春風亭一花「一花絵巻 げんじものがたり」全四帖

「一花絵巻 げんじものがたり」に行きました。しょこちゃんとていちゃんという二人の女性の小学生から大学生までの成長譚を、春風亭一花さんが源氏物語を通して創作した全四帖の通し口演である。
きりつぼとふじつぼ/酒場の品定め/ゆうがお/光源氏/中入り/若紫/葵/さかき
きりつぼとふじつぼ。小学生の藤原ていこ(ていちゃん)と中宮しょうこ(しょこちゃん)が源氏物語の会話をしている。帝は桐壺を寵愛した、だがこれを弘徽殿女御が嫉妬した。帝はデリカシーがないから、桐壺に新しい部屋を用意し、益々苛められる。だが、弘徽殿女御の父は右大臣、桐壺の父は大納言。桐壺に勝ち目はない。そこから言えることは「男って馬鹿」「後ろ盾って大事」。
帝と桐壺の間に若宮が生まれる。大層美しく、光の君と名付け、源氏という苗字を与えた。だが、桐壺は早逝してしまう。帝は藤壺と結婚したが、藤壺は桐壺と顔がそっくりで、光の君は藤壺を母のように慕うようになる。光の君は葵上と結婚したが、藤壺のことを継母を超越して、初恋に人のように思い焦がれてしまう。そこから言えることは「両想いは奇跡」。光の君は色々な人を好きになって、迷走していく。
しょこちゃんは同級生の石山君のことが好き。石山君の父親は「源氏物語」好きで息子にヒカルと名付けた。ちなみに上の双子の兄姉はアサキとユメミ。しょこちゃんは、まずはお父さんと仲良くなろうと、ていちゃんに石山父の名前を調べてもらう。ていちゃんの父親は落語家で、石山父は落語好きなので顔見知りなのだ。そして、わかった石山父の名前は「たけぞう」。小三治の本名じゃん!
酒場の品定め。しょこちゃんの家庭教師をしているさき先生と後輩のおぎちゃんの会話。さき先輩は大学を卒業したら、愛媛に帰って小学校の教師になろうと思っている。おぎちゃんはIT企業に勤めている男、公務員志望の同級生、バイト先のイケメン男子の三人と付き合っていて、三又。天秤にかけて、どれに絞るか。さき先輩は一緒に寄席に行って「同じタイミングで笑える男」を選べとアドバイスする。愛情は試してはいけない。男は転がせ。完璧な人間はいない、どこか欠けている。夫婦はそれを補っていくもので、それぞれの組み合わせがある。
そう言うさき先輩は恋愛経験ゼロなのだという。頭の中で恋愛し、結婚し、出家しちゃっていると。おぎちゃんはとおのさんが優良物件だと薦めるが、「いい人」は危ないと及び腰だ。臆病から卒業しないといけないと思うのだった。
ゆうがお。夕顔は積極的な女性だった。光の君が通りがかりで「あの花は何だい?」と言ったとき、夕顔はお付きの右近に扇子の上にその花を乗せ、歌を付けて渡した。これで光の君は夕顔に夢中になってしまった。だが、夕顔は死んでしまった。布団の下から六条御息所の生霊が浮かんだという。死因は判らなかった。人生の学びは「よく知らない人と恋愛は始めない」。
当時、光の君は葵上と所帯を持つ傍ら、六条御息所と藤壺とも関係を持っていた。だが、光の君は夕顔の死を悲しみ、落ち込んだ。そのときに支えとなったのが、夕顔の親友の頭中将。しかし、彼女もまた光の君の元カノだったという…。怖いのは恋愛。「恋愛は怪談の入り口」。
夕顔は「中の品の女」だったという。ウニばかり食べていると飽きる。男は意外と干瓢巻きが好き。安心して、癒される。光の君はもう一度顔が見たいと山寺に行って亡骸を愛おしみ、涙を流した。世の中に永遠はない。無情なものであるということを知る。
明日はバレンタインデー。しょこちゃんは石山君の下駄箱にチョコの数を数えに行くというので、ていちゃんがやめなさいと言う。「みやすんどこっちゃうよ」。ちゃんと素直に石山君に好きだと伝えた方がいい。だが、しょこちゃんは「あなたは人を好きになったことがないでしょう!」と言って去ってしまった。そして、石山君の下駄箱の中に差出人のない手紙を発見する。「夕顔だ。先越されちゃった」。しょこちゃんは折角書いたラブレターを入れることをやめてしまった。
光源氏。高校に進学した中宮しょうこは学園のアイドルになった。しょうこのところに、いかりやという女子がやって来る。「中宮先輩のファンクラブを作りました」というのだ。会員は5人。いかりや、しむら、なかもと、かとう、たかぎ。高木さんは容姿が劣っているが、ムフフと笑うところが可愛くて仲良くなれそうだと思った。末摘花だなと思った。
別々の高校に進学したしょうことていこがジョナサンでお喋り。ていこは源氏物語研究会という部活をはじめるという。略してゲンケン。光の君の気持ちをわかるために過ごそうと思うと。あの思わせぶりについて研究したいと。しょうこはファンクラブのことを話した。「クールを演じている」。女子の抜け駆けは犯罪だからね。
