立川吉笑真打昇進披露興行IN高円寺 千秋楽「カレンダー」

「立川吉笑真打昇進披露興行IN高円寺」千秋楽に行きました。

「真田小僧」立川笑二/「狸鯉」立川らく兵/「岸柳島」立川らく次/「松竹梅」立川晴の輔/漫才 ひつじねいり/「宮戸川」立川談春/中入り/口上/「金明竹」立川談笑/太神楽 鏡味味千代/「カレンダー」立川吉笑

談春師匠の口上。寄席を再現した設えで寄席興行のように十日間連続の披露興行をおこなったことについて、立川流を世間にアピールするために吉笑はこういう形式でやりたかったのだろうと思う、と。決して功名心とか、自分の名前を売るというようなところは微塵もないと高く評価した。

その上で、40年前に談志が「馬鹿ばっかりだ」と言って落語協会を出て、寄席を去ったことに触れた。今回の披露目をむこう(落語協会)はどう思っているのだろうか。「いざとなったら、寄席かよ」と軽蔑している人間もいるかもしれない。だから、俺たち(志の輔、談春、志らく)は独演会を主戦場にして、俺たちなりの落語の普及のやり方で戦ってきた、とも。

もしかしたら、寄席が好きだった談志が一番戻りたい形なのかもしれない。そういう吉笑の思いを今回の披露目から感じた。「寄席らしいことができたら、すごいよね」と言っていたことを、吉笑は見事にやった。これは彼の才能だと思う。高円寺の駅から会場までの道路に真っ赤な目立つ看板をいくつも立てた。やること、一つ一つがすごい。

立川流はこれからどうなっていくのか。吉笑たち孫弟子世代が担っていくのかもしれない。俺たちとは生きた時代が違う。吉笑のような人間から新しい立川流のスピリッツが生まれてくるのかもしれない。まだ三人(志の輔、談春、志らく)には力を貸してもらいたいと彼らは言うが、俺たちの独演会中心の価値観は変わらない。本当に彼らに任せた方がいいんじゃないか。今回の披露目は後輩たちにとって立川流の財産になると思うと賞賛した。

談笑師匠の口上。談春師匠のおっしゃったことは、寄席の肯定でも否定でもない、と。立川流が寄席に戻りたいわけではなく、ただ今回は寄席の真似事をしたかっただけ。あっち(落語協会)は40日、50日で披露目をやるけど、もう10日で勘弁してほしいと本音を吐いた。その上で、これまで立川流の中にあった価値観が地殻変動している。落語協会の古い人やお客さんの中には「談志は大嫌い」と言う人がまだいる。でも、それも変わってきていると。

打ち上げで連雀亭の話題が上がり、あそこは二ツ目のための小屋だが、落語協会、芸術協会、立川流、円楽一門会が分け隔てなく交流していると知った。吉笑たちがこれまで想像もできなかった将来を作ってくれるかもしれない。どんな落語界の景色を見せてくれるのか、楽しみだと締めた。

吉笑師匠の「カレンダー」。商店街の人たちに次々と起こるパニックを吉笑師匠らしく筋道を立てて構成しているところに、この噺の身上があるように思う。毎年恒例で作っている商店街のカレンダーによって人々が動いているために起こるパニックは爆笑の連続だ。

魚勝が2025年のカレンダーで、閏年でもないのに2月を29日まで入れてしまった。これによってわが島は世間より「1日遅れている」と騒ぐ。だが、八百善が2024年のカレンダーで閏年なのに2月を28日までにしてしまったことも判明。よって、きょう7月3日は世間と同じ7月3日に戻ったと安堵する。だが、喜びも束の間、八百善担当の2024年カレンダーは4月も6月も9月も11月も31日あった…。「西向く侍を知らなかったのか!ということは、きょうは7月7日?」。

さらにパニックの要素が増える。去年、丘の上に設置したデジタル時計は「58秒、59秒、60秒、00秒、01秒…」と刻んでいて、1分が1分1秒に!ということは1時間で1分、1日24分、1カ月で半日の誤差が出ているのだ!「ということは、きょうは7月…下旬だ!」。

広末涼子は「MajiでKoiする6秒前」?なんて冗談を言っている場合ではない。そのうち、2007年のカレンダーは12月が35日まであったり、1998年のカレンダーは13月があったり…。「きょうは7月3日なのに、皆がセーターやダウンジャケットなど冬の装いで、外は雪が降っている!」。論理的なギャグを構築していって、最終的に奇想天外なオチになる吉笑師匠の手法の凄さを思った。