けんこう一番!三遊亭兼好「明烏」、そして銀冶連雀会 田辺銀冶「新吉原百人斬り 八ツ橋愛想尽かし」

「けんこう一番!~三遊亭兼好独演会」に行きました。「雑俳」「館林」「明烏」の三席。前座は三遊亭げんきさんで「孝行糖」、ゲストはウクレレ漫談のウクレレえいじ先生だった。
「明烏」。日向屋半兵衛が息子の時次郎に“大人のつきあい”を覚えてほしいと心配する気持ちがよくわかる。源兵衛と太助と「お稲荷様のお籠り」に行って、「黒い鳥居の謎がわかりました!黒く塗ったからですね」と素直に納得したり、「お巫女の館」で「お巫女頭」に稲荷寿司を差し出して「どうぞお納めください」と言ったり。世間知らずにも程があるところが、この噺の面白さだ。
「ここは吉原という悪所ですね!」とようやく気付き、源兵衛たちが芸者幇間とどんちゃん騒ぎをしている脇で柱にもたれて涙をポロポロ流し、「帰りたい…」。源兵衛が気を利かして、若旦那は物知りだから独演会をやって話を聞こう!と提案すると…。上州出身のおさよは早くに父親を亡くし、母親も病に伏せて、人参を買うために吉原に身を売ったが、自分も病に罹って死んでしまい、投げ込み寺に放りこまれて、無縁仏となった…という悲しい話をする時次郎の空気の読めないことといったらない。「なぜあなたたちは笑っていられるのですか!?」。
おばさんが花魁の部屋に連れて行こうとすると、「触らないでください!病気がうつる!」。そのお陰で源兵衛は相方から「病気がうつるよ!」と言われて振られ、一晩中寂しい思いをした。父親が“大人のつきあい”を教えてくれと町内の札付に頼んだのも頷ける。
ところが、翌朝になると、時次郎はすっかり吉原の魔力の虜になってしまったというところが、この噺の肝だ。様子を見に来た源兵衛と太助に対し、時次郎は「おはようございます。悪所というほどではありませんでした。いつもは朝日を浴びて、雀が鳴くと、爽やかな気持ちで目を覚ましていたのですが、今朝はその雀の鳴き声が五月蠅くて…。このまま夜が明けなければいいのに…」。どうして昨日からそういう了見にならなかったの!源兵衛と太助が憤慨するのも無理はない。時次郎はこれから先、吉原の愉しさに溺れていくのか。大人のつきあいを少し覚えただけでも、進歩だったのではないかな。
「銀冶連雀会~新吉原百人斬りを読む」に行きました。「英国密航」と「新吉原百人斬り 八ツ橋愛想尽かし」。前講は神田おりびあさんで「稗搗節の由来」だった。
「八ツ橋愛想尽かし」。絹商人・佐野次郎左衛門が八ツ橋花魁に半年だけ形だけの夫婦になって、その後は間夫の宝生栄之丞と所帯を持たせて、生涯暮らしに困らないようにしてあげると約束したはずなのに…。
蔦屋の二階の座敷で次郎左衛門は八ツ橋や芸者幇間らと一緒に栄之丞を待っていると、暫くして栄之丞がやってきた。次郎左衛門は兄弟同様の付き合いをと盃のやりとりを八ツ橋交えて三人でする。そして、徐に次郎左衛門は「半年の辛抱をお願いします」と改めて挨拶するが、栄之丞は「何の話だ?藪から棒だな。聞いていない」と冷たくあしらう。「俺と八ツ橋は来世までもと約束した惚れ合った間柄。それはこの座敷にいる連中は皆知っている。とんでもない」と返す。
次郎左衛門は八ツ橋に話をしていないのか、渡した二十五両はどうしたのかと問うが、「そんな金は受け取っていません」とけんもほろろ。栄之丞が「二十五両というのは何の金だ?俺は元公儀の能役者。そんな金を恵んでもらう筋合いもない。受け取りの書付でもあるのか」とここぞとばかりに次郎左衛門をやりこめる。
この化け物が!酒が不味くなる。吉原に足を踏み入れるな。肥溜めで尻叩いて、鳶でも追っかけていろ。こんな盃は返すぜ!散々に次郎左衛門を罵倒し、盃洗の水を次郎左衛門にぶつまけて、着物をビッショリ濡らしてしまう。そして、「座敷を変えて、飲み直そう」。栄之丞は八ツ橋や芸者幇間を引き連れ、座敷を出ていってしまう。次郎左衛門は八ツ橋の後ろ姿を睨みつけるしかなかった。「あんな女と知らず、真の心を打ち明けたのは間違いだった…」。
次郎左衛門は自分の店に帰る。そして懇意にしてくれた幇間の紋久と一平を呼び、酒を飲み直す。「お前たち二人は幇間ではなく、友達のつもりで付き合ってくれ」。そして、二人が「八ツ橋は諦めなさい」「お見立て替えした方が良い」と助言したにもかかわらず、聞く耳を持たなかった自分を反省する。「恥をかかされた。吉原は薄情だ。もう二度と行くまい。佐野に帰る」。さらに、二人に対し「お前たちのような心優しい人間は幇間をやめて堅気になった方がいい。商いの元手だったら、いくらでも出してあげるよ」。
翌日、次郎左衛門が佐野に向かうのを本郷追分で見送った紋久と一平。「悔しいとポロポロ泣いていた。あんな優しい旦那を酷い目に遭わせ、許せない」。そして、仕返しをしよう!と意見がまとまる。次郎左衛門と同じ松皮疱瘡であばた顔になり、「あば惣」と渾名される山谷の惣吉親分に相談にいく…。さあ、次回はこの仕返しがどうなるのか?!楽しみである。