しょうこは学校にスマホを忘れてきたことに気づく。慌てて学校に戻ると、校門は閉まっていた。だが、そこに高木さんが現れる。スマホに気づき、明日渡そうと思ったが、戻ってくるかもしれないと待っていたという。しょうこは「可愛い」と思った。面倒を見ることにして、ジュースを奢った。
若紫。しょうこの家にていこがお泊りして、源氏物語の話をしている。若紫10歳に光源氏18歳が恋をした。ロリコンと思うかもしれないが違う。マザコンである。藤壺の姪っ子にあたる若紫に藤壺の面影を見て取ったのだ。「男の8割はマザコン」。
藤壺と光源氏は両思いで逢瀬を重ねた。密通はまずい。藤壺はご懐妊。光源氏は須磨に下り、一線を引いた。「男って、子ども」。大人の男がいい。ていこは男のタイプがわかったという。石山君のお父さん。たけぞう。紳士的で素敵。
若紫は実父の兵部卿宮が引き取った。だが、光源氏が誘拐する。人生、早い者勝ち。石山君へのラブレターは「夕顔」に先を越された。光源氏は祖母と母親に早くに死なれ、独りぼっちだった。人との繋がりは血じゃない。どれだけの時間をかけ、どれだけの愛情を注いだか。光源氏は若紫を大事にした。大きな愛情をもらって素敵な女性になった。
ていこが石山君とバッタリ出会う。「親父がていちゃんのお父さんに返してこい」と言われて、小三治全集を持って訪ねてきたのだ。「中学以来だね。ていちゃんって、面白いよね。今度、寄席を案内してよ」。ていこはドキドキした。ヤバイかもと思った。
葵。ていこが美容院にいる。店主のすーさんに「尼削ぎ」してほしいと言う。出家するんだと。光源氏の最初の奥さんの葵上は左大臣の娘、別居昆して未来の帝の嫁になるはずだったのに、六条御息所の嫉妬により、生霊に憑りつかれてしまった。衰弱する葵上を見て、光源氏は後悔する。そして、「愛しい」と涙した。
そこへすーさんの奥さんのしのさんがやって来て、「何、やっているの!沙悟浄みたい」と鋏を止めさせる。訳を訊くと、ていこは「友達の初恋の人を好きになったかも…」と言う。しのさんは「奪っちゃいなさいよ!好きかもは好きということ」。末廣亭でデートした石山君をていこは好きになってしまったのだ。
葵上は夕霧を生むと死んだ。藤壺は出家した。若紫は光源氏の女になった。ていこはしのさんの手でショートカットの髪型になった。
成人式。同級生が集まる。じょう君は「中宮、小学校以来だな。綺麗になった。お前、石山のこと好きだったよな」と言ってしまう。ゆうこが「石山君は女子みんなが好きだったから」と言うと、気まずい雰囲気を察したていこが気を遣い、石山と中宮を残して皆は別のところで飲むように誘導した。
石山が中宮に言う。「小学校のとき、俺、中宮のことが好きだった…手紙を読んで嬉しかった…連絡先、交換しないか」。中宮しょうこは嬉しかった。
さかき。さき先生が大学生になったしょうこと会う。「手紙で相談してくれて嬉しかった」。しょうこは大学で源氏物語研究会を立ち上げたと報告する。高木さん含め、部員は3人だが。ていことは連絡が取れずに、入部を誘えないという。
さき先生がしょうこに訊く。「石山君とは?」「付き合いませんでした。友達になりました」。右大臣の娘、朧月夜に光源氏は手を出して失脚、須磨に流された。それでも光源氏のことは嫌いじゃなかった。さき先生が「渡したい物がある」と言って、小学校時代の落書きを見せてくれた。人生の学び…「男って馬鹿」「後ろ盾は大事」「忘れるって大事」「男は付き合った女のことは忘れない」「両想いは奇跡」…。恥ずかしい。しょうこはていこに入部の誘いの手紙を出すことにした。さき先生は思う。若いっていい。先生も悪い仕事じゃない。
さき先生は偶然、路上でおぎちゃんに出会う。占い師になっていた。男がバイト先の店長の娘と浮気して別れたという。さき先生は「愛媛の仕事をやめて、東京に戻ってきた」。おぎちゃんが「浮気されて、別れましたね…言い寄る男がいますね」とピタリと当てる。そして、言う。「とおのさんはあなたのことが今も好きだ。付き合ってください。今すぐ、連絡してください…さき先輩は恋愛に何を求めている?」。さきが答える。「永遠です」。おぎちゃんは言う。「痛い!ないです!知っていますよ、とおのさんが好きだったこと。傷つくのが怖いんですよね。永遠なんてないです」。
ていこがしょうこに会いに来た。源氏物語研究会入部希望である。しょうこは打ち明ける。「下駄箱の手紙は中宮さんだよねと訊かれて、私が書いたと嘘をついた。横取り。心が苦しくなって、ギスギスして…石山君に言った。そして、色々話した。石山君のこと、何も知らなかった。そして、友達になった。ていちゃん、好きなんだよね?言わなきゃ駄目。なかったことにしちゃ駄目」。
ていこは「しょうこちゃんと話すと楽しい。源氏物語研究会に入って、色々話したい」。そこに、ゆうこが現れる。入部希望だと言う。そして、「言わなきゃいけないことがある。成人式のこと。石山君が好きで、ラブレター書いたんだ」。しょうことていこは顔を見合わせ、「夕顔だ!やっと見つけた!」。

