特に大の里が八日目から三連敗したときは途中休場やむなしと思った。それでも土俵に上がり続け、大の里が安青錦を圧倒的なパワーで土俵に転がした一番は綱の意地を見た。両横綱ともに故障を癒して、万全の体調で土俵に上がり、大相撲を先頭に立って盛り上げてほしい。

関脇の霧島が11勝を挙げて敢闘賞を貰った。元大関に敢闘賞はいかがなものかと思ったが、首の故障も癒えたようで、霧馬山時代の相撲の上手さが徐々に戻ってきたように思う。先場所前頭二枚目で11勝を挙げており、来場所は大関復帰を懸けた大事な場所になるだろう。

義ノ富士が8勝7敗で殊勲賞を受賞した。大の里と豊昇龍から金星を獲得する強い一面がある一方で、格下の力士に取りこぼすのが勿体ない。去年名古屋場所で新入幕以来、4場所連続勝ち越し。優勝を狙える実力のある逸材だと個人的には思っている。この成績に満足せず、意欲的に稽古して、上を目指してほしい。

阿炎が10勝を挙げたが、前頭十二枚目という番付からすると当然の成績だろう。十日目で勝ち越しを決めたときには、優勝経験のある力士だけに活躍を期待したが、尻すぼみになってしまった。得意の突き押しに勢いがあるときは強いが、すぐに引いてしまう悪い癖が抜けないので、成績にもムラが出てしまう。早く三役の常連に戻って来てほしい。

同じ10勝でも、藤ノ川の10勝は高く評価していい。前頭七枚目。小さな体ながらグイグイ前に攻め込む相撲は勝っても負けても小気味良く、土俵を沸かせる。技能賞は該当者なしだったが、藤ノ川にあげても良かったのではないか。来場所は三役と当たる番付に上がるだろう。楽しみだ。

大関の琴櫻は今場所も8勝7敗とふがいない成績に終わった。この6場所は去年秋場所の9勝以外はすべて8勝どまり。大関として恥ずかしい成績ということだけでなく、その相撲ぶりが気がかりだ。今場所は稽古十分という情報もあり、初日から3連勝したときは、「今場所はやってくれるかも…」と期待したのだが、場所が進むにつれて積極的に自分から前に攻め込む相撲がほとんど見られなかった。どこか体に悪いところがあるのだろうか、と心配してしまうくらい。恵まれた体格を生かして攻め込む相撲を思い出してほしい。そうでないと、「ハチナナ大関」なんて悪い渾名がついてしまう。奮起してほしい。

十両優勝は常盤山部屋の若ノ勝だった。今場所限りで定年を迎える元隆三杉の常盤山親方への良いプレゼントができて良かった。十両は藤青雲が11勝、藤凌駕が9勝を挙げて、新入幕が濃厚だ。藤島部屋の二人が幕内で活躍するのも楽しみである。